〔入力終了の項目、ぬ、部分的の項目、あ、く、に、ね、や、を。 2008年8月29日(金)現在〕
 
文學博士金澤庄三郎編纂
 
  辭林     四十四年版
 
東京   三省堂發兌
 
(1) あつめおく辭の林ちりもせでちとせかはらじ和歌のうら松 (續千載和歌集)
 
國語は思想の代表者にして、辭書は國語の寶庫たり。故に其内容は直ちに以て其社會の發達を卜し、其文華の程度を窺ふ料とすべし。我言靈の幸ふ國、我言靈の助くる國、古くより辭書に乏しからず。上は和名類聚鈔・新撰字鏡の羸より、下は東雅・和訓栞・雅言集覧・俚言集覧等に至るまで、皆其時代に應じて撰述せられ、後の見るものをして略遺憾なからしむ。世々の學者亦勉めたりといふべし。明治の昭代、文物燦然として學術の隆興實に前代未聞なるに際し、國語學界の事業獨り之に伴はざる憾あり。辭書の如きも、未だ多く徳川時代の著作の覊絆を脱せず、中古以往の語にのみ詳にして、現代の活きたる言語に粗なり。これ社會全般の夙に認むるところにして、實に我學界のために惜まざるを得ず。明治式辭書の編纂は著者年來の希望にして、菲才を顧ず積年其材料の蒐集に從事し、今や漸く「辭林」の名を以てこれを公表するに至れり。然れども、由來、辭書編纂(2)の業容易ならず、更に改訂を加ふべきところ亦多々あらん、著者は專心一意、身を此事業に捧げ、版を重ぬる毎に改刪増補を怠らざるべし。博雅の君子、若しこの意を諒とせば、幸に指教の勞を吝む勿れ、これ獨り著者の幸のみにあらざるなり。
  明治阻十年四月、欧米漫遊の途に就かんとする前三日
          束都本郷西片町の寓居に於て
                 金 澤 庄 三 郎
 
 本書の初版を發行してより既に四星霜その間増補第二版に於て改刪修補を加へ、稍面目を新にしたれども、ひそかに世運日新のさまを思へば、顧みて忸怩たらざるを得ざりき。されば、世に後れざらんの心切にして、更に改修の業を進め、今や全部に訂正を施し、不備の點を補ひ、新に難訓索引を加へ、茲に辞林四十四年版と稱してこれを公にするに至れり。これより後、「辭林」は(3)年版數を重ぬる毎に、常に改善せられ、永く向上的たるべし。著者は、本書に同情を寄せ有益なる助言を賜はりたる四方の諸君に感謝す。諸君の注意せられたるところは、一々これを調査して、本書の中に收めたり。今や帝國語の領士擴張せられ、善良なる辭書の需要急なる秋、著者は一層奮励努力して、諸君の好意を空くせざるべし。
     明治四十四年春四月
                   著  者  識
 
(5)     凡例
 
一、語詞の排列は五十音順に從ひ、促音は「ツ」の部に、撥音「ン」は最後、即ち和行の後に排置したり。
一、語詞の排列は歴史的假字遣に從ひ、尚、一般の便宜を計らんがため、其直下に標音的假字遣を記入し、これを表はすに細字の片假字を以てせり。
一、「イギリス」語・「フランス」語・「ドイツ」語・「ロシア」語・「スペイン」語・「ポルトガル」語・「オランダ」語・梵語・「アイヌ」語・琉球語・朝鮮語及漢字の唐宋音に屬するものは片假字を以て記し、其他のものと區別せり。
一、語詞の上に冠したる符號の中、++は古語、{は俚語、(は字音たることを示す。故に、外來語にあらずして、何等の符號をも有せざるものは、古今に通じて一般に用ひらるゝ國語なりと知るべし。
一、語原に關する事項は著者自ら所見ありと雖も、古來、其説の紛々たるものに至りては、見ん人の紛亂を惹き起す基とならんことを恐れて、全くこれを除
 
(6)春の花のあした、秋の月のゆふべ、おもひをのべ、心をうごかさずといふことなし。ある時には糸竹のしらべをとゝのへ、ある時には大和もろこしの歌ことばをあらそふ。敷島のみちのさかりにおこりて、心の泉古よりも深く、辭の林昔よりもしげし。
            (千載和歌集序)
 
  ++、古語、  {、俚言方言  (、字音
 
〔三つ確認のため、。再掲示。ほかに、・、複合語の区切り、‐、活用語尾の区切り、がある。( )を二重にしたような記号があり、註釈を示すようだが、区別するほどの意味がないので、( )で間に合わした。所々小字で挿入したのは、大槻文彦の言海。全体に活字不鮮明のため判読不可能のものが多い。〓の符合で記した。入力者。 〕
 
 
辭林
 
 
あ 口を廣く開き舌を低くして發する母音、五十音圖にて、安行の第一に位し、安列の加・左・太・奈・波・末・他・良・和の韻となる。
 
++あ[足](名)あし。「−の音せず」。
 
++あ[畔](名)田のさかひ。あぜ。くろ。「−をだに未だ作らざりけり」。
 
++あ[吾](代)自己を指す語。あれ。われ。「−が見し子に」。(我)。――・が・ほとけ[吾佛]自己の執れる主義。
 
++あ[彼](代)(一)遠きものを指す語。「淡路島−はと雲井に見し月の」。(二)第三者を指す語。あれ。かれ。「山のしづくに−を待つと」。――・の・よ[彼世]死したる後に行く世。黄泉。
 
++あ(感)應答する聲。「女房−といふ」。(唯、噫)。
 
++あ(感)感歎したる時に發する聲。ああ。
 
アーク・とう[――燈=Arc lamp](名)「ことう」(弧燈)に同じ。
 
アーク・ライト[Arc light](名)「ことう」(弧燈)に同じ。
 
アーチ[Arch](名)(一)石或は煉瓦等の材料にて、上部を圓く積み立てたるもの。迫持(【セリモチ】)。(二)杉・檜等の緑葉を以て包み飾りたる弓形の門、多く祝賀のときなどに建つ。緑門。
 
アートタイプ[Artotype](名)一種の寫眞版、膠と重「クロム」酸との混合物の感光性を利用せるもの。
 
アームストロング・はう【−ホウ】[――砲=Armstrong gun](名)「イギリス」國アームストロング」會社にて製造する速射砲及鋼線砲の稱、「サー、ウィリアム、アームストロング」が千八百五十四年に創案せし後装旋條砲に基因して、漸次諸種の改良を加へたり。
 
アーメン[Amen](感)「キリスト」教徒が祈祷の終りに唱ふる語、もと「ネブライ」語にて實にといふ意を表す。
 
アール[Are](名)「フランス」國地積の名、一〇〇平方「メートル」、即ち我國の三十坪二合五勺。
 
ああ[嗚呼](感)歡喜・悲哀等の情を表する時に發する聲。(噫、鳴呼、於戯)。
 
ああら(感)あら。あれ。
 
(あい[愛](名)(一)めづること。好み樂しむこと。かはゆがること。いつくしみ。あはれみ。(二)慕ふこと。戀。(三)【佛】婬欲。
 
(あい[哀](名)(一)あはれみ傷(【イタ】)むこと。(二)喪。――。を。あぐ[擧v哀]貴人の薨去したるとき、聲をあげてかなしみ泣く。
{あい[鮎](名)【動】あゆ。
 
あい(感)應答する聲。(唯)。
 
(あい・あい[藹藹](名、副)しげるさま又は多きさまにいふ語。
 
(あい・あい[哀哀](名、副)かなしきさま又はいとほしきさまにいふ語。
 
(あい・あい[靄靄](名、副)氣のあつまりたなびくさまにいふ語。
 
(あい・あい[曖曖](名、副)暗きさま又は明ならざるさまにいふ語。
 
(あい・いく[愛育](名)大切にしてそだつること。
 
(あい・うん[藹雲](名)空を覆ふ黒き雲。
 
(あいえん・きえん[愛縁機縁](名)(一)【佛】縁がありて人が相愛し、又、縁によりて種々の機會も生ずること。(二)何事も縁の有無によること。(三)不思議の縁。
 
(あい・か[哀歌](名)悲しき心を詠じたる歌。
 
(あい・がい[埃※[土+蓋]](名)ちり。ほこり。
 
(あい。かう【−コウ】[隘巷](名)狹きこみち。
 
(あい・かう【−コウ】[愛幸](名)ちようあい。きにいり。
 
(あい・かう【−コウ】[愛好](名)愛しこのむこと。
 
(あい・きやう【−キヨウ】[※[魚+〓]※[魚+輕の旁](名)(一)年をこえたる鮎。(二)鹽漬けにしたる子持の鮎(※[魚+愛]〓)。
 
(あい・きやう【−キヨウ】[愛郷](名)郷里を愛すること。
 
(あい・きやう【−キヨウ】[愛敬](名)かはゆらしきこと。人ずきのすること。(愛嬌)。
 
++あい・ぎやう【−ギヨウ】[愛敬](名)あいきやう
 
あいきやう・あばた【−キヨウ−】[愛敬痘痕](名)却て愛敬ある樣に見ゆる痘痕。
 
あいきやう・げ【−キヨウ−】[愛敬毛](名〕顔に愛敬をそふるおくれ毛。
 
あいぎやう・づ‐く【−ギヨウ−】[か、き、く、く、け、け][愛敬付](自、か四)愛敬ある樣に見ゆ。
 
あいきやう・べに【−キヨウ−】[愛敬紅](名)芝居にて俳優が耳朶に塗りたる紅。
 
あいきやう・ぼくろ【−キヨウ−】[愛敬黒子](名)却て愛敬ある樣に見ゆるほくろ。
 
あいきやう・まもり【−キヨウ−】[愛敬守](名)婚禮の際花嫁の首にかくる守。
 
あいきやう・もち【−キヨウ−】[愛敬餅](名)婚姻後三日日に、舅姑におくる餅。
 
(あい・ぎよく[愛玉](名)他人の娘の敬稱。
 
(あい・ぎん[愛吟](名)(一)フねに好みて詩歌を吟ずること。(二)その詩歌。
 
(あい・ぎん[哀吟](名)悲しみの意を詠じたる詩歌。
 
あい・くる‐し【しく、し、しき、しけれ】[愛](形、二)かはゆらし。あいきゃうこぼるゝばかりなり。
 
(あい・ぐわん[哀願](名)なげきてねがふこと。事情をうちあけてねがふこと。哀訴。
 
(あい・ぐわん[愛玩](名)愛してもてあそぶこと。
 
(あい・げ[愛假](名)【佛】婬欲のまよひ。
 
(あい・けい[愛敬](名)愛情深くして禮儀厚きこと。
 
(あい・げう【−ギヨウ】[愛樂](名)【佛】まことの愛。
 
(あい・こ[愛古](名)古昔に關する事物を愛すること。好古。
 
(あいこ[愛顧](名)なさけをかくること。ひきたて。
 
(あい・ご[愛護](名)(一)いつくしみて保護すること。(二)芝居にて、女形の用ふる一種の鬘。
 
(あい・こく[哀哭](名)かなしみてなくこと。
 
(あい・こく[愛国](名)自國を愛すること。自國を大切にすること。
 
(あいこく・しん[愛國心](名)自國を大切に思ふ心。
 
(あいこ・しゆぎ[愛己主義](名)【倫】「りこしゆぎ」(利己主義)に同じ。
 
あい・さ[秋沙](名)【動】「あきさ」に同じ。
 
(あい・さう【−ソウ】[愛想](名)(一)もてなしぶり又は應對のやさしくして、人ずきのすること。(二)もてなし。應對。(三)機嫌をとること。(四)愛情。よしみ。――・が・つきる[愛想盡]興が醒めてその人に對する愛想も無くなる。――・を・つかす[盡2愛想1]あいさうづかしをなす。
 
あいさう・づかし【−ソウ−】[愛想盡](名)(一)愛情を捨つることよしみを絶つこと。(二)よしみを絶ちて人を罵詈する言。
 
(あい・さつ[挨拶](名)(一)人と應對すること。(二)答禮。返禮。(三)時儀。   
 
(あいさつ・にん[挨拶人](名)(一)あいさつに出る人。(二)仲裁人。
 
(あい・し[哀子](名)親の喪中にある子。
 
(あい・し[愛子](名)かはゆき子。いとしご。
 
(あい・じ[愛兒](名)前條に同じ。
 
(あい・じつ[愛日](名)(左傳の註に「冬日可v愛」とあるに出づ)冬の日。
 
(あい・しふ【−シウ】[愛執](名)愛情に執着すること。愛情絶難きこと。愛着。
 
(あい・しやう【−シヨウ】[哀傷](名)人の死を悲しむこと。
 
(あい・じやう【−ジヨウ】[愛情](名)互に和合して他の幸福安寧を希(【コヒネガ】)ふ感情。めでいつくしむこゝろ。
 
あい・す【せ、し、す、する、すれ、せよ】[愛](他、さ變)(一)いとほしく思ふ。かはゆく思ふ.(二)異姓人をかはゆく思ふ。(三)おもんず。大切にす。(四)たのしく思ふ。このむ。(五)すて難く思ふ。をしむ。
 
アイス・クリーム[Ice‐cream](名)一種の食品、最も普通なる製法は、牛乳四合・玉子五個と砂糖三十目程の割合に混入して湯煎し、さまし置きて製氷器に入れ氷結せしむるなり。氷菓子。
 
(あい・せき[愛惜](名)をしむこと。をしみ。
 
(あい・せき〔哀惜](名)人の死をかなしみをしむこと。
 
(あい・せき[哀戚](名)かなしみ。なげき。
 
(あい・せふ【−シヨウ】[愛妾](名)氣に入りのめかけ。
 
(あい・ぜん[愛染](名)(一)【佛】明王の一、愛慾を司る、身色日光の如く、三目怒視し、六臂に杵(【シヨ】)・鈴(【リヤウ】)弓・箭・蓮華を執り、光※[餡の旁+炎]中に住す。(二)役者の顔の隈どりの一、愛染明王に扮する時などに用ふ。
 
(あい・ぜん[藹然](名、副)しげるさまにいふ語。
 
(あい・ぜん[靄然](名、副)和氣の集るさまにいふ語。
 
(あい・そ[哀楚](名)かなしみ。なげき。
 
(あい・そ[哀訴](名)「あいぐわん」に同じ。
 
(あい・そ[愛想](名)「あいさう」に同じ。
 
(あい・ぞう[愛憎](名)愛するとにくむこと。
 
あいそ・づかし[愛想盡](名)あいさうづかし。
 
(あい・た[愛他](名)他人の幸福を計ること。
 
(あい・たい[靉靆](名)(一)雲のたなびきわたるさまいふ語。(二)めがね。
 
(あい・だい[疑の左+欠乃](名)(一)舟に棹さす時相應ずる聲。(二)ふなうたの節をとる聲。(三)ふなうた。
 
(あい・たう【−トウ】[哀悼](名)「あいしやう」に同じ。
 
(あいた・しゆぎ[愛他主義](名)【倫】自己の幸福は他人の幸福の中に見出すべしとし、他人の幸福を増進することを以て行爲の標準となす主義。利他主義。
 
++あいだち・な‐し【く、し、き、けれ】[間斷無](形、一)(あひだちなしの轉)(一)わけへだてなし。差別なし。(二)分別なし。わきまへなし。「いとあいだちなしや」。
 
++あいだて・な‐し【く、し、き、けれ】[間隔無](形、一)あいだちなし。
 
++あいた・どころ[朝所](名)あしたどころ。
 
++あい・だ‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[愛垂](自、ら下二)愛せられてきまゝををす。あまゆ。「なまめきあいだれてものしたまひし」。
 
++あいたん・どころ[朝所](名)「あしたどころ」に同じ。
 
(あい・ぢやく[愛着](名)愛にひかさるゝこ。愛情に執着すること。
 
あ・いつ[彼奴](代)あやつ。あのやつ。きやつ。
 
++あい・な‐し【く、し、き、けれ】[間無](形、一)あひなし。
 
++あい・なし【く、し、き、けれ】[愛無](形、一)かはゆげなし。おもしろみなし。
 
++あいな・だのみ(名)あてにならぬ頼み。そらだのみ。
 
{あいなめ[鮎並](名)【動】あゆなめ。
 
{あいにく[生憎](副)あやにく・
 
アイヌ[Ainu](名)北海道舊土人の稱、元來彼等の語にて人類の義なるを、廣くこれを以て其種族の名とす。
 
(あいねん[愛念](名)愛するおもひ。
 
アイノ(名)「アイヌ」に同じ。
 
(あい・ぶ[愛撫](名)なでさする如く寵愛すること。
 
(あい・べつ[鞋韈](名)くつした。
 
(あい・べつり[愛別離](名)【佛】愛する人と心ならず別るゝこと。
 
(あいべつり・く[愛別離苦](名)【佛】八苦の一、愛する人と別るゝ苦。
 
(あい・ぼ[哀慕](名)親しきものに別れ、其人をかなしみしたふこと。
 
(あい・ぼく[埃墨](名)黒きほこり。
 
アイボリー[Ivory](名)厚くして光澤ある西洋紙、名刺等を作るに用ふ。
 
(あい・まい[曖昧](名)(一)明白ならざること。たしかならざること。(二)うしろぐらきこと。
 
あいまい・や[曖昧屋](名)あやしげなる女を抱へおきて客を呼ぶ家。
 
(あい・みん[哀愍](名)あはれみ。なさけ。
 
(あい・ゆう[隘勇](名)臺※[さんずい+彎]の生蕃を討平する土民の壯丁。
 
(あいゆう・せん[隘勇線](名)隘勇が生蕃の來襲を妨禦する為に張れる歩哨線。
(あい・よく[愛愁](名)愛着の心。
(あい・らく[愛樂](名)相愛して樂むこと。
 
あい・ら‐し【しく、し、しき、しけれ】[愛](形、二)かはゆらし。いとし。
 
(あい・れん[愛憐](名)あはれみ。いつくしみ。
 
あ・いろ[文色](名)すぢ。わけ。けぢめ。あやめ。
 
(あい・ろ[隘路](名)せまき嶮岨なる道。
 
(あう・あう【オウオウ】[怏怏](名、副)不快又は滿足せざるさまにいふ語。(鞅鞅)。
 
(あう・あう【オウオウ】[嚶嚶](名)小鳥の睦じげに鳴く聲。
 
++あう・い・く【オウ−】【か、き、く、く、け、け】[奥行](自、か四)人の後につきて行く。
 
アウエル・とう[−燈=Auer lamp](名)「はくねつとう」に同じ。
 
(あう・き【オウ−】[懊氣](名)氣持のあしきこと。
 
(あう・ぎ【オウ−】[奥義](名)おくのて。おくぎ。
 
(あう・けい【オウ−】[殃慶](名)わざはひとよろこびと。
 
(あう・さ[鶯梭](名)梭(【ヲサ】)の機の間をくぐる如く鶯の樹枝の間を飛びまはること。
 
(あう・さい【オウ−】[殃災](名)わざはひ。さいなん。
 
(あう・さつ【オウ−】[鏖殺](名)みなごろし。
 
(あう・し【オウ−】[奥旨](名)あうぎ。おくのて。
 
アウシキナ(名)(「アイヌ」語 Aushi‐kina)【植】毛莨科に屬する多年草、北海道などに産す、莖の高さ二尺五寸許、六七月の頃、莖頂に小白花開く。
 
(あう・しやう【オウシヨウ】[鞅掌](名)つかさどること。いそがしくはたらくこと。
 
(あうしゆく・ばいけ【オウ−】[鶯宿梅](名)【植】梅の變種、花の香殊に高く、瓣は一重なるも八重なるもあり。
 
(あう・ぜつ愕【オウ−】[鶯舌](名)うぐひすのこゑ。
 
(あう・たう【オウトウ】[櫻桃](名)【植】ゆすらうめ。
 
アウト[Out](名)「ローンテニス」「ベースボール」などに用ふる語、技術を誤りて一點を失ひたること。
 
アウト・カーブ[Out curve](名)魔球の一種、打手遠き方に曲がるもの。
 
(あう・なう【オウノウ】[懊悩](名)心えおなやますこと。なやみ。もだえ。
 
++あう・な‐し【く、し、き、けれ】[奥無](形、一)深き思慮なし。あさはかなり。
 
(あう・べう【オウビヨウ】[秧苗](名)稻のなへ。
 
(あう・む【オウ−】[鸚鵡](名)【動】攀木類中鸚鵡科に屬する鳥、熱帶地方の産にして種類多し、體躯は鶫(【ツグミ】)乃至鷄大なり、頭は圓く短大にして、上嘴は鈎曲し舌嘴は短小なり、舌は肥厚肉質にして巧みに人語をまね、羽色美麗なり。――・の・さかづき[鸚鵡杯]鸚鵡貝の殻にて作れる杯。
 
あうむ・がひ【オウムガイ】[鸚鵡貝](名)【動】頭足類中四鰓類に屬する貝、形は鸚鵡の嘴に似る、外套腔中に二對の鰓を具ふ、口の周圍に絲状の觸手數多あり、介殻は螺旋状をなし、外表に赤褐色の斑文ありて、内面は美麗なる真珠質を以て覆はる、介殻の内腔は許多の隔壁によりて數房に區分せられ、最終の大房に體躯を容る、介殻麗しく、酒杯又は花瓶などに製す。
 
あうむ・がへし【オウムガエシ】(名)(一)人より言ひかけられたる歌を、僅に語を換へて、直ちに返歌となすこと。(二)人よりさされたる杯を、僅に飲みて、直ちに返杯すること。(三)學説・議論などを聞きたるままに述ぶること。
 
あうむ・せき【−オウム】[鸚鵡石](名)(一)【鑛】孔雀石の一種、うすき黄緑色を帶ぶ。(二)物の音の反響する石。(三)俳優のせりふを書き拔きたるもの。
 
++あう・よ‐る【オウ−】【ら、り、る、る、れ、れ】[奥寄](自、ら四)奥の方
 
++あ・うら[足占](名)古昔の占法、足跡にて吉凶を占ふもの。
 
ア・ウン(名)【佛】氣息の出入、悉曇音韻學により、アは一切開口の始め、ウンは諸聲合脣の終りなればいふ。(阿吽。阿※[口+云])。
 
++あえか(名)(一)よわ/\しきこと。かよわきこと。(二)いたいけなること。
 
++あえ・もの[肖物](名)あやかりもの。
 
(あ・えん[亞鉛](名)【化】青白色の脆き金屬、天然には方亞鉛鑛・菱亞鉛鑛等となりて存在す、適度に熱すれば展性を得、薄板となすべし、強く熱すれば再び脆くなり、遂に燃えて白色の酸化亞鉛を生ず、濕氣に觸るれば表面は變化すれど内部に及ばざるゆゑに、鐵線鐵板を被ふに広く用ゐられ、又眞鍮・洋銀等の合金を製するに用ひらる。
 
あえん・イオン[亞鉛−](名)【化】無色にして二價の陽イオン、高等生物に對して毒性あり。
 
(あえん・くわ[亞鉛華](名)【化】白色の粉末、成分は酸化亞鉛にして、水に溶解せず酸類に溶解し、種々の亞鉛鹽を生ず、顔料及醫藥に用ひらる。
 
(あ・えんくわりん[亞鹽化燐](名)【化】揮發し易を無色の液體、奪水剤等としてひらる。
 
(あ・えんそさん「亞鹽素酸](名)【化】烈しを腐蝕性を有する帶緑黄色の液「ベンゼン」と硫酸との混合液に鹽素酸「カリウム」の粉末を混じて製す。
 
(あえん・ばん[亞鉛版](名)一種の印刷版、よく研磨したる亞鉛の面に描畫し、「タンニン」酸又は燐酸と「アラビアゴム」との混合液を用ひてこれを腐蝕せしめ、其上に「インキ」を捺して印刷す。
 
(あえん・まつ[亞鉛末](名)亞鉛の粉末。
 
あえん・めっき[亞鉛鍍金](名)亞鉛の溶液中に鐵を通じてその表に亞鉛の薄被を施すこと、鐵の錆を防ぐに用ふ。
 
{あお‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[煽](自、他、ら四)あふる。
 
あか[赤](名)七色の一、皿の色に似たるもの。
 
あか[銅](名)【鑛】「あかがね」に同じ。
 
あか[垢](名)(一)あせあぶらなどの塵とまじりて肌に附著したる汚物。(二)物に附著したる流動體のかす。(三)身の不行状。
 
あか[※[さんずい+金](名)船中にたまりたる水。
 
アカ[閼伽](名)(梵語Argha)(一)佛に奉る供物。(二)水。
 
あか−[赤](接頭)或語に冠して、あらはなるさま、又は全きさまを表す。「−はだか」「−うそ」。
 
あか・あか[明明](副)頗るあかるく。
 
あか・あしげ[赤葦毛](名)馬の毛色。葦毛に赤みを帶びたるもの。
 
あかあし・しぎ[赤足鴫](名)【動】鴫科に屬する鶫(【ツグミ】)大の鳥、嘴脚共に長く、脚は赤色を呈し、體の上部は「オリーブ」色にして、暗黄色の斑點あり、他は白色なり・あかがねしぎ。
 
あかあし・とんぼ[赤足蜻蛉](名)【動】とんぼの一種、雄は頭部胸部黒色にして、腰部は橙赤色なり、雌は雄よりも大きくして、胸腹部は赤色なり。
 
あか・あづき[赤小豆](名)【植】荳科に屬する栽培草本、花は概ね黄色、種子は通常帶赤色にして、稀に白色なるもあり、食料又は洗粉等に用ひらる。
 
あか・あは【−アワ】[赤粟](名)【植】禾本科に屬する直立草本、小穂状花序は穗状の圓錐花序に排列し、果實を生ずべき花は光澤を有す、種子は食用に供せらる。
 
あか・あり[赤蟻](名)【動】膜翅類中蟻科に屬する蟲、體長一分弱、體色黄褐色、後胴背の二刺は尖る、腹柄は二節にして腹部は光澤あり。
 
あかいと・おどし[赤絲縅](名)茜(【アカネ】)にて染めたる絲を以ておどしたる鎧。
 
あか・いも(名)【植】(い)さつまいもの一種、皮赤くして、味の佳良なるもの。(赤藷)。(ろ)さといもの一種、葉柄紫赤色なるもの。たうのいも。(紫芋)。
 
あか・いろ[赤色](名)(一)あかき色。(二)++かさねの色目、表は蘇芳、裏は花田なるもの。あかばな。(三)++織物の色、經紫にして緯の赤なるもの。
 
あか・いわし[赤鰯](名)(一)こぬかをまぶせたる鰯を、鹽漬けとなし又は乾したるもの、節分の日これをひゝらぎに貫きて戸口に插し、おにやらひの儀式に用ふ。(二)錆びたる刀。
 
あか・う【−コウ】[赤魚](名)【動】かさご科に屬する魚、體扁平にして口大く下顎稍隆起す、體色は脊部紅色にして腹部淡し、體長九寸餘に達す。
 
(あ・かう【−コウ】[阿衡](名)攝政又は宰相の異名。
 
あか・うきぐさ[赤浮草](名)【植】蘋類槐葉蘋料に屬する微少なる草、湖・沼・池・澤・水田等に夥しく浮生し、水面を紅色又は緑色ならしむ。(滿江紅)。
 
あか・うそ[赤嘘](名)全くのいつはりごと。
 
あか・うなぎ[赤鰻](名)【動】圓口類中めくらうなぎ科に屬する魚、脊髓なく、口唇に數條の鬚を生ず、鼻腔は口腔と通じ、眼は甚だ不完全にして皮下に隱る、體長一尺許、海に産し、口を以て他の魚體に吸着し、時には其體腔内に穿入して内部寄生を營むことあり。
 
あか・うみがめ[赤※[虫+雋]龜〕(名)【動】海洋に産する龜の一種、形状・大さ・習性共にあをうみがめに酷似し、色は稍褐色を帶ぶ。
あか・うるし[赤漆](名)朱又は赤色の顔料を混へたる漆汁。
 
あか・えそ[赤※[魚+時]](名)【動】喉〓類の魚※[魚+時]に似て脊部に赤及び淡紅色の斑點あり、腹は白色にして深紅と淡紅との横條あり。
 
あか・えぞまつ[赤蝦夷松](名)【植】松栢料の喬木、北海道に産し、樹皮は赤褐色にして枝條細く軟かなり、針葉は細く枝に直角をなして互生す。
 
あか・えひ【−エイ】[赤※[魚+覃]](名)【動】横口類に屬する魚、胴體頗る〓張して、體躯は團扇形をなし、扁くして長き尾を有す、尾の中央に劔状の鋭き棘ありて、背の中央に砂粒状の突起續生す、體色は背淡黄にして原白し、鰓孔は口と共に下面に開く、我國西南海に多く産す。
 
あか・えび[赤海老](名)【動】海老の一種、普通近海に見るものにして、長さ約三寸。車海老に似、體色は赤褐色、短毛を生ず。
 
あか・おどし[赤縅](名)茜にて染めたる絲又は革にて縅したる鎧。
 
++あか・おほくち【−オオクチ】[赤大口](名)したばかまの別名、儀式などのときに、うへばかまの下に着用するもの、すずのひらぎぬを以て製す、色は緋を用ふるを常とすれど、老人は白張りを用ふ。
 
あか・かうぢ【−コウヂ】[赤麹](名)色赤き麹、料理にてゆで玉子などを染むるに用ふ。
 
++あか・かがち[赤酸漿](名)【植】ほゝづき。
 
あか・かげ[赤鹿毛](名)馬の毛色、鹿毛の赤みを帶びたるもの。(赤〓)。
 
++あか・がさ[赤瘡](名)「はしか」に同じ。
 
あか・がし[赤樫](名)【植】殻斗科に屬する喬木、葉は橢圓形にして尖り、長き葉柄を有す、幼時は細毛生じ成長すれば平滑となる、木材は帶赤色を呈し、種々の用に供せらる。(赤橿、血※[木+諸])。
 
あか・がしは【−ガシワ】[赤柏](名)(い)【植】あかめがしは。(ろ)赤飯。「膳廻り外に物なし――」。
 
あか・かすげ[赤糟毛](名)馬の毛色、糟毛の赤みを帶びたるもの。
 
あか・かたばみ[赤酢漿](名)【植】酢漿草科に屬する小草本、酸味を有し、葉は三箇の小葉より成る、莖は傾臥し、花は黄色なり、葉は食ふべく、又鏡を磨くに用ひらる。
 
あか・ガツパ[赤合羽](名)紅がら色の桐油紙にて製したる合羽徳川時代におもに卑賤なる者これを着用したり。
 
あか・がに[赤蟹](名)【動】蟹の一種、形小にして山谷溪間又は河堤等に穴居し、其の螯(【ハサミ】)赤色なり。やまがに。べんけいがに。
 
あか・がね[銅](名)【鑛】(赤金の義)淡赤色の光澤を帶びたる金屬、天然には純銅鉱・〓銅鉱となりて存在す、展性及び延性に富み、銀に次ぎて熱及び電氣の良導體なり、濕氣中にて緑色の錆を生じ、空氣中にて熱すれば黒色の酸化銅を生ず、用途甚だ廣し。
 
あかがね・しぎ[銅鴫](名)【動】あかあししぎ。
 
あかがは・おどし[赤革縅](名)茜にて染めたる革にて縅したる鎧。
 
あか・がひ【−ガイ】[赤貝](名)【動】辨鰓類中あかゞひ料に屬する貝、介殻は心臓形にして膨(【フク】)れ、ひだ皺三十五内外あり、外面は淡褐色にして、内面は白色なり、我國にては多く東海に産し、淡水混和せる淺海の泥中に棲息す、肉色赤くして食用に供せらる。きさがひ。
 
あか・がへる【−ガエル】[赤蛙](名)【動】無尾類中尖指類に屬する兩棲動物、體色薄赤色にして暗褐色の斑點あり、指趾の末端尖り、よく跳躍す、肉は小兒の疳藥として効ありといふ。あかひき。
 
あか・かみきり[赤天牛](名)【動】天牛屬の甲蟲、頭部は三角形にして濃赤色なる、杉材の害蟲なり。
 
++あか・がり[※[軍+皮]](名)「あかぎれ」に同じ。
 
アカ・き[閼伽器](名)「アカ」を佛に供する器具。
 
あか・ぎ[赤木](名)(い)【植】大戟科の喬木、葉は三出の複葉にして細小なる花蔟生す、質堅牢にして色赤く、白色の木理あり、琉球・臺※[さんずい+彎]・印度より渡來し唐木細工に用ひらる。(ろ)皮をけづりたる材木。
 
あ・がき[足掻](名)あがくこと。
 
あか・きじ[赤雉](名)【動】「きんけい」に同じ。
 
++あか・ぎぬ[緋袍](名)(い)緋色の袍(【ハウ】)。(ろ)赤色の狩衣を着たる檢非違使の下司。
 
あか・きび[赤黍](名)【植】禾本科の植物、もちきびの一種、穂の色赤し、酒を釀し或は團子に作る。(麻黍、丹黍)。
 
あか・ぎり[赤桐](名)【植】「ひぎり」に同じ。
 
あか・ぎれ[※[軍+皮]](名)(赤切の義)さむさにあたりて手足の皮の裂けたるもの。あかがり。
 
あ・が‐く【か、き、く、く、け、け】[足掻](自、か四)(一)++前足にて地をかく。(※[足+宛])。(二)あくせくす。(三)さま/”\の方法を以て氣をもむ。
 
あか・くさ[赤草](名)【植】藜(【アカザ】)科に屬する草木、葉は細長にして全縁なり、花は苞を有せず、莖は〓とし、葉は食用に供せらる。
 
++あか・ぐすり[赤藥](名)赤色の丸剤にして、昔時急病に用ひしもの、人參一匁と辰秒一匁とを混じて製す。
 
++あか・ぐそく[赤具足](名)小札(【コザネ】)を赤き漆にて塗り、赤縅にしたる具足。
 
++あか・くちば[赤朽葉](名)かさねの色目、うす紅に黄を帶びたるもの。
 
あか・ぐま[赤熊】(各)【動】食肉類中熊科に屬する獣、毛は茶鳶色にして、喉に月の輪なく、大なるは八九尺に至る、性あらし、北海道に産す。(〓、羆)。
 
あか・くみ[※[さんずい+金]汲](名)あかとりしやく。
 
あか・くりげ[赤栗毛](名)馬の毛色、栗色に赤を帶びたるもの。(黄※[馬+留]梱)。
 
あか・げ[赤毛](名)(一)赤ばみたる髪の毛。(二)〓に似たる馬の毛色。
 
あか・ゲツト[赤毛布](名)田舍より都會見物に出でたる人。
 
あか・けむし[赤毛蟲](名)【動】蛾類の幼蟲、八九月頃現れ、桑の木に棲息し、九月の末土中に入りて蛹となり、翌年五六月頃羽化す、桑の害蟲なり。
 
あか・けら[赤啄木鳥](名)【動】きつゝきの一種、脊は黒色にして白き斑點あり、頭及び腹の下部は赤色を呈し、腹の上部は茶褐色を帶ぶ、雌は稍色を異にせり。
 
あか・こ[赤子](名)【動】毛足類中みゝず科に屬する細蟲、線状にして赤色を帶び、溝渠などの泥中に群棲す、採りて金魚の餌食とす。
 
あか・ご[赤子](名)生まれてほどへぬ小兒。
 
あか・ごけ[赤苔](名)【植】地衣類に屬する下等植物、紫色を帶ぶ。
 
あか・ごめ[赤米](名)(い)薄き赤斑のある米。(ろ)古びて赤みを帶びたる米。(は)だいたうまい。
 
あか・こめつき[赤米搗](名)【動】甲蟲類中米搗蟲の一種、頭・胸は黒色にして翅鞘は赤褐色なり、體は細長くしてやゝ扁平なり、巧に跳躍す。
 
あかざ[藜](名)【植】藜科に屬する大草本、葉は長き葉柄を有して、縁邊に缺刻及少數の鋸齒を有し、多少卵形をなす、秋の頃粒状の花開く、葉は食用に供せらる。
 
++あかさか・やっこ[赤坂奴](名)江戸山の手の大名旗本に仕へたる奴。
 
あか・ざたう【−ザトウ】[赤砂糖](名)精製せざる褐色の砂糖。
 
あか・さんご[赤珊瑚](名)【動】珊瑚類の一種、暖流の深さ二十尋乃至百尋の海底の岩礁に固着す、觸手は八箇あり、皮質は橙色を呈し、骨格は緻密にして濃紅色を帶ぶ。
 
あかさんご・じゆ[赤珊瑚珠](名)赤珊瑚の骨骼にてつくりたる珠。
 
あかし[證](名)(一)あかすこと、證〓すること。(二)證據。
 
あかし[燈](名)ともしび。あかり。
 
++あかし[明釣](名)篝をたき、魚を寄せて釣るこ。
 
あかし・ぶみ[證文](名)ちかひのふみ。
 
あか‐し【く、し、き、けれ】[赤](形、一)(一)あか色なり。(丹、紅)。(二)光りあきらかなリ。曇りなし。明。(三)心にうしろぐらき事なし。いつはりなし。あかき・こころ[赤心]いつはりなき心。mど〓〓(丹心)。あかい・しんによ[赤信女]〓家。未亡人。
 
アカシア[Acacia](名)【植】荳科に屬する植物、温暖なる地方に産し、樹の高さ一二丈に及び、枝の末端に自き蝶形の小花開く、樹幹は材木とし、或はアラビアゴムの製造に用ひらる。
 
あかし・くら‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[明暮](他、さ四)夜をあかし日をくらす。月日をおくる。
 
あかし・だま[明石珠](名)珊瑚珠に模擬して、人工を以てつくれるもの、はじめ播磨國明石地方より出でしゆゑに此名あり。
 
あかし・ちぢみ[明石縮](名)播磨國明石地方より産出するちゞみの織物。
 
あか・しで[赤垂柳](名)【植】樺木科の喬木、高さ四五丈、外皮は平滑にして黒褐色を呈し、葉は互生し、橢圓形にして鋸齒を具ふ、花は雌雄を別にし、材は薄黄色にして器具の柄とし、又椎蕈を作るに用ひらる。
 
あか・しほ【−シオ】[赤潮](名)硅藻類又は微細なる生物の多數に群集して色を生じたる海水、生物に害を及ぼす事あり。
 
あか・じみ[垢染](名)垢にしみたるよごれ。
 
あか・じ‐む【ま、み、む、む、め、め】[垢染](自、ま四)垢にしみてよごる。あかつく。
 
あか・しやこ[赤蝦蛄](名)【動】海老の一種、大いさ車海老に匹敵し、前端の脚一對は螯(【ハサミ】)となり、背面には稜形の紋あり。
 
あか・しらが[赤白髪](名)あかみを帶びたるしらが。
 
あか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[明](他、さ四)(一)あきらかにす。(二)秘密をあらはす。(三)うたがひを正して、事體を分明ならしむ。(四)障碍物を取りのぞく。(五)夜の明くるまで居る。
 
あか・すぐり(名)【植】虎耳草科の落葉灌木、莖の
 
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(く・とう[句讀](名)文章の中の一小區分の稱、讀は切りて讀む所にして、句は文章中の一段なり。――・てん[句讀點](名)句點と讀點と。――を きる 句讀點をしるす。
 
く・どき[口説](名)(一)くどくこと。くどく言。(二)芝居狂言にて、口説の文句のときに行ふふり。――・うた[口説歌](名)そゝりぶしの一種、なげぶしに謠ふもの、昔時、吉原返りの誘客など、よく鼻唄にて謠へり。
 
(く・どく[功徳](名)【佛】善行のめぐみ他に及ぶこと。行已に足りて徳外に及ぶこと。又、積善の力。――・え[功徳衣](名)【佛】袈裟(【ケサ】)の異稱。
 
く・ど‐く【か、き、く、く、け、け】[口説](自、か四)(一)くど/\しく繰り返していふ。(二)しきりに逼(【セマ】)り説く。うるさく言ふ。(三)意に從はしめんといろ/\に説きつく。
 
くど・くど‐し【しく、し、しき、しけれ】(形、二)いとくどし。くだ/\し。
 
くど‐し【く、し、き、けれ】[諄](形、一)わづらはし。しつこし。
 
(ぐ・どん[愚鈍](名)バカ。のろま。おろか。
 
ぐとん・の・をしへ【−ヲシエ】[瞿曇教](名)釋迦牟尼の説きし教、即ち佛教。
 
(く・ない[區内](名)其區の中。
 
(くない・くわん[宮内官](名)宮内省に出仕する高等官。
 
(くない・しやう【−シヨウ】[宮内省](名)(一)古昔の八省の一、宮中の御料調度の整理などを掌りしところ。(二)宮内大臣の統轄の下に屬し、其意思を受けて帝室に關する一切の事務をとりあつかふ所。又、宮内大臣が處理する事務の全體の稱。
 
(くない・だいじん[宮内大臣](名)帝室に關する一切の事務を統轄し、所部各官を統轄し、かねて華族を監督する親任官。
 
(く・なう【−ノウ】[苦悩](名)くるしみなやむこと。なやみ。くるしみ。「娑婆の−」。
 
++くなど・の・かみ(名)道のちまたの神。
{くなど・の・かみ(名)[岐神]〔神ノ本號ヲ來名戸トイフ〕岐《チマタ》ノ神。
 
くに[國](名)(一)國家。(二)國土。(三)君主又は諸侯の政權の全體の稱。「−亡山河在」。(四)古昔の行政區劃の一、即ち、郡を總合したる名稱。「山城−」、「大和−」(五)封土。知行所。(六)ふるさと。故郷。(七)京地以外の地。ゐなか。地方。「−もの」。
くに(名)[國](一)スベテ一區域《ヒトカギリ》ノ地ノ稱。(二)道《ダウ》ノ内ニテ、數郡ヲ統ブル土地ノ分界《ワカチ》ノ稱。州(三)大名小名ノ、都ニ居テ、其領地ヲ呼ブ稱。「−許」−詰」−替」封國(四)他郷ニ居テ己ガ郷貫《フルサト》ヲ稱スル語。「−ヘ歸ル」郷國(五)地球ノ上ニテ、大小、境ヲ成シテ、他ト異ナル政府ノ下ニ統ベラルル土地ノ稱。「日本ノ−」支那ノ−」英吉利ノ−」國 邦
 
++ぐに(名)[五二]博奕ノ語、ニツノ釆《サイ》ノ目ニ、五ト二ト並ビ出ヅルコト。
 
++くに・うど[國人](名)くにびと。
 
++くに・が[陸](名)くが。
{くに・が(名)[陸]〔國處《クニカ》ノ義カ〕陸《クガ》ニ同ジ。
 
くに・がた[國形](名)國人の状態又は國土の形勢。
{くに・がた(名)[國形]國ノ形勢《アリサマ》。
 
くに・がた[國方](名)地方。「−の武士」。
 
くに・がへ【−ガエ】[國替](名)昔時、大小名の領地をかへ移されしこと。(移封)。
くに・が|へ《エ》[國替]大名小名ノ領地ヲ、他處ニ換ヘテ賜ハルコト。移封
 
くに・がら[國柄](名)一國の成立せる状態。國體。
くに・がら(名)[國柄]國ノ成立。國體
 
(く・にく[苦肉](名)自分の身を苦しめて、敵をあざむくこと。例へば故意に刑罸を受けて、敵にいつはり降りて、あざむくなどの類。「−の計」。
 
くに・くづし(名)[國崩]〔城ヲモ國ヲモ崩スベキ意〕石火矢ノ類。
 
くに・ぐに[國國](名)それ/”\の國。かくこく。
 
くに・ことば[國言葉](名)地方の方言。ゐなかことば。くになまり。
 
くに・ざかひ【−ザカイ】[國境](名)國の境界。くにのしきり。くにのはて。
 
++くに・じやうらふ【−ジヨウロウ】[國上臈](名)國方の貴婦人の釋。
 
くに・たみ[國人](名)(もと「くにびと」といひしを後嵯峨天皇のとき、御諱の邦仁と音似通ふためにいひかへたるなりといふ)一國の人民。こくじん。こくみん。
くに・たみ(名)[國人]〔くにびとナルヲ、後嵯峨院ノ御諱、邦仁ヲ避ケテ訓《ヨ》ミ替ヘタルナリト云〕一國ノ人民。國民。
 
++くに・つ・かみ[地祇](名)國土を守護したまふ神。あまつかみの對。(地神、國神)。
{くに・つ・かみ(名)[地祇]下土《クニ》ニ祀ル所ノ神。(天津神ニ對ス)
 
++くに・つこ[國造](名)「くにのみやつこ」に同じ。
{くにつこ(名)[國造]くにのみやつこノ誤。
 
くに・づめ[國詰](名)昔時、大小名及武士の江戸に詰め居るを江戸詰といひしに對して、大小名は己の領地に武士は其主君の領地に居りしことの稱。
 
++くに・つ・もの[國津物](名)土地に作りたる産物。(土毛、土物)。
 
++くに・つ・やしろ[國津社](名)くにつかみを祀(【マツ】)りたる社。(國社)。
 
くに・なまり[國訛](名)(一)地方言語の正しからぬ習慣。又、其習慣ある言語。ゐなかなまり。ろなかことば。(二)我領地又は郷里の言語話。
 
++くに・の・おや[國親](名)天皇の御親を申し奉る語。
 
++くに・の・かみ[國守](名)こくしゆ。
 
++くに・の・ちぶさ[國乳房](名)國の恩をたとへいふ語。「――の頼もしきかな」。
 
++くに・の・はしら[國柱](名)大臣の異稱。
 
++くに・の・はは[國母](名)皇后又は皇太后などを申し奉る語。こくぼ。こくも。
 
++くに・の・みやつこ[國造](名)上古、國といふ一の行政區劃を主宰せし御臣(【ミヤツコ】)。みやつこ。
 
++くに・のをさ[國長](名)國の守宰者即ちくにのみやつこ・こくしゆ等の稱。「兄をすればーはし。
 
++くに・はら[國原](名)國を廣く見ていふ語。「國見をすれば――は」。
 
くに・ばら[國腹](名)大名などの子の其領地にある婦人の腹に産まれたること。又、其子。「――の男子」。
 
くに・ばらひ【−バライ】[國拂](名)其國を追放せらるゝこと。
 
くに・びと[國人](名)くにもの。又、くにたみ。
 
く・にふ【−ニウ】[口入](名)(一)くちいれ。(二)訴訟。
 
くに・ぶぎやう【−ギヨウ】[國奉行](名)國々の治績を視察しまた其地方に於ける訴訟を判斷せし職名。
 
++くに・ぶみ[國文](名)古昔、諸國より貢物に添へて奉りし文書。
 
++くに・み[國見](名)國の形を高き處より見ること。
 
++くに・みたま[國御魂](名)國を草創したる徳のある神。
 
くに・めぐり[國廻](名)國々をめぐりあるくこと。
 
くに・もち[國持](名)(一)昔時、大名の一ケ國以上を領有せしこと。(二)國持大名の略言。――・だいみやう【−ミヨウ】[國持大名](名)昔時、一ケ国以上を領有せし大名の稱。(國守)。
 
くに・もの[國者](名)(一)地方の人、ゐなかもの。(二)同郷の人。ところのもの。
 
{ぐにや・ぐにや(名、副)軟(【ヤハラ】)かく力なきさまにいふ語。ぐだ/”\。
 
++くに・わかれ[國別](名)他國へ旅立すること。
 
くに・わけ[國別](名)(一)國の區別。(二)國々によりて事を區別すること。
 
く・にん[公人](名)(一)古昔、公文所に仕へし小役人。(二)古昔、禁中の地下の小役人。――・ぶぎやう【−ギヨウ】[公人奉行](名)鎌倉時代に、政所又は問注所にて奉行の進退をつかさどりし役名。
 
++く・にん[宮人](名)宮仕(【ミヤツカヘ】ヅ)の人。
 
++くぬ・が[陸](名)くが。
 
++くぬが・の・みち(名)北陸道の古名。
 
くぬ・ぎ[椚](名)【植】殻斗科に屬する木、高さ二三丈に達す、葉は栗に似て形細長く周邊に刺あり、花もまた栗に似る、雌雄異株にして果實はどんぐりと名づけ、材木はおもに薪炭用に供せらる。くのぎ。(※[木+歴]、櫟、※[木+國])。
 
++くぬ・ち[國中](名)國内。
 
(く・ねつ[苦熱](名)くるしきほどの暑氣。ひどいあつさ。
 
くね・くね[曲曲](名、副)折れまがりて直からざるさまにいふ語。「――したる坂」。――‐し【しく、し、しき、しけれ】[曲曲](形、二)(一)心直からず。根性わるし。(執拗)。(二)くねくねとしてあり。直からず。
 
くねり[曲](名)くね/\すること。――・みち[曲路](名)くね/\したる路。(羊腸)。
 
くね‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[曲](自、ら四)(一)折れまがる。くね/\す。(二)性質ねぢけまがる。ひがむ。(三)うらみかこつ。不平に思ふ。「――涙の手枕」。
 
くねん・ぼ[九年母](名)【植】芸香料に屬する木、橘に同じくして刺少なく葉長し、果實は蜜柑に似て酸甘く、皮も食用に供せらる。(香橙、香橘)。
 
++くの・え・かう【−コウ】[薫衣香](名)衣に薫(【クユ】)らする一種の香。
 
くの・ぎ[櫟](名)【植】「くぬぎ」に同じ。
 
くは【クワ】[桑](名)(一)【植】桑科に屬する木、葉にて蠶を飼養す、葉より先に花を着け、小さき苺(【イチゴ】)の如き實を結ぶ、材木は木質堅固にして木理|麗(【ウルハ】)しく諸種の用に供せられ、樹皮の繊維は型製紙の料に供せらる。(二)紋所の名。(三)「くはいろ」の略言。――・いちご[桑苺](名)桑の實、其形苺に似たるより名づく。(椹)。――・いろ[桑色](名)薄き異色。
 
くは[鍬](名)一種の農具、頭は一枚の鐵にて扁(【ヒラタ】)く造り、内部に向ひて曲がり、これに長き柄を嵌(【ハ】)めたるものにして、地を堀るに用ふ。(〓)。
 
++くは【クワ】(感)これは。こは。「――見たまへといひて」。
 
く・ばう【−ボウ】[公方](名)(一)おほやけ。朝家。(二)(足利義滿の頃より始まる、もと公方の様に尊しとの意にて公方様と呼びしに起るといふ)征夷大將軍の稱。
 
くは・がた【クワ−】[鍬形](名)(備中鍬の形なればいふ)兜の附屬具、まびさしの上より角の如く二本聳え立てるものゝ、端は外へ反(【ソ】)り中に曲がりて凹(【クボ】)み、恰もくわゐの葉を横の方より見たる様に似るより此名あり。「――打ったる兜」。(九方形)。
 
(く・ばく[瞿麥](名)【植】「なでしこ」の異稱。――・たう【−トウ】[瞿麥湯](名)古昔、えなの出ぬを治するに用ひし煎藥。  
 
++くは・ご【クワ−】[桑兒](名)(桑を食ふ子の義)【動】蠶(【カヒコ】)の異稱。
 
くは・こぶ【クワ−】[桑瘤](名)桑の木に生ずるさるのこしかけの類。
 
くは・ざけ【クワ−】[桑酒](名)桑の實を材料として製したる酒、味は味醂に似て稍や酒精分強し、丹波國八木の名産。
 
くは‐し【クワシ】【しく、し、しき、しけれ】[精](形、二)(一)つまびらかなり。つぶさなり。明細なり。(委)。(二)明知せり。通達せり。熟練せり。たくみなり。「藝に――」、「道に――」。
 
くは‐し【クワシ】【しく、し、しき、しけれ】[細](形、二)(一)こまかし。ちひさし。(二)++うるはし。たへなり。よし。「――き妹」。「――しき女」。「名――」。(美)。++――・ほこちたる・の・くに[細矛千足國](名)(細矛は「ち」の枕詞にて、萬事不足なき國の義。一説に、よき兵器の數多き國の義ともいふ)上古、日本國の美稱。++――・め[細女](名)うるはしき婦人。(美女)。
 
くはした・ねんき【クワ−】[鍬下年期](名)十年以内に成功し能はざる開墾に對し、官廳が願出により、地目變換まで、原地價により地租を徴收する三十年以内の年期。又、官有地を開拓して民有に屬したる土地に對し、官廳が願出により、其地相當と認むる地價を定め、これによりて地租を徴收する十年以内の年限。
 
{くは‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[食](他、さ四)(一)くらはす。(二)あ
 
 
 
 
(だい・ぜんてい[大前提](名)【論】三段論法の第一の前提の稱。小前提の對。(三段論法の條參照)。
 
だいぜん・の・だいぶ[大膳大夫](名)大膳職の長官。
 
(たい・そ「太粗](名)王朝の初代の帝王。
 
(たい・そう[太宗](名)帝王の祖先中その功徳の太祖に比すべき帝王の稱。
 
(たい・そう[大簇](名)(一)十二律の一。(二)陰暦正月の異稱。
 
{たい・そう[大層](副)「たいさう」(大相)に同じ。
 
(だい・そうし[大宗師](名)多くのものゝ仰(【アフ】)ぎて師となす大先生。
 
だい・ソウじやう【−ジヨウ】[大僧正](名)最高等の僧官。
 
(たい・そく[大息](名)(一)ためいき。おほいき。(二)ためいきをつくこと。なげくこと。「−のいたり」。
 
(たい・そく[胎息](名)臍下にまで徹底するやうに深呼吸をなすこと。
 
(たい・そく[大則](名)おほいなるのり。おほもとののり。
 
(たい・ぞく[大俗](名)極めて俗なること。
 
(たい・ぞく[大賊](名)大惡事をなす賊。非常の賊。
 
(たい・だ[怠惰](名)なまけおこたること。
 
(だい・た[大多](名)數のいと多きこと。
 
(たい・たい[對對](名)對等なること。ごぶ/”\。
 
(だい・たい[大體](名、副)大凡。大概・「−善し」。
 
(だい・たい[大隊](名)(一)軍隊の編成上、二乃至四個中隊よりなる一隊の稱。(二)多人數の一團。――・ちやう【−チヨウ】[大隊長](名)大隊を指揮引率するもの。
 
(だい・だい[代代](名、副)世々。「−繼續せり」。
 
だい・だい[橙](名)【植】(代々の義、其實年々落ちずして形大きくなるが故にいふ)芸香料に屬する木、夏の頃、小形の白花開く、果實は九年母に似て味酸く、新年の祝儀などに用ひらる。(回青橙)。――・の・かず[橙數](名)よはひ。とし。年齡。
 
だいだい・かぐら[太太神樂](名)伊勢太神宮にて行ふ神樂。
 
(だい・たい・こつ[大腿骨](名)股(【モモ】)の中軸をなす骨。
 
++たい・だい‐し【しく、し、しき、しけれ】[怠怠](形、二)(一)なほざりなり。又、かろ/”\し。「世の中の事をもおぼしすてたるやうになりゆくはいと−きわざなり」。(二)あるまじきことなり。
 
(だいたい・ぶつ[代替物](名)【法】同質同量の他物を以て交換し得べきもの、即ち、貨幣・米穀・酒・油等の類これなり。
 
(だい・だいり[大内裏](名)古昔、奈良又は京都の宮城の稱、南北北十町東西八町、四方に各三門ありて、大極殿・八省院等の諸宮殿諸官省此内にありき。
 
(たい・たう【−トウ】[大〓](名)軍中の旗。又、乘輿の大旗。「−を迎ふ」。
 
(たい・たう【−トウ】[大盗》(名)おほぬすびと。
 
(たい・たう【−トウ】[駘蕩](名)春の景色ののどかなること。
 
(たい・たう【−トウ】[頽唐](名)勢のおとろふること。
 
(たい・たう【−トウ】[對當](名)(一)あたりあふこと。又、むかひあふこと。(二)つりあふこと。相當。(三)【論】同一の主辭及賓辭を有して互に質と量とを異にする二つの肯定(全稱又は特稱)命題若しくは否定(全稱又は特稱)命題の相互の眞妄の關係。――・がく[對當額](名)或ものに相當する額。
 
(たい・たう【−トウ】[帯刀](名)刀を帯(【オ】)ぶること。又、帶びてゐる刀。(佩刀)。――・ごめん[帶刀御免](名)徳川時代に、町人又は農民の功勞ありしものなどに、帶刀を許されしこと。
 
(だい・だう【−ドウ】[大道](名)(一)幅廣き道。おほどほり。(二)正大なる道義。又、根本の道義。{――・うす[大道臼](名)大いなる木の臼、もと米搗が頼まれたる家の前の路上に持ち來りて、米などを搗(【ツ】)きしよりいふ。(東京の方言)。{――・えきしや[大道易者](名)大道に出てゐる下等の易者。――。げい[大道藝](名)大道の路上などに於て演ずる品等低き藝。――・みせ[大道店](名)大道の路上に設けたる店。
 
(だいたう・まい【−トウ−】[大唐米](名)稻の一種、種子の粘質少なくして消化しやすきが故に、病人の食ふに適す。あかごめ。たうぼし。
 
(だい・たすう[大多數](名)非常に多數なること。
 
(たい・だん[對談](名)相對して談ずること。
 
(だい・たん[大膽](名)(一)物に恐れぬこと。事に動ぜぬこと。(二)づぶときこと。横着なること。
 
(だい・だんゑん[大團圓](名)をはり。おほぎり。
 
(たい・ち[大智](名)大いなる智。俊(【スグ】)れたる智慧。
 
(たい・ち[大痴](名)おほバカ。
 
(たい・ぢ[對峙](名)相向ひて立つこと。
 
(たい・ぢ[對持](名)相互に大事をとりて動かぬこと。
 
(たい・ぢ[退治](名)しりぞけをさむること。うちたひらぐること。ほろぼすこと。
 
(だい・ち[大地](名)地を廣く言ひ做したる語。「−に槌」。
 
(たい・ちやう【−チヨウ】[台聽](名)貴人の聽(【キ】)くことの敬稱。おきゝ。「將軍の−に達す」。
 
(たい・ちやう【−チヨウ】[退廳](名)官廳より退出すること。
 
(たい・ちやう【−チヨウ】[隊長](名)一隊の長(【ヲサ】)。
 
{たい・ちやう【−チヨウ】[隊長](代)親密又は冷笑の意を含みたる對稱の代名詞。
 
(だい・ちやう【−チヨウ】[大腸](名)【生】小腸に次(【ツ】)ぎて起り、其周圍を迂回して肛門に至る腸、其起部にして腹腔の下部にあるものを盲腸といひ、骨盤内に下り肛門に開ける部を直腸といひ、其中間三條の縦帯によりて結束せらるゝ部を結腸といふ。
 
(だい・ちやう【−チヨウ】[臺帳](名)(一)商家の元帳。大福帳。(二)芝居の脚本。臺本。(三)すべて或事柄を記録する根本の帳簿。もとちやう。「土地−」。「建物−」。
 
(だいちやう・かく【−チヨウ−】[對頂角](名)【數】相交はる二直線のなす角の相對するもの。
 
(だい・ぢやうふ【−ヂヨウ−】[大丈夫](名)ますらを。男子。
 
{だい・ぢやうぶ【−ヂヨウ−】[大丈夫](名)堅固なること。しっかりしてあること。たしかなること。
 
(たい・ちゆう[胎中](名)はらごもり。胎内。「−の生兒」。
 
(だい・ちよ[大著](名)おほいなる著述。
 
{たい‐ぢる【ぢ、ぢ、ぢる、ぢる、ぢれ、ぢよ】[退治](他、た上一)退治す。ほろぼす。しりぞく。
 
(たい・ぢん[退陣](名)軍をあとにひくこと。退軍。
 
(たい・ぢん[對陣](名)向かひ合ひて陣取ること。相對して軍すること。
 
(たい・ぢん[滞陣](名)一所に永く陣してあること。
 
(だい・づ[大豆](名)【植】荳科に屬する草本、莖は直立し、花は甚だ小形にして帯紫色若しくは白色を呈す、花柱は通常平滑にして莢は普通くびれを有す、食用植物中著名なるものにして、種子は味噌・醤油・豆腐・湯葉・菓子等の原料に供せられ、茎葉は家畜の飼料に供せらる、種々變種あり。
 
{だい・つう[大通](名)いと通人にして且よく豪遊する人。
 
たい・づき[隊附](名)軍隊の勤務に服すること。軍隊につくこと。
 
(たい・てい[大抵](名、副)おほかた。おほよそ。たいがい。(大概)。
 
(たい・てい[太弟](名)天子の御弟。
 
(たい・てい[台鼎](名)(三台星と三足ある鼎(【カナヘ】)との義、共に三公にたとへたりといふ)三公の稱。
 
(たい・てい[退廷」(名)朝廷より退出すること。又、法廷より退出すること。
 
(たい・てう【−チヨウ】[退朝](名)朝廷より退出すること。
 
(たい・てう【−チヨウ】り[退潮](名)ひきしほ。
 
(たい・てき[對敵](名)(一)あひて。(二)敵に對すること。
 
(たい・てき[大敵](名)多人數の敵。つよき敵。
 
(たい・てん[對點](名)【數】圓又は球の直徑の兩端にある一雙の點。
 
(たい・てん[大典](名)おほいなる儀式。重大なる儀式。
 
(たい・てん[退轉](名)(一)うつりかはること。却行すること。。「五濁の修行は−多し」。(二)破産して他へ引移ること。
 
(たい・でん[帶電](名)【理】物體が電氣を得たること、例へば「ガラス」の棒を絹布にて摩擦するときは帶電す。
          「
(だい・てん[大篆](名)漢字の一體、周の宣王の大史の制作といふ。
 
(たい・と[泰斗](名)(泰山北斗の義)世人の最も仰(【アフ】)ぎたふとぶ人。「文學の−」。
 
(たい・と[大都](名)おほいなる都會。
 
(たい・ど[大度](名)度量の大いなること。むねのひろきこと。
 
(たい・ど[態度](名)(一)すがた。なりふり。(二)からだのかまへ。身がまへ。(三)其物事に對する擧動。
 
(たい・とう[大統](名)天位の御系統。
 
(たい・とう[擡頭](名)(一)かしらをあぐること。(二)文中にて敬ふべき語を次ぎの行へ送り洞上〓上に頭を擡(【モタ】)げて記すること。
 
(たい・とう[對等](名)雙方の間に優劣高下のなきこと。――・でうやく【−ヂヨウ−】[對等條約](名)彼此の國際關係に於て、互に權利義務の對等なる條約。
 
(だい・どう[大同](名)(一)おほよそ同一なること。(二)多數のものゝ合同するこ。――・せうい【−シヨウ−】[大同小異](名)大體は同一にして小部分のみ異なること。
 
(だい・どうみやく[大動脈](名)【生】心臓の左の心室より出て、上は頭部・上肢、下は腹部より分れて下肢に至る主要なる動脈。
 
(だい・とうりやう【−リヨウ】[大統領](名)共和政體の國に於ける全體の行政を總轄し主權を代表する地位、多くは選擧によて就任者を定む。
 
(たい・とく[大徳](名)おほいなる恩徳又は道徳。
 
(たい・どく[胎毒](名)生兒の胎内にあるときに受けたりと稱する毒、瘡を發生す。――・くだし[胎毒下](名)小兒の胎毒に用ふるのみぐすり。
 
(だい・とく[大徳](名)(一)高徳の僧。(二)富有。かねもち。――・じん[大徳人](名)富有なる人。
 
(だい・とくわい[大都會](名)土地廣くして商業の盛んなる都會。
 
++だい・とこ[大徳](名)「だいとく」(一)に同じ。
 
{だい・どこ[臺所](名)「だいどころ」の訛。
 
だい・どころ[臺所](名)人家にて※[者/火](【ニ】)たき其他食物の調理をなす所。くりや。だいどこ。――・ぶね[臺所船](名)料理を載せたる船。
 
(たい・ない[胎内](名)こぶくろのうち。はらのなか。――・くぐり[胎内潜](名)くゞり得べき程の岩穴などの稱。
 
(だい・ないき[大内記](名)内記の條を見よ。
 
(だい・なう【−ノウ】[大脳](名)【生】頭蓋骨の内部の大部分を充たし廻紋と溝(【ミゾ】)とを有する柔軟質のもの、外部は灰白質にして、後下部に延髓を出し小脳に接す、圓錐状の隆起ある左右の兩脚より多くの神經を派出す、精神作用を營む主要機關なり。
 
++だい・なごん[大納言](名)(一)古昔の官名、中納言と共に大政に參與せしもの。おほいものまうすつかさ。(二)【植】「だいなごんあづき」の略言。――・あづき[大納言小豆](名)【植】あづきの一種、種子大形にして色濃(【コ】)く美味なるもの。
 
{だい・なし[臺無](名)物事の甚だしく損じたること。
 
(たい・なふ【−ノウ】[滞納](名)或物を納付すべき義務あるものが、其期限を經過して尚ほこれを納付せざること。(怠納)。――・しよぶん[滯納處分](名)【法】國家又は公共團體が、租税の滯納者に對して、強制的徴收をなす處分。
 
(だい・なふ【−ノウ】[代納](名)他人に代はりて納付すること。
 
ダイナマイト[Dynamaite](名)【化】「ニトログリセリン」を※[石+圭]藻土に吸收せしめたるもの、爆發藥として使用せらる。
 
ダイナモ[Dynamo](名)【理】「はつでんき」(發電機)に同じ。
 
(だい・なん[大難](名)大いなる災難。
 
++だい・に[大貳](名)古昔、太宰府の次官、少貳の上にして帥(【ソツ】)の下なるもの。
 
(だい・に[第二](名)(一)最優者に次(【ツ】)ぐもの。最先者に次ぐもの。(二)二番目。二回目。――・ぎ[第二義](名)無上の妙理にあらざること。根本の意義にあらざること。「已に−に落つ」。――・ぎむ[第二義務](名)【法】第二權利に對する義務の稱にして、例へば他人の權利を侵害したるによりて生ずる賠償の義務の如きこれなり。――・けんり[第二權利](名)【法】第一權利の侵害を受け、これを救濟するために生ずる權利の稱にして、例へば自己の權利を損害せるものに對して、其賠償を求むる權利の如きこれなり。――・コイル[第二−=Secondary coil](名)【理】感應「コイル」の條を見よ。――・しゆ・いうびんぶつ[第二種郵便物](名)【法】郵便法にて、郵便葉書をいふ。――・しん[第二審](名)【法】或事件が二回若しくは二回以上の審判を經(【ヘ】)たるとき、其第二回目の審判の稱、其第一審が區裁判所の審判なれば、控訴によりて受けたる地方裁判所の審判をいひ、其一審が地方裁判所の審判なれば、控訴によりて受けたる控訴院の審判をいふ。――・どくくわい【−ドツ−】[第二讀會](名)議會にて、法律案などに對する第二回の討議、其案は第一讀會に於て、大體是認せられたるものなれば、たゞ箇條に就きて討議をなす。――・にんしよう[第二人稱](名)【文法】自己と對話する相手方の名に代用するもの、即ちなんぢ・足下等の如し。對稱。――・ほじゆう[第二補充](名)補充兵及補充兵役の條を見よ。――・よびきん[第二豫備金](名)【法】會計法にて、豫算外に生じたる必要の費用に充(【ア】)つる豫備費の稱。
 
(だい・にち[大日](名)【佛】(い)(梵語Mahavairocanaの譯、光明の遍く一切處を照す義)如來の法身。(ろ)「だいにちによらい」の略言。――・によらい[大日如來](名)【佛】寂光土の教主たる法身の如來。
 
(たい・にん[大任](名)大切なる役。重大なる任務。(重任)。
 
(たい・にん[耐忍](名)たへしのぶこと。こらふること。辛抱すること。(忍耐)。
 
(たい・にん[體認](名)よく心にのみこむこと。
 
(たい・にん[退任](名)其任務より退(【ヒ】)くこと。
 
(だい・にん[大人](名)(一)おとな。(二)【佛】轉輪王の稱。
 
(だい・にん[代任](名)他人に代(【カ】)はりて其任務を扱ふもの。
 
(だい・にん[代人](名)代理の人。みやうだい。
 
(たいにん・りよく[耐忍力](名)物事に耐忍する意思の力。
 
(だい・ねつ[大熱](名)體温弧のはげしく亢進せること。
 
(だい・ねんブツ[大念佛](名)【佛】「だいねんブツしゆう」の略言。――・しゆう[大念彿宗](名)【佛】「ゆうづうねんブツしゆう」(融通念佛宗)の略稱。
 
(だい・のう[大農](名)(一)所有せる耕地の面積廣大にして、自ら農業の勞働に就かで專ら農夫を使役して耕作せしめ、たゞこれを監督するもの。(二)資財ゆたかなる農夫。豪農。――・そしき[大農組織](名)耕作地が大農地に區劃せられ、一般の農業がが大農によりて行はるゝもの。――・ち[大農地」(名)大農の所有して耕作する大區劃の地。
 
++たいの・や[對屋](名)古昔、禁中貴人などの邸に、寢殿の兩側又は後方に造りたるはなれ家。
 
(たい・は[大破](名)甚だしく破るゝこと。
 
だい・ば[臺場](名)要害の地に設けて、大砲の臺を据(【ス】)うる處。「品川の−」。(砲臺)。
 
(たい・はい[大盃](名)大いなる盃。おほさかづき。
 
(たい・はい[大敗](名)甚だしく敗(【ヤブ】)るゝこと。おほやぶれ。おほまけ。
 
(たい・はい[帶佩](名)おぶること。
 
(たい・はい[大旆](名)天子の御旗又は將軍のはた。
 
(たい・はい[頽廢](名)くづれあるゝこと。やぶれすたるゝこと。
 
(たい・はい[退廢](名)いきほひ衰へて物事のすたるゝこと。
 
(たい・はう【−ホウ】[大砲](名)これを使用するに數人以上の協力を要する大いなる火器。おほづゝ。――。たい[大砲隊](名)大砲を使用する軍隊。
 
(たい・はう【−ホウ】[大方](名)(一)大度量の人。(二)學問博き人。見聞高き人。(三)おほかた。あらまし。(四)世間一般の人。
 
(たい・はう【−ホウ】[大邦](名)おほいなるくに。
 
(たい・はう【−ホウ】[大寶](名)天子の位。
 
(たい・ばう【−ボウ】[大望](名)「たいまう」に同じ。
 
だい・ばかり[臺秤](名)重き荷物の重量を測(【ハカ】)る秤(【ハカリ】)、物體を載(【ノ】)する臺ありて其下方にある二つの挺子の組合に連なり、梃子の一は鉛直桿によりて秤桿の一端に絡(【ツナ】)がる、秤桿の他端には、臺上に載(【ノ】)する物體の重さに從ひて適當の分銅を掛く、又桿上に左右に動く小さき分銅あり、秤桿の釣合ふとき、桿端の分銅と桿上の小分銅の位置の目盛とを讀みて物體の重さを知る。
 
(たい・はく[戴白](名)頭髪の白きこと。轉じて、老人。
 
(たい・はく[大白](名)おほさかづき。
 
(たい・はく[太白](名)(一)金星の一名。(二)雪白の砂糖。(三)白色のかたあめ。(四)太き絹絲。
 
{だいはち[大八](名)「だいはちぐるま」の略言。――・ぐるま[大八車](名)(八人の代理をなすとの義)大いなる荷車。
 
(たい・ばつ[體罰](名)身體に苦痛を與ふる罰。
 
(だい・ばつ[題跋](名)題と跋と。
 
(たい・はふ【−ホウ】[大法](名)おもなるのり。動かぬさだめ。
 
(たい・はん[大半](名)おほかた。(過半)。
 
(たい・ばん[胎盤](名)胎兒の身體の一部が母體の一部と密に癒合したももの、胎児はこれによりて養分を母體より享(【ウ】)く。
 
(だい・はん[臺飯](名)臺盤の上にある飯。(代飯)。
 
(だい・ばん[臺盤](名)古昔、食器を載(【ノ】)せし具、横に長くして机に似たるもの。――・どころ[臺盤所](名)(一)臺盤を置く所。くりや。(二)大臣及大將の奥方の尊稱。みだいどころ。
 
(だい・ばんじやく[大盤石](名)(一)大いなる盤石。(二)轉じて、物事のたしかにして動かざることにたとへいふ語。
 
(たい・ひ[對比](名)(一)つゐすること。(二)くらぶること。(三)「たいせう」(對照)に同じ。
 
(たい・ひ[貸費](名)費用をかしあたふること。
 
(たい・ひ[堆肥](名)廢物を堆積し、これを腐熟せしめたる肥料。
 
(たい・ひ[待避](名)からだをひくこと。しりぞきさくること。
 
(たい・び[大尾](名)をはり。しまひ。
 
(だい・ひ[大悲](名)人の苦をたすくる大いなる功力。
 
(たいひ・せい[貸費生](名)費用をかしあたへて修學せさする學生。
 
(たいひ・せん[待避線](名)單線の鐵道などにて、列車が前方より向ひ來る他の列車をまちて一時さけゐるために設けたる線路。
 
(だい・ひつ[代筆](名)他人に代(【カ】)はりて書くこと。(代書)。
 
++だい・ひつ[大弼](名)弼の條を見よ。
 
だいひ・ボサツ[大悲菩薩](名)【佛】觀世音菩薩の異稱。
 
(たい・ぴやう【−ビヨウ】[大病](名)ておもき病氣。大患。重病。
 
(だい・ひやう【−ヒヨウ】[大兵](名)體の大いなること。小兵の對。
 
(だい・びやうし【−ビヨウ−】[大拍子](名)芝居の鳴物、大太鼓を打つもの、御殿の幕開などに用ふ。
 
(たい・ふ[太傅](名)(一)天皇未だ成年に達したまはざるとき、保育の任にあたる職名。(二)支那の官名、三公の一。
 
(たい・ふ[大夫](名)(一)支那の周時代の官名、士の上にして卿の下なりしもの。(二)大名の家老の稱。
 
(たい・ふ【−ウ】[大夫](名)(一)古昔、五位の通稱。(二)(中古、皇室式微の時、〓職人の金を奉りて五六位の官を得たるに基くといふ)狂言其地遊藝・曲藝等を演ずる者。(三)高等の遊女。――・もと[大夫元](名)演藝の興行人。
 
(たい・ふ【−ウ】[大輔](名)省の次官「式部−」。
 
(たい・ぶ[大部](名)(一)部數又は册數の多き書物。(二)およその部分。おほかた。
 
タイプ[Type](名)(一)しるし。記號。(二)かた。てほん。(三)活字。
 
(だい・ぶ[大夫](名)職の長官。
 
{だい・ぶ[大分](副)すこぶる。だいぶん。おほかた。
 
(たい・ふう[大風](名)はがしき風。おほかぜ。
 
(だい・ふく[大福](名)(一)大いに富みて福多きこと。(二)「だいふくもち」の略言。――・ちやう【−チヨウ】[大福帳](名)商家の元帳の稱。――。ちやうじや【−チヨウ−】[大福長者](名)多大の資産ある人。おほがねもち。――・もち[大福餅](名)餡(【アン】)を包みたる餅。
 
{たいふ・ぐるひ【タイウグルイ】[大夫狂](名)遊女買にふけりすさむこと。(元禄時代の語)。
 
(だい・ふけい[大不敬](名)おほいなる不敬。特に天皇・皇后其他皇室に對する不敬。
 
{たいふ・ご【タイウ−】[大夫子](名)若手の俳優。(元禄時代の語)。
 
(だい・ぶつ[代物](名)或物に代(【カ】)ふる物。――・べんさい[代物辨濟](名)【法】債務者が債權者の承諾を得て、負擔したる給付に代(【カ】)へて他の給付をなし、以て債務を辨濟すること。
 
だい・ブツ[大佛](名)巨大なる佛像。おほボトケ。「奈良の−」。――・もち[大佛餅](名)京阪地方にて流行の餅、奈良大佛を本尊とせる京都誓願寺門前の餅家にて賣り出だしゝよりいふ。
 
(たいぶつ・しんよう[對物信用](名)質物又は抵當物に對する信用。對人信用の對。
 
(たいぶつ・たんぽ[對物擔保](名)財物を以て債務の擔保となすこと。
 
たいぶつ・レンズ[對物−=Object lens](名)【理】顯微鏡・雙眼鏡・望遠鏡等の條を見よ。
 
タイプライター[Typewriter](名)通信文又は原稿等を認むるに使用する一種の器械、前面に「アルハベット」・數字・句點の記號等を配置したる「ボタン」樣のものあり、指先にてこれを押せば、後方に挾みたる紙面に、押したる順序に文字のあらはるゝもの。
 
(たい・ふん[堆糞](名)厩肥などを堆積して腐熟せしめたる肥料。
 
(たい−ぶん[台聞](名)貴人の聞くことの敬稱。おきき。
 
(だい・ぶん[大分](副)すこぶる。だいぶ。餘程。
 
(たい・ぶんすう[帶分數](名)【數】整數と眞分數とより成る數、例へば13 5/7の如きこれなり。
 
(たい・へい[太平](名)世の中のいとしづかに治まること。世のおだやかなること。(泰平)。
 
(たい・へい[大兵](名)たくさんの兵隊。
 
(たい・へいかう【−コウ】[對平行](名)【數】線又は邊の相平行すること。
 
たいへいき・よみ[太平記讀](名)昔時、路傍に筵を敷きて坐し、太平記を讀みて錢を乞ひしもの、講釋師の類。
 
 
 
 
 
(にち・にち[日日](名、副)日ごと。ひゞ。毎日。――・くわ[日日花](名)【植】「はげいとう」の異稱。
 
(にち・ぼ[日暮](名)ひぐれ。ゆふかた。
 
(にち・ぼつ[日没](名)太陽の地平面以下に没すること、光線屈折のため、夜となる時刻はこれより遲し。日のいり。
 
(にち・や[日夜](名、副)(一)ひるとよると。よるひる。(二)つね。始終。
 
{にちや・つ‐く【か、き、く、く、け、け】(自、か四)にちや/\す。
 
{にちや・にちや(名、副)ものゝねばりつくさまにいふ語。
 
(に・ぢゆう[二重](名)(一)ふたかさね。ふたへ。(二)ちようふく。にざい。――・ぞこと[二重底](名)器物の底の上に更に一つの底あるつくり。又、其つくりの底。――・ていたう【−トウ】[二重抵當](名)已に抵當となりたるものを更に抵當となすこと。――・ぶた[二重蓋](名)器物の蓋の内に更に蓋あるつくり。又、其つくりの蓋。――・まはし【−マワシ】[二重廻](名)鳶合羽の一名。
 
(にち・よう[日用](名)日々用ふること。又、其もの。――・ひん[日用品](名)日用の品物。――ぶん[日用文](名)書牘文。往復文。
 
(にち・りん[日輪](名)太陽の稱。――・さう【−ソウ】[日輪草](名)【植】「ひまはり」の一名。
 
(にちれん・しゆう[日蓮宗](名)【佛】佛教の一派、法華經二十八品を所依とし、草木國土悉皆成佛の義を取り、七字の題目即ち南無妙法蓮華經を唱ふるもの、僧日蓮の創始にかゝる。法華宗。
 
(にち・ろく[日録](名)ひゞの事をしるすこと。又、其しるしたるもの。
 
(にち・ゐき[日域](名)支那より日本國を指していふ稱呼。
 
に・つかは‐し【−ツカワシ】【しく、し、しき、しけれ】[似附](形、二)似合はし。似合ひてあり。
 
(にっ・かん[日間](名)ひるま。ひる。
 
(にっ・かん[日刊](名)日々刊行するこ。「−新聞」。
 
(にっ・き[日※[日/処/口]】(名)ひかげ。
 
(にっ・き[日記](名)日毎の事を書きのすること。又、其記録。にっし。(日録)。――・ちやう【−チヨウ】[日記帳](名)日毎の事を書きのする帳面。
 
(にっ・きふ[日給](名)一日若干と定めたる給料。
 
(にっ・きん[日勤](名)日毎に出でゝ、勤務に服ること。日々出勤すること。
 
に・つ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[煮附](他、か下二)汁のしみこむまで煮る。にしむ。
 
に・つ‐く【か、き、く、く、け、け】[似附](自、か四)につかはしくあり。にあふ。
 
に・づくり[荷作](名)物を束ね又は包みて荷物をつくること。にごしらへ。
 
(にっ・くわ[日課](名)毎日きめてする仕事。
 
(にっ・くわう【−クワウ】[日光](名)(一)太陽の光線。ひのひかり。(二)「にっくわうぬり」の略言。――・たうがらし【−とう−】[日光唐辛](名)下野國日光町より初めて製し出だしたる紫蘇卷のたうがらし。――・ぬり[日光塗](名)下野國日光町より産出する一種の塗物。――・ヤウカン【−ヨウ−】[日光羊羹](名)下野國日光町にて製する羊羹、細長き箱に入れたるもの。――・らふせき【−ロウ−】[日光蝋石](名)下野國日光山足尾邊より出だす蝋石。――・らん[日光蘭](名)【植】「しゆろさう」に同じ。
 
に・つけ[煮附](名)につけたるもの。{――る(他)「につく」の訛。
 
(にっけい・へう【−ヒヨウ】[日計表](名)日々の計算の表。
 
ニッケル[Nickel](名)【化】灰白色の金屬、少しく磁性を有す、通常の温度にては空氣中にて光輝を失はず、銅・眞鍮・鐵などの鍍金に用ひられ、又、種々の合金を製するに用ひらる。
 
にっこ・と[莞爾](副)にこ/\と。にこやかに。
 
につこら‐し【しく、し、しき、しけれ】(形、二)「につかはし」に同じ。
 
にっこり・と[莞爾](副)「にっこと」に同じ。
 
(にっ・さん[日參](名)毎日神社又は佛閣などへ参詣すること。
 
(にっ・し[日誌](名)「にっき」(日記)に同じ。
 
(にっ・し[日子](名)ひかず。日數。
 
(につ・じ[日次](名)日どり。
 
(にっ・しや[日者](名)(一)暦數を推算するもの。暦博士。(二)さをごろ。先日。
 
(につ。しやう[入聲](名)漢字の四聲の一、屋・沃・覺・質・勿・月・曷・黠・屑・藥・佰・錫・職・緝・合・葉・洽の十七に分つ、これに屬する字はすべて仄字なり。
 
(にっ・しやう【−シヨウ】[日章](名)日の丸のしるし。――・き[日章旗](名)日章のはた、即ち我國の國旗。
 
(にっしや・びやう【−ビヨウ】[日射病](名)日光の熱にあたりて、脳充血を起し卒倒すること。
 
(にっ・しゆつ[日出](名)太陽の地平面に出づること、光線屈折のため夜明は此時刻より早し。ひので。――・の・くに[日出國](名)日本國の異稱。
 
(にっしよく[日食](名)【天】太陰が太陽と地球との間に來りて太陽を蔽(【オホ】)ふこと、地上の位置によりて皆既食・分食・金環食等見ゆ。(日蝕)。
 
(にっ・しよく[日色](名)太陽のいろ。
 
(にっ・しん[日新](名)日々に新になりゆくこと。
 
(にっ・しん[日新](名)日々に進歩すること。――・げっぽ[日進月歩](名)間斷なく急速に進歩すること。
 
(にっ・すう[日數](名)ひかず。
 
(にっ・そく[日食](名)【天】「にっしよく」に同じ。
 
(にっ・たい・そく[日帶食](名)【天】日食に同じ。
 
(にっ・たう【−トウ】[日當](名)一日若干と定めて給する手當。
 
++にっ・たう【−トウ】[入唐](名)古昔、唐國へ行くことにいひし語。
 
に・つち[丹土](名)赤色のつち。
 
{につち・も・さっち・も[二進三進](副)如何にも。どうにも。 
 
(にっ・ちゆう[日中](名)(一)まひる。正午。(二)ひるま。ひる。
 
(にっ・てい[日程](名)其日になす仕事のほど。
 
(につ・てんし[日天子](名)【佛】日輪。
 
(につ・とう[日東](名)日本國の別稱。
 
(につ・ぱい[日牌](名)日々佛前に物を供(【ソナ】)へて禮拜すること。
 
(につぽん・いち[日本一](名)我國にて他に比すべをものなきこと。「−の黍團子」。
 
にっぽん・がた[日本形](名)「にほんがた」に同じ。――・せんぱく[日本形舶舶〕(名)「にほんがたせんぱく」に同じ。
 
(にっぽん・ぎんかう【−コウ】[日本銀行](名)「にほんぎんかう」に同じ。
 
(にっぽん・たう【−トウ】[日本刀](名)我國固有の法によりてきたひつくりたる刀劍。
 
にっぽん・だましひ【−ダマシイ】[日本魂](名)やまとだましひ。
 
にっぽん・ばれ[日本晴](名)(一)空に一點の雲だになき好天氣。(二)疑念などの全く霽るゝこと。
 
(にっぽん・ふう[日本風](名)「にほんふう」に同じ。
 
(にっぽん・まい[日本米](名)「にほんまい」に同じ。
 
{に・づみ[荷積](名)荷を積むこと。
 
に・つ‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[煮詰](他、ま下二)煮汁のつくるまで煮る。
 
{につめる(他)前條の訛。
 
{に・つら[似面](名)にがほ。
 
に・て(助)助詞の「に」と「て」との間に或語の略せられたる語、即ち「において」「によりて」「にありて」「になして」等の意を表するもの。
 
にてひ[似而非]よく似てあれど、まことのものにあらざること。
 
(にとう・しん[二等親](名)五等親の條を見よ。
 
にとう・だて[二頭立](名)馬車などの二頭びきなること。
 
にとう・びき[二頭挽](名)馬車などを馬二頭にて挽(【ヒ】)かすること。
 
(にとうへん・さんかくけい[二等邊三角形](名)【數】二つの邊の相等(【ヒト】)しき三角形。
 
にど・がり[二度刈](名)一年の中に二度刈(【カ】)りとること。
 
(にど・ざき[二度咲](名)かへりざき。
 
(にど・さんど[二度三度](名、副)たび/”\。數回。
 
にど・の・つとめ[二度勤](名)(一)一且廢業したる遊女が、再び遊女となること。(二){一旦新聞又は雜誌などに掲載せしものを、更に一の册子として刊行すること。
 
{にど・びっくり[二度喫驚](名)(一)初に見て感歎したるにひきかへて、其物の意想外に醜惡なること。(二)婦人の後姿の好くして面貌の醜きこと。又、男女に拘はらず音聲の甚だ麗はしくして面貌の醜きこと。
 
に・とり[煮取](名)「いろり」に同じ。
 
に・とろか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[煮蕩](他、さ四)煮てぐた/”\にとろけしむ。
 
ニトロ・グリセリン[Nitro‐glycerin](名)【化】「グリセリン」と硝酸及硫酸の混合物との反應によりて生ずる硝酸「エステル」、無色の液體にして甘味を有す、速かに熱するか又は打撃すれば爆發す。
 
ニトロ・セルローズ[Nitro‐cellulose](名)【化】綿の如き「セルローズ」を強硫酸及強硝酸の混合液にて處理するときに生ずる硝酸「エステル」。
 
ニトロ・ベンゼン[Nitro‐benzene](名)【化】淡黄色の液體、一種の香氣を有す、「ベンゼン」を強硝酸にて處理すれば得。
 
にな[蜷](名)【動】腹足類中前鰓類に屬する軟體動物、形は田螺に似、介殻黒色にして細長なり、川・溝などに棲む。(河貝子)。――・いろ[蜷色](名)(一)かさねの色目、表は黄色にして、裏の青色なるもの。(二)青黒き染色。
 
++に・な‐し【く、し、き、けれ】[二無](形、一)他に比なし。無類なり。
 
に・なは【−ナワ】[荷繩](名)荷にかくる繩。
 
になひ【ニナイ】[擔](名)(一)になふこと。(二)「になひをけ」の略言。――・かご[擔籠](名)物を入れてになふ籠。――・つむじ[擔旋毛](名)二つならびてある旋毛。――・ぼう[擔棒](名)物をになふ棒。てんびんばう。あふこ。――・をけ[擔桶](名)水をいれて擔ふ桶。
 
にな‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[擔](他、は四)(一)肩にかけてかつぐ、かたぐ。(二)負擔す。おふ。
 
ににん・のり[二人乘](名)二人共に乘らるゝ人力車などの稱。
 
++にぬ[布](名)「ぬの」に同じ。「――ほさるかも」。――・ぐも[布雲](名)布を延(【ノ】)べたるが如くにたなびきたる雲。
 
に・ぬき[煮拔](名)(一)水を多くして炊(【タ】)きたる飯の粘液を取りたるもの。おねば。(二)「にぬきたまご」の略言。――・たまご[煮拔玉子](名)ゆでたまご。
 
に・ぬ‐く【か、き、く、く、け、け】[煮拔](他、か四)よく煮る。につむ.
 
に・ぬし[荷主](名)荷物の所有者。荷物の送出人。
 
++に・ぬり[丹塗](名)赤き土にて塗りたるもの。又赤き色に塗りたるもの。「−の矢」。
 
(に・ねん[二念](名)(一)二心。(二)餘念。
 
(にねん・こん[二年根](名)【植】二年生の根。
 
(にねん・せい[二年生](名)【植】(一)二年間生長して枯死すること。(二)學校の第二年級に屬する生徒。
 
に・の・あし[二足](名)ためらふこと。躊躇すること。――をふむ ためらふ。
 
に・の・うで[二腕](名)肩(【カタ】)と肘(【ヒヂ】)との間。
 
に・の・く[二句](名)つぎのことば。「−も出でず」。
 
++に・の・ひと[二人](名)攝政・關白に亞《ツ》ぐ人。
 
++に・の・ほ[丹穗](名)稻穗の成熟して赤色を帶びたるもの。
 
に・の・まち[二町](名)(一)局町にて、一の町につぎたる町。(二)轉じて、第二位。
 
に・の・まひ【−マイ】[二舞](名)(一)安摩といふ舞樂の次に舞ふ滑稽の舞曲。(二)人の失敗にならふこと。人の惡しき振舞を眞似ぬること。
 
に・の・まる[二丸](名)本丸の外をかこむ郭。
 
に・の・みや[二宮](名)一の宮のつぎの宮。
 
に・の・や[二矢](名)二度目に射(イ)る矢。
 
には【ニワ】[庭](名)(一)邸内又は階前の空地。(二)邸内に樹木を栽(ウ)ゑ又は泉石を設けなどしてある所。(三)物事を行ふ地。場所。「合戰の−」。(場)。(四)波しづかなるときの海上。
 
には・いし【ニワ−】[庭石](名)ニワのかざりにすゑおく石。又、庭に設けたる飛石。――・づたひ【−ヅタイ】[庭石傳](名)庭の飛石の上をつたひ行くこと。
 
にはい・ず[二杯酢](名)鹽又は醤油をまぜたる酢、食物の調理に用ふ。
 
には・うめ【ニワ−】[庭梅](名)【植】薔薇科に屬する木、葉は廣披針形をなし、花は小形にして五瓣白色なり、春の頃開く、果實は小形球状にして熟すれば食ふべし。こうめ。(郁李)。
 
にはか【ニワカ】[俄](名)(一)だしぬけ。突然。(二)きふ。急。(三)坐興のため俄にする滑稽なる所作。――・あめ[俄雨](名)俄に降り出だしたる雨。――・かぜ[俄風](名)俄に吹き起りたる風。――・しばゐ[俄芝居](名)座興のためにする道化芝居。――・だうしん【−ドウ−】[俄道心](名)急に發心して出家すること。又、其人。――・びより[俄日和](名)雨天の俄かに晴天となること。――・ぶげん[俄分限](名)僅かの間に富有となること。又、其人。――・をどり[俄踊](名)坐興のためにする滑稽なる踊。
 
には・き【−ニワ】[庭木](名)庭園に植(【ウ】)うる樹木。
 
には・きど【−ニワ】[庭木戸](名)庭園に設けたる木戸。
 
には・くさ【−ニワ】[庭草](名)庭に生じたる草。
 
++には・くな・ぶり【−ニワ】[鶺鴒](名)【動】「せきれい」の古稱。
 
には・げた【−ニワ】[座下駄](名)庭園を歩むための下駄、齒廣く低くして粗末なるもの。
 
には・こ【−ニワ】[庭子](名)農家の奴婢が夫婦となりて生みたる子の、兩親につゞきてまた其家に仕ふるもの。
 
には・ごけ【−ニワ】[庭苔](名)庭の面に生ずる苔。
 
には・こぶ【−ニワ】[庭瘤](名)土間などの自然に凸凹を生じたももの。
 
には・さき【−ニワ】[庭前](名)室の前に近き庭の部分。えんさき。
 
には・ざくら【ニワ−】[庭櫻](名)【植】(い)庭前に植ゑたる櫻。いへざくら。(ろ)にはうめの一種、重瓣白色の花開くもの。(櫻桃、桃含)。
 
にはそ【ニワソ】[甘遂](名)【植】大戟科に屬する草、莖は短小にして、葉は莖端に叢生す。
 
++には・たたき【ニワ−】[鶺鴒](名)【動】「にはくなぶり」に同じ。
 
++には・だち【ニワ−】[庭立」(名)(一)庭におりたつこと。(二)「かへりだち」に同じ。
 
には・たづみ【ニワ−】[行潦](名)雨などふりて地上に溜(【タマ】)り流るゝ水。(潦、※[さんずい+黄])。
 
には・たづみ【ニワ−】[行潦](枕)にはたづみはながるゝものなれば「ながるる」に冠らする詞。
 
++には・ちやう【ニワチヨウ】[鹿帳](名)年頁を記載する帳簿。
 
には・つくり【ニワ−】[庭作](名)庭の樹木泉石などをつくること。又、其業の人。
 
には・づたひ【ニワヅタイ】[庭傳](名)庭より庭とつたひ行くこと。
 
++には・つつ【ニワ−】[庭瞻](名)【動】「はんめう」に同じ。
 
++には・つ・とり【ニワ−】[庭津鳥](名)(庭の鳥の義)【動】「にはとり」の古稱。
 
++には・つ・とり【ニワ−】[庭津鳥](枕)「かけ」に冠らする詞。
 
には・とこ【ニワ−】[接骨木](名)(庭常の義)【植】忍冬科に屬する木、枝條繁茂し樹幹〓曲す、葉は羽状複葉にして縁邊に鋸齒を有し對生す、花は小形白色にして、果實は赤豆に似る、觀賞用として栽培せられ、花は藥用に供せらる。
 
には・とり【ニワ−】[鷄](名)(庭津鳥の轉)【動】鶉鷄類に屬する鳥、雄は美麗且つ大形にして、頭に肉冠(【トサカ】)あり、雌は矮小にして文彩に乏し、時をつげて鳴く、現時これを飼養せざる地なし、種類太だ多けれどすべて「ジヤバ」及「インド」に産する野鷄を原産とす、肉及卵は廣く食用に供せらる。かけ。(翰音、司晨鳥、徳禽)。――をさくにぎうたうをもちふ[割v※[奚+隹]用2牛刀1]鷄の肉を料理するに牛をはふる刀を用ふる義にして、小事を處理するに、大器量の人物又は大仕掛の手段を使用するにいふ。
 
に・ばな[煮花](名)茶のでばな。
 
++には・なへ【ニワナエ】[新甞](名)「にひなめ」に同じ。
 
には・のり【ニワ−】[庭騎](名)庭さきなどにて馬を乘り馴(【ナ】)らすこと。
 
には・の・をしへ【ニワ−オシエ】[庭訓](名)家庭の教訓。
 
には・はき【ニワ−】[庭掃](名)庭を掃除すること。又、其人。
 
には・び【ニワ−】[庭火](名)庭上にて焚(【タ】)く火。庭燎。
 
には・ふぢ【ニワ−】[庭藤](名)【植】「いはふぢ」の一名。
 
には・まはり【ニワマワリ】[庭回](名)庭の周圍。
 
には・み・ぐさ【ニワ−】[庭見草](名)【植】萩の異稱。
 
++にば‐む【ま、み、む、む、め、め】[鈍](自、ま四)にびいろとなる。
 
++には・も・せ【ニワモ−】[庭面](名)(「庭も狹くなるほど」の義より誤りていふ)庭の面。
 
には・やなぎ【ニワ−】[庭柳](名)【植】蓼科に屬する草、多く路傍などに生ず、莖の高さ數寸、葉はうき草に似て互生す、花は小形にして赤白色を呈し、夏の頃葉間に生ず。いあはやなぎ。
 
には・ゐど【ニワ−】[庭井戸](名)庭園のかざりに設けたる井戸。
 
にばん・どり[二番鳥](名)夜明に一番鳥よりもやゝ後れて鳴く※[奚+隹]。
 
にひ−【ニイ】[新](接頭)或語に冠して新しさ意を表する語。
 
++にひ・いと【ニイ−】[新絲](名)今年とりたる絲。
 
++にび・いろ[鈍色](名)薄黒き染色、古昔、喪服に用ひしもの。
 
++にひ・くさ【ニイ−】[新草](名)今年生ひたる草。
 
++にひ・くは・まゆ【ニイクワ−】[新桑繭](名)今年の蠶のつくりたる繭。
 
++にひ・ごろも【ニイ−】[新衣](名)あたらしく仕立たる衣。
 
++にひ・さきもり【ニイ−】[新防守](名)新に派遣せられたる防人。
 
++にひ・しぼり【ニイ−】[新搾](名)新に釀造せる酒。
 
に・びたし[煮浸](名)一種の料理、鮒・鮎などを燒き、更にこれを醤油と味醂とにて柔く煮たるもの。
 
++にひ・たまづざ【ニイ−】[新玉章](名)始めて其人におくりやる書状。
 
++にひ・なへ【ニイナエ】[新嘗](名)「にひなめ」に同じ。
 
にひ・なめ【ニイ−】[新嘗](名)昔時は陰暦十一月中の卯の日に行はれ、現今は十一月二十三日に行はるゝ祭事、天皇親ら民間より献納せし新穀を諸神に供せられ且つ親らも聞こしめしたまふこと。――・さい[新嘗祭](名)前條に同じ。――・まつり[新嘗祭](名)前條に同じ。
 
++にひ・ばり【ニイ−】[新治](名)新に開墾すること。又、新に開墾したる田。――・みち[新治道](名)あらたにひらきたる道路。
 
にひ・まくら【ニイ−】[新枕](名)男女始めて同衾すること。
 
++にひ・まゐり【ニイ−】[新參](名)いまゝゐり。しんざん。
 
++にひ・むすび【ニイ−】[新結](名)始めてむすぶこと。又、其もの。
 
++にひ・むろ【ニイ−】[新室](名)新につくりたる室。新築の室。――・いはひ[新室祝](名)ざしきびらき。――・うたげ[新室宴](名)前條に同じ。
 
++にひ・も【ニイ−】[新喪](名)あたらしき喪。
 
にひ・もの【ニイ−】[新物](名)あたらしきもの。
 
にひやく・とを・か【−トウ−】[二百十日](名)立春より二百十日目に當たる日、其頃は、早稻花ざかりなれば、農家にて當日の風雨を大に忌む。
 
にひやく・はつ・か[二百二十日](名)二百十日より十日目に當たる日、其頃はなかての花ざぎかりなれば、二百十日と同じく農家にて當日の風雨を大に忌む。
 
にひ・よね【ニイ−】[新米](名)しんまい。
 
にひ・わかぐさ【ニイ−】[新若草](名)わかぐさ。
 
++に・ふ[二府](名)左近衛府と右近衛府との稱。
 
にぶ・いろ[鈍色](名)「にびいろ」に同じ。
 
(にふ・えい【ニウ−】[入營](名)軍隊の營所に入りて兵士となること。入隊。
 
(にふ・かう【ニウコウ】[入校](名)學校に入りて生徒となること。入學。
 
(にふ・かう【ニウコウ】[入港](名)船舶の港に入り來ること。――・ぜい[入港税](名)入港せる船舶に賦課する税金。
 
(にふ・かく【ニウ−】[入格](名)一定のかたにはまること。
 
(にふ・かく【ニウ−】[入閣](名)國務大臣に任ぜられ内閣に列すること。
 
(にふ・がく【ニウ−】[入學](名)(一)入校に同じ。(二)先生の許に弟子入りすること。にふもん。
 
(にふ・かん【ニウ−】[入監](名)囚徒の監獄に入れらるゝこと。
 
(にひ・きやう【ニウキヨウ】[入京](名)京地に入り來ること。
 
(にふ・ぎょ【ニウ−】[入御](名)大内へ入らせたまふこと。
 
(にふ・きん【ニウ−】[入金](名)(一)内金を拂ひ人るゝこと。(二)金錢を收入せること。
 
(にふ・ぎん【ニウ−】[入銀](名)前條(一)に同じ。(徳川時代の語)。
 
(にぶ・きん[貳分金](名)昔時の金貨、金貳分に當たれり。
 
(にふ・くわ【ニウ−】[入花」(名)俳諧などの添削料。
 
(にふ・くわい【ニウ−】[入會](名)會に加はりいること。會員となること。
 
(にふ・くわん【ニウ−】[入棺](名〉死者のむくろを棺にをさめいるゝこと。
 
(にふ・こう【ニウ−】[入貢](名)外國より入朝して貢物(【ミツギモノ】)を奉ること。
 
(にふ・こう【ニウ−】[入寇](名)攻め入ると。侵(【オカ】)し入るこ。あだすると。
 
(にふ・こく【ニウ−】[入國〕(名)領主の其領地に入ること。
 
(にふ・ごく【ニウ−】[入獄](名)獄につながるゝこと。
 
(にふ・さつ【ニウ−】[入札](名)賃借・賣買乃至請負等に關し、最も利益多き價格の申出をなしたるものと契約すべき條件にて、多人數のものに各見込の價格を札にしるして申出をなさしむること。いれふだ。――・ばらひ【−バライ】[入札拂](名)入札によりて賣拂ふこと。
 
にぶ・し【く、し、き、けれ】[鈍](形、一)(一)鋭利ならず。するどからず。(二)敏捷ならず。のろし。
 
(にふし・ぜい【ニウ−】[入市税](名)市に輸入する貨物に對して、其輸入者に賦課する租税。
 
(にふ・しつ【ニウ−】[入室](名)(一)古昔、貴顯の門跡となりて寺院に入らせらるゝこと。(二)其道の奥儀に達すること。
 
(にふ・しや【ニウ−】[入社](名)社員となること。社に加はり入ること。
 
(にふ・じやう【ニウジヨウ】[入城〕(名)城中にはいること。
 
(にふ・じやく【ニウ−】[入寂](名)【佛】死ぬること。
 
(にふ・じゆ【ニウ−】[入手](名)(一)我物として手に入るゝこと。(二)深く造詣すること。よく曾得すること。
 
(にふ・じゆく【ニウ−】[入塾](名)塾に入りて寄宿すること。塾生となること。
 
(にふ・しん【ニウ−】[入津](名)「にふかう」(入港)に同じ。
 
(にふ・せき【ニウ−】[入籍](名)或家の戸籍に屬するものゝ轉じて他家の戸籍に加はり人ること。
 
(にふ・せん【ニウ−】[入船〕(名)いりふね。
 
に・ふだ[荷札](名)荷主の名を記して、荷につくる札。
 
(にふ・たい【ニウ−】[入隊](名)軍隊に入ること。兵士となること。
 
(にふ・たう【ニウトウ】[入湯](名)湯に入ること。入浴。
 
(にふ・だう【ニウ−】[入道](名)(一)佛道に入ること。佛門に入ること。(二)古昔、佛道に入りたる三位以上の人の稱。(三){坊主頭の妖怪。(四){坊主頭のものをのゝしりていふ語。――・しんわう【−ノウ】[入道親王](名)昔時、入道し給ひし親王の稱。(法親王)。――・むし[入道蟲](名)【動】「ぢむし」及「にしどち」の一名。
 
(にふ・ぢやう【ニウヂヨウ】[入定](名)【佛】(い)禅定に入ること。(ろ)轉じて、死ぬること。
 
(にふ・ぢやう【ニウヂヨウ】[入場](名)其場にはいること。――・きっぷ[入場切符](名)入場せさする切符。――・けん[入場券](名)前條に同じ。
 
にふ・つ【ニウ−】[入津](名)船舶の港に入ること。
 
(にふ・てう【ニウチヨウ】[入朝](名)外國の使臣などの來りて、朝廷に參内すること。
 
(にふ・ない【ニウ−】[入内](名)(一)「じゆだい」に同じ。(二)古昔、外位より進みて内位に入りしこと。――・すずめ[入内雀](名)【動】雀の一種、甚だ小形にして嘴脚灰色なり、雄は頭背共に赤く、雌は頭背共に黄色なり。(黄雀)。
 
にぷ・にぶ‐し【しく、し、しき、しけれ】[鈍鈍](形、二)いとにぶし。
 
に・ぶね[荷船](名)荷物の運送船。
 
(にふ・ねん【ニウ−】[入念](名)念の入ること。ねんいり。
 
(にふ・ばい【ニウ−】[入梅](名)梅雨の節に人ること。又、梅雨の節。(「つゆ」の條を見よ)。
 
にふばく・の・ひん【ニウ−】[入幕賓](名)(晉の謝安の語に出づ)特別に懇意にする客。
 
(にふ・ひ【ニウ−】[入費](名)金錢を費すこと。いりめ。かゝり。
 
(にふ・ふ【ニウ−】[入府](名)(一)みやこに入ること。(二)入國。
 
(にふ・ふ【ニウ−】[入夫](名)戸主たる女子と結婚して其家に入りたる男子。いりむこ。――・こんいん[入夫婚姻](名)戸主たる女子がなす結婚。
 
(にふ・ぶ【ニウ−】[入部](名)入國。
 
(にふ・ぶ【ニウ−】[入峰](名)山伏が修行のため高山などにのぼること。
 
(にふふ・ぜい【ニウ−】[入府税](名)「にふしぜい」(入市税)に同じ。
 
(にふ・ブツ【ニウ−】[入佛](名)佛像を寺院に迎へ入るゝこと。――・くやう【−ヨウ】[入佛供養](名)入佛のために營む法會。 
 
(にふ・ぼく・だう【ニウ−ドウ】[入木道](名)「じゆぼくだう」に同じ。
 
(にふ・ぼつ【ニウ−】[入没](名)はいりしづむこと。
 
++にぶ‐む【ま、み、む、む、め、め】[鈍](自、ま四)「にばむ」に同じ。
 
(にふ・めつ【ニウ−】[入滅](名)【佛】死ぬること。
 
(にふ・めん【ニウ−】[入麺](名)「にうめん」(煮麺)に同じ。
 
(にふ・もん【ニウ−】[入門](名)學校又は塾などに入りて、其生徒となること。――・きん[入門金](名)入門のしるしとして差出す金。
 
(にふ・よう【ニウ−】[入用](名)(一)いりよう。もちひ。(二)いりめ。つひえ。
 
(にふ・らい【ニウ−】[入來](名)いりくること。いりきたること。じゆらい。
 
(にふ・らう【ニウロウ】[入牢](名)牢に入ること。じゆらう。にふごく。
 
にぶ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[鈍](自、ら四)にぶくなる。
 
(にふ・ゐん【ニウ−】[入院](名)(一)僧侶などが寺院に入りて其主となること。(二)療治を受くるため、病院に入ること。
 
++に・へ【−エ】[新饗](名)《「にひあへ」の約》新しき物を神にそなへ又は人に饗すること。
 
にへ【ニエ】[贄](名)(一)朝廷又は神明などに奉る土産物。(二)おくりもの。つかひもの。禮物。
 
にべ[※[魚+免]](名)【動】硬鰭類中いしもち科に屬する魚、體は側扁、銀灰色にして黒點を有し、腹部は淡黄色なり、灰色の脊鰭を有す、體長一尺餘、深海の泥底に棲息し、其鰾大にして且つ良好なるを以て鰾膠(【ニベ】)を取る料に供せらる。
 
にべ[鰾膠](名)おもににべのふえより製する膠、又、鯉・はも等の皮よりも製す、粘着力甚だ強し。
 
++にへ・がり【ニエ−】[贄狩](名)にへにする魚鳥などを捕ふるかり。
 
++にへさ・に【ニエサ−】[多](副)澤山に。多く。
 
++にへ・どの【ニエ−】[贄殿](名)古昔、禁中にて諸國より奉れる魚鳥を料理せし所。
 
++にへ・の・はつかり【ニエ−】[贄初刈](名)新穀を朝廷又は神に奉らんため、はじめてかりとること。
 
++にへ・びと【ニエ−】[贄人](名)にへかりをなす人。
 
(に・べん[二便](名)大便と小便と。
 
にほ【ニオ】[鳰](名)【動】「かいつむり」の一名。
 
にほ・どり・の【ニオ−】[鳰島](枕)鳰は水を潜(【クグ】)るものなるより「かづく」に冠らする詞。
 
++にほ・の・うきす【ニオ−】[鳰浮巣](名)鳰の巣、其葦間などにつくり、うきて見ゆるよりいふ。
 
にほは‐し【ニオワシ】〔【しく、し、しき、しけれ】〕[堰n(形、二)にほやかなり。
 
にほは‐す【ニオワス】〔【さ、し、す、す、せ、せ】[臭](他、さ四)くさきかをりを發す。
 
にほは‐す【ニオワス】〔【さ、し、す、す、せ、せ】[堰n(他、さ四)(一)つやゝかにす。はえあらしむ。(二)香を發す。かをらす。(三)ほのめかす。諷示す。
 
{にははせる(他)「にほはす」の訛。
 
にはひ【ニオイ】[臭](名)あしきかをり。くさき氣。
 
にほひ【ニオイ】[堰n(名)(一)つや。いろ。(艶)。(二)かをり。か。(香)。(三)おももむき。氣韻。(四)いきほひ。威勢。(五)研《ト》ぎあげたる刀の刃のおもてに生ずる文理。(六)染色又はかさねの色合などに、色のほんのりとくまどれるやうなること。ぼかし。――・あぶら[塩](名)よきかをりのある装飾用の油。かうゆ。(香油)。――・が[燕=l(名)にほひ。かをり。か。――・どり[薗ケ](名)【動】鶯の異稱。――・ぶくろ[苑ワ](名)香料を包みて携帶する袋。惡臭をけすためのもの。――・もの[鴛ィ](名)にほひよきもの。香料。――・やか[堰n(名)つやゝか。にほやか。
 
にほ‐ふ【ニオウ】〔【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[臭](自、は四)くさき氣發す。
 
にほ‐ふ【ニオウ】〔【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[堰n(自、は四)(一)あざやかにあり。はゆ。(二)つやゝかにあり。つやめく。(三)香發す。かをる。(四)風韻あり。おももむきあり。(五)いきほふ。ひかる。
 
++にほ・やか[堰n(名)にほひ高きこと。にほひ多きこと。にほひあらはるゝこと。
 
(に・ほん[二品](名)(一)昔時、親王に賜はりし位階の一。(二)二位。 
 
にほん・いち[日本一](名)「につぽんいち」に同じ。
 
にほん・がた[日本形](名)ものゝ形の日本風なること、西洋形の對。――・せんぱく〔日本形船舶](名)我國在來の構造による船舶、帆艫によりて航走するもの。和船。
 
にほん・ぎんかう【−コウ】〔日本銀行](名)我國の金融機關の中心たる中央銀行、資本の供給を潤澤にし、兌換の基礎を鞏固にし、金利を按排し、金融を調理する等の責務を有し、普通の銀行業務の外、國庫金の取扱・兌換券の發行等をなす。
 
にほん・ざし[二本差](名)○昔時、武士の稱、刀と脇差とを差しゝよりいふ。(一){燒豆腐又は豆腐田樂等の稱、其二本の串を差すよりいふ。
 
にほん・し[日本紙〕(名)我國在來の製法による紙。
 
にほん・しゆ[日本酒](名)我國在來釀造法による酒。
 
にほん・たう【−トウ】[日本刀](名)「につぽんたう」に同じ。
 
にほん・だましひ【−ダマシイ】[日本魂](名)やまとだましひ。
 
にほん・ふう[日本風〕(名)我國在來のならはし又はかたち。
 
{にほん・ぼう[二本棒](名)(一)昔時、二本差即ち武士をあざけりていひし語。(二)洟(【ハナ】)をたらしゐる小供をあざけりていふ語。(三)女房にあまき亭主をあざけりていふ語。(四)まぬけたる人をあざけりていふ語。
 
にほん・まい[日本米」(名)我國より産出する米、南京米などの對。
 
にまし・じた[二枚舌](名)(一)虚言を吐くこと。うそをつくこ。(二)中間に立ちて、彼此に矛盾したる言を吐くこと。
 
に・まめ[煮豆](名)大豆・黒豆などを砂糖と醤油とにて煮染めたるもの。
 
(にめん・かく[二面角](名)【數】相會する二つの平面のなす角。
 
に・もち[荷持](名)荷物をもち行く人。
 
に・もつ[荷物](名)持ちはこぶ物品。運送する貨物。に。――・ぐるま[荷物車](名)荷物をのせてはこぶ車。にぐるま。――・れっしや[荷物列車](名)「くわぶつれっしや」(貨物列車)に同じ。
 
に・もの[煮物](名)食物をにしむること。又、にしめたる食物。
 
{に・やき[荷燒](名)にたき。(東京の方言)。
 
に・やく[荷役](名)(一)船の荷の揚卸しをなすこと。(二){自己の負擔とし持ちあつかふこと。
 
(にやく・だう【−ドウ】[若道](名)男色。鷄姦。
 
{にや・ける【け、け、ける、ける、けれ、けよ】(自、か下一)柔弱にして色めかしくあり。(繊弱、輕佻)。
 
(にやけ・をとこ(名)にやけたる男。(輕薄兒)。
 
{に・やっこ[煮奴](名)奴にきりたる豆腐をにしめたるもの。
 
(にや・にや(名、副)冷かに且つ絶えず笑ひをふくむさまにいふ語。
 
に・ゆ【え、え、ゆ、ゆる、ゆれ、えよ】[煮](自、ヤ下二)(一)にられて熱とほり熟す。(二)水沸騰して湯となる。
 
(にゆう[乳](名)(一)ち。ちゝ。(二)「くわんにゆう」(貫乳)に同じ。
 
(にゆう・かう【−コウ】[乳香](名)薫陸(【クンロク】)の一種、形の乳首に似たるもの。
 
(にゆう・がん[乳癌](名)乳房に癌の發生する病氣。
 
(にゆう・こ[乳虎](名)兒をうみこれにちゝのまするときの虎、最も猛烈なりといふ。
 
(にゆう・さん[乳酸](名)【化】砂糖・澱粉等より醗酵のために生ずる一種の酸、牛乳の腐廢して酸味を帶ぶるは、乳汁中の糖分よりこれが發生するによる、糊・飯・餅等の腐敗する際にも生ず。
 
(にゆう・し[乳齒](名)小兒の出生後六七個月の頃より生じ始め十歳前後に至りて脱(【ヌ】)け去る齒。
 
(にゆう・ジ[乳兒](名)ちのみご。
 
(にゆう・しう[乳臭](名)(一)ちゝのにほひあること。ちくさきこと。(二)經驗の足らざること、又は未熟なることをのゝLりていふ語。――・じ[乳臭兒](名)未熟なるものをあざけりていふ語。
 
(にゆう・じふ【−ジウ】[乳汁](名)ちしる。ちヽ。
 
(にゆう・しやう【−シヨウ】[乳漿](名)乳汁中の一成分、即ち蚤白質及脂肪を除きたる他は皆なこれなり。
 
(にゆう・しゆ[乳首](名)ちくぴ。
 
(にゆう・せきえい[乳石英](名)【鑛】乳白色の石英。
 
(にゆう・せん[乳腺](名)乳房内にありて乳汁を分泌する腺。
 
(にゆう・たう【−トウ】[乳糖](名)【化】哺乳動物の乳汁の中に存在する一種の砂糖、蔗糖に比すれば水に溶(【ト】)け難く又甘味少し、乳汁の主成分なり。
 
(にゆう・なん[乳雛](名)ちしるの十分に出でざること。
 
(にゆう・ぼう【−ボウ】[乳房](名)ちぶさ。――・くわざん[乳房火山](名)【地】乳房の状をなす側火山。
 
(にゆうはく・しよく[乳白色](名)ちしるの如き白き色。
 
にゆう・ハチ[乳鉢](名)藥をすりて細末となすに用ふる陶製又は硝子製の鉢。
 
(にゆう・び[乳麋](名)【生】食物の消化せられてなりたる營養液、乳状をなし帶黄白色にして少しく鹹味あり。――・えき[乳麋液](名)前條に同じ。
 
(にゆう・ぼ[乳母](名)めのと。うば。
 
(にゆう・ぼう[乳棒](名)乳鉢にて藥をする棒。
 
(にゆう・ぼく[乳木](名)護摩にたく木。
 
(にゆう・めい[乳名](名)乳のみ兒のときの名。
 
(にゆう・やう【−ヨウ】[乳養](名)ちゝをのませそだてやしなふこと。
 
(にゆう・らく[乳酪](名)「ぎうらく」(牛酪)に同じ。
 
{にゆっ・と(副)突然にあらはれいづるさまにいふ語。
 
(によ[如](名)【佛】一切處にあまねくして不變なること。即ち、眞如。
 
(によ・い[如意](名)(一)物事の我が思の如くなること。(二)佛家にて用ふる具、玉・鐵・竹などにてつくり、長さ一尺許、わらびのごとき形をなす。――・はうじゆ【−ホウ−】[如意寶珠](名)靈妙なる珠。
 
(によい・りん[如意輪](名)【佛】「によいりんくわんぜおん」の略言。――・くわんぜおん[如意輪觀世音](名)【佛】觀世音の一、六臂にして、如意寶珠を持ちたるもの。
 
++によう・くわん[女官](名)宮中に奉仕する婦人の總稱。官女。
 
++によう・ご[女御](名)(一)親王・三公の女より入内ありて未だ皇后の宜下あらせたまはぬ程の御稱號。(二)中宮に次ぐ女官の稱。――・だい[女御代](名)女御の代として奉仕する女官。――・や[女御屋](名)女御のつぼね。
 
++によう・じゆ[女嬬](名)古昔、内侍司に屬したる女官、掃除・點燈などの事をつかさどるもの。
 
(によう・ばう【−ボウ】[女房](名)(一)古昔、禁中の官女の稱。(二)貴族の家の侍女の稱。(三)現今は、平人の妻の稱。(内儀、細君、内室)。――・ことば[女房詞](名)禁中の女房などの用ひし一種の言語、後土御門帝の頃より起り、もと下ざまのものを供御に調じたるに始まるといふ、團子を「いしいし」といひ豆腐を「おかべ」といふ類。
 
{によう・ぼ[女房](名)「にようばう」の音便。
 
{によう・ゐん[女院](名)皇太后の佛門に入りたまひて門院の號ある方の稱、一條天皇の皇太后藤原の詮子の東三條院と號せられ、後一條天皇の母后藤原の彰子の上東門院と號せられしより起る。
 
(によ・がくせい[女學生](名)「ぢよがくせい」に同じ。
 
(によ・がくかう【−ガツコウ】[女學校](名)「ぢよがくかう」に同じ。
 
(によ・かん[女監](名)「ぢよかん」に同じ。
 
++によ・くらう【−クロ−】[女藏人](名)古昔、地下(【ヂゲ】)の人の女などの宮仕せしものゝ稱。
 
(によ・くわん[女官](名)「にようくわん」に同じ。
 
(によ・けい[女系](名)女子の系統。
 
(によ・ご[女御](名)「にようご」に同じ。
 
(によ・こう〔女工](名)「ぢよこう」に同じ。
 
によご・の・しま[女護島](名)(一)女子のみ居るといふ想像上の海島。(二)八丈島の異稱。
 
(によ・さう【−ソウ】[女相](名)女のかたち。によたい。
 
(によ・さう【−ソウ】[女装](名)「ぢよさう」に同じ。
 
(によ・し[女古](名)「ぢよし」に同じ。
 
(によ・じ[女兒](名)「ぢよし」に同じ。
 
(によ・しう[女囚](名)「ぢよしう」に同じ。
 
(によ・しき[女色](名)「ぢよしよく」に同じ。
 
(によ・じつ[如實](名)【佛】眞理にたがはざること。
 
(によ・しやう【−シヨウ】[女性](名)女とうまれたること。をんな。「今のは確かに−の聲」。
 
(によ・じゆ[女嬬](名)「にようじゆ」に同じ。
 
++によ・じよゐ[女叙位](名)古昔、女官に位階を賜はりし公事。
 
(によ・ぜ[如是](名)(一)かくのごときこと。そのとほりなること。(二)【佛】法門。眞理。佛説。(三)ゆるすこと。うべなふこと。――・がもん[如是我聞](名)(かく我はきゝたりといふ義)如來の指教に從ひて阿難これを諸經の佛説の冒頭に冠らせし語。
 
(によ・せい[女壻](名)「ぢよせい」に同じ。
 
(によ・せいと[女生徒](名)「ぢよせいと」に同じ。
 
(によ・ソウ[女僧](名)比丘尼。アマ。
 
(によ・ぞく[女賊](名)(一)女性の盗賊。(二)【佛】女色の善心を害すること。
 
(によ・たい[女體](名)女性のからだ。
 
{によっきり(名、副)高くおこり出づるさまにいふ語。
 
(によ・てい[女帝](名)女性の皇帝。
 
++によ・とう・ぐう[女春宮](名)春宮に立たせ給へる皇女。
 
(によ・によ[如如](名)【佛】常住にして平等なること。
 
(によ・にん[女人](名)をんな,女子。婦人。――・きんせい[女人禁制](名)寺院などに、婦人の入ることを禁ずること。
 
++によ・ぶ【ば、び、ぶ、ぶ、べ、べ】[呻](自、は四)うなる。うめく。
 
++によ・べったう【−トウ】[女別當](名)古昔、齋宮に奉仕せし女官。
 
++によ・ほうしよ[女奉書](名)古昔、勾當内侍が勅をうけて書きたる文。
 
(によ・ほふ【−ホウ】[如法](名)(一)僧徒の行状よきこと。(二)篤實なること。
 
(によ・はふ【−ホウ】[如法](副)(一)かたのごとく。(二)いふまでもなく。
 
(によほふ・あんや【−ホウ−】[如法暗夜](名)まつくらやみ・しんのやみ。
 
によほふ・の・やみ【−ホウ−】[如法暗](名)前條に同じ。
 
(によ・ぼん[女犯](名)【佛】僧侶が女人と肉交をなすこと。邪淫戒を犯すこと。
 
(によ・らい[如來](名)【佛】(法身にては不生不滅にして依りて來る所なく去る所なき義、報身にては第一義を如として正覺を來となす義、應身にては、如實の道に乘じ來りて正覺を成したる義)佛の稱。
 
に・より[似寄](名)によりてあること。
 
に・よ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[似寄](自、ら四)似て居る。よくにてあり。
 
{によろ・によろ(名、副)長きものゝしづかにうごめくさまなどにいふ語。
 
{によろかり(名、副)前條に同じ。
 
(によ・わう【−ヲウ】〔女王](名)「ぢよわう」に同じ。
 
(によ・ゐん[女院](名)「にようゐん」に同じ。
 
にら[韮〕(名)【植】百合(【ユリ】)料に屬する草、形は葱に似、葉は扁平にして臭氣多く、食用に供せらる、夏の頃六辨白色の花開く。ふたもじ。こみら。(韭)。
 
++にらき[※[草冠/沮]](名)菜を鹽又は酢に漬けたるもの。
 
にらま‐ふ【ニラマウ】【へ、へ、ふ、ふる、ふれ、へよ】[瞰](他、は下二)「にらむ」の延言。
 
{にらまへる(他)「にらまふ」の訛。
 
にらみ[瞰](名)(一)にらむこと。にらむさま。(二)他をおさへつくる威勢。おし。「−がきく」。――・あひ【−アイ】[瞰合](名)にらみあふこと。――・あ‐ふ【−アウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[瞰合](自、は四)(一)互ににらむ。(二)互ににくむ。(三)たゝかふ者互に持重して手を下さず。{――・くら[瞰競](名)小兒の遊戯、にらみあひて、まづ笑ひたる方を負けとするもの。――・つ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[瞰附](他、か下二)勢つよくにらむ。{――つける(他)「にらみつく」の訛。
 
にら・む【ま、み、む、む、め、め】[瞰](他、ま四)(一)目を怒らして見つむ、目かどを立てゝ見つむ。(二)ながしめに見る。じろりと見る。(睨)。(三)目ぼしをつく。
 
(に・りん[二輪](名)(一)二つの車輪。(二)二つの花冠。「−咲。」――・しや[二輪車](名)二輪の装置ある車。
 
にる【に、に、にる、にる、にれ、によ】[似](自、な上一)互に同じ樣なり。相類す。
 
にる【に、に、にる、にる、にれ、によ】[煮、烹](他、な上一)(一)火にかけて沸かす。(二)沸けるものゝ中に入れて熱をとほす。
 
にれ[楡](名)【植】「あきにれ」(秋楡)に同じ。
 
++にれ・が‐む【ま、み、む、む、め、め】[※[齒+台](他、ま四)牛羊などが、ものを噛みて呑みたる後これを吐き出だして再び食ふ。
 
にれ・もみ[楡樅](名)【植】「もみ」の一名。
 
(にろく・じ・ちゆう[二六時中](名)(十二時の間の義)一晝夜、又、終日。
 
(にろく・つゐ[二六對](名)漢詩にて、近體の七言の句の第二字と第六字との平仄の相對すること。
 
(に・わう【−ヲウ】[仁王](名)【佛】「こんがうじん」(金剛神)に同じ。――・もん[仁王門](名)仁王の像をおきたる社寺の門。
 
(に・ゐん[二院](名)上院と下院と。――・せい[二院制](名)國會が上院と下院とより組織せらるゝ制度、我帝固議會は二院制なり。「−に赴く」。
 
(にん[任](名)(一)つとめ。せめ。(二)職務を行ふ所。
 
(にん[仁](名)果實の核中にある種子。たね。
 
(にん[忍](名)(一)しのぶこと。たふること。(二)【佛】自ら憤恚せず、また他人をして憤恚せしめざること。
 
(にん[人](名)ひと。ひとがら。「−を見て法を説け」。
 
−にん[人](接尾)人數を數ふるにいふ語。「百−」。「千−」。
 
(にん・い[任意](名)其人の思ふゝにせさすること。其人の自由意思に任ずること。隨意。――・さいむ[任意債務](名)【法】債務者が其債務の目的外の物を給付して辨済することを得る債務。――・しゆっとう[任意出頭](名)任意に或所に出頭すること。
 
(にん・か[認可](名)(一)可なりと認めて許すこと。(許可)。(二)【法】其事の實行を許可する行政處分。――・えいげふ【−ギヨウ】[認可營業](名)認可得るにあらざればなすことを得ざる營業。――・じやう【−ジヨウ】[認可状](名)認可したることの證明書。――・しよう[認可證](名)前條に同じ。
 
(にん・が[人我](名)他人と自己と。
 
(にん・かい[人界](名)【佛】人間の社會。
 
(にん・き[任期](名)職務にある一定の年限。
 
(にん・き[人氣](名)「じんき」こ同じ。
 
(にん・ぎやう【−ギヨウ】[人形](名)(一)人の形に擬して作りたる玩弄物。(二)「にんぎやうじたて」の略言。――・じたて[人形仕立](名)人形に着する衣服の仕立、即ち腋下をあけて袖をつけたる仕立。――・しばゐ[人形芝居](名)人形を操(【アヤツ】)りてをどらしむる芝居。――・つかひ【−ツカイ】[人形遣](名)人形をあやつりて踊(【ヲド】)らしむる人。――・で[人形手](名)唐子人形を染め出だししたる上品の更紗又は陶器の稱。――・まはし【−マワシ】[人形廻](名)「にんぎやうつかひ」に同じ。
 
(にん・きよ[認許](名)みとめゆるすこと。
 
(にん・ぎよ[人魚](名)(一)【動】「さんせううを」の一名。(二)胴以止は人身にして胴以下の魚體なりといふ想像上の動物。
 
(にん・ぐわい[人外](名)(一)人倫の道にそむきたること。(二)普通人同樣のとりあつかひを受くること能はざる下賤のもの、即ち穢多の類。
 
(にん・くわん[任官](名)(一)官吏に任ぜらるゝこと。(二)官職に任ぜらるゝこと。(拜命)。
 
(にん・けふ【−キヨウ】[仁侠](名)弱き扶(【タス】)け強きをくじく氣性に富むこと。をとこぎ。をとこだて。(任侠)。
 
(にん・げん[任限](名)「にんき」(任期)に同じ。
 
(にん・げん[人間](名)(一)よのなか。世間。(二)ひと。人類。――・かい[人間界](名)人類の生息する此世界。――・なみ[人間並](名)人類一般の状態・ひとゝほりのありさま。
 
(にん・こく[任國](名)國司の任命せられて、赴任する地方。じゆるやう。
 
(にん・さう【−ソウ】[人相](名)(一)ひとの容貌。さうがう。(二)ひとの容貌を見て、其運命吉凶を占ふこと。――・がき[人相書](名)人を捜索するため、其容貌の他人と識別するに足るべき特點等を記載して、四方に配布するもの。――・み[人相見](名)人相によりて其人の運命吉凶を判斷することを業とする人。(相者、風鑑者)。――・めがね[人相眼鏡](名)人相を見るに用ふる眼鏡、即ちも天眼鏡。
 
(にん・しき[認識](名)心が外界及内界の對象を感知又は認知し若しくは斷定すること,知ること。――・ろん[認識論=Epistemology](名)【哲】認識の起原・本質範圍等に就て研究する哲學、古來實在論と觀念論とに分れ、又、經驗論と純理論とに分る。
 
(にん・じやう【−ジヨウ】[刃傷](名)刃物にて人を傷つくること。
 
(にん・じやう【−ジヨウ】[人情](名)(一)人類の具有する愛情。いつくしむこゝろ。なさけ。(二)人心自然の情状。「苦を避け樂に就くは−なり」。――・ぼん[人情本](名)男女の痴情を記したる小説。
 
(にん・じゆ[忍受](名)たへしのびて受くること。「恥辱を−す」。
 
(にん・じゆつ[仁術](名)「じんじゆつ」に同じ。
 
(にん・じゆつ[忍術](名)身をかくして敵陣などにしのび入る術。しのびの術。
 
(にん・じよ[任所](名)赴任する地方。任務を行ふ所。
 
(にん・しよう[認證](名)其物事をみとめてこれを證明すること。
 
(にん・しよう[認承](名)みとめうべなふこと。
 
(にん・しよう[人稱](名)【文法】人代名詞のとなへ、第一人稱・第二人稱・第三人稱に分つ。
 
(にん・しよう[人證](名)【法】證人を以てする證據方法。
 
(にん・しん[妊娠](名)はらむこと。みごもること。みもち。(懷妊)。
 
(にん・じん[人參](名)【植】(い)繖形科に屬する草本、葉は細裂し、花は白色小形にして複繖形花序に排列し、總苞は羽状葉より成る、根は肥大にして黄赤色を呈す、葉根共に食用に供せられ、廣く各地に栽培せらる。(※[草冠/胡]〓〓)。(ろ)五加科に屬する草本、葉は掌状複葉にして、花は小形白色なり、根は藥用に供せられ、其人形をなすものを殊に佳品とす、朝鮮産のもの最も有名なり。――・ざ[人參座](名)昔時、藥用の人參を取扱ひし所。――・ぼく[人參木](名)【植】十字花科に屬する木、葉は人參に似、花は穂状花序をなす、枝幹は初め方形緑色なれど後に圓形褐色に變ず、幹を折れば中に方形の心あり。實は胡麻に似て色黒し、小笠原島に産す。
 
(にん・ず[人數](名)(一)ひとのかず。にんとう。(二)多數の人。
 
にん・ず【ぜ、じ、ず、ずる、ずれ、ぜよ】[任](自、さ變)つとめとす。せめとす。引受く。「責に−」。
 
にん・ず【ぜ、じ、ず、ずる、ずれ、ぜよ】[任](他、さ變)(一)役目に就かしむ。官職に就かしむ。(二)擔當せしむ。まかす。
 
++にん・ず【ぜ、じ、ず、ずる、ずれ、ぜよ】[妊](自、さ變)はらむ。
 
にんず・だて[人數立](名)人數の配列。
 
(にん・せん[人選](名)人をよりえらぶこと。
 
(にん。そく[人足](名)(一)荷物の運送などに雇はるゝ労働者。かるこ。(遞夫。擔夫)。(二)人をあざけりていふ語。
 
(にん・たい[忍耐](名)たへしのぶこと。こらへたふること。
 
(にん・たい[妊帶](名)いはたおび。
 
(にん・たい[人體](名)「にんてい」に同じ。{―――・ら‐し【しく、し、しき、しけれ】(形、二)ひとがらゝし。
 
(にん・だく[認諾](名)(一)よしとみとめてうべなふこと。(承認)。(二)【法】口頭辯論にて、當事者の一人が相手方の主張を承認すること。
 
(にん・ち[任地](名)任務を行ふ地・任所。
 
(にん・ち[認知](名)(一)みとめしること。わきまふること。(二)【法】規定の法式により、私生子の父又は母たることを任意に自白すること。
 
++にん・ぢやう【−ヂヨウ】[人長](名)神樂の舞人の長。
 
++にん・ぢやう【−ヂヨウ】[人定](名)人の寐しづまる時刻、即ち午後十時。
 
(にん・ちゆう[人中](名)(一)多人數のなか。(二)はなみぞ。(鼻溝)。――・はく[人中白](名)漢法にて、小便の※[沂/土](【オリ】)を藥用となすときの稱。――・わう【−ヲウ】[人中黄](名)漢方にて、大便の液を藥用となすときの稱。
 
(にん・てい[認定](名)みとめてきめ定むること。
 
(にん・てい[人體](名)ひとがら。じんぴん。――・ら‐し【しく、し、しき、しけれ】(形、二)ひとがららし。
 
(にん・とう[人頭](名)ひとかず。人數。――・ぜい[人頭税](名)人頭に賦課する租税。
 
(にん・どう[忍冬](名)【植】忍冬科に屬する植物、山野にず、纏繞莖を有し、葉は橢圓状をなして對生す、花梗は二花を生じ、苞は大形にして葉状をなす、花は蕾のとき淡紫色を呈し開けば淡黄色となり終に白色となる、花冠は辱形に分裂す、葉は藥用に供せられ、茶にも代用せらる。(金銀花、老翁鬢)。
 
(にん一とく[人徳](名)其人に自然そなはれる徳。
 
(にん・とく[仁徳](名)仁愛深き徳。
 
(にん・にく[忍辱](名)【佛】恥辱を忍びて怨みを報ぜざること。――・がい[忍辱鎧](名)【佛】袈娑の異稱。
 
にん・にく[大蒜](名)【植】百合科に屬する草本、特異の臭氣を有す、葉は扁平なり、花は繖形花序をなして莖頂に着生す、根は皮赤くして藥用に供せらる。
 
(にん・にん[人人](名、副)ひと/”\。めい/\。
 
(にん・のう[人皇](名)「にんわう」の連聲。
 
(にん・ば[人馬](名)人とうまと。じんば。
 
(にん・ぴ・にん[人非人](名)(人にして人にあらずとの義)不義非道の人を賤しみていふ語。
 
(にん・ぶ[人夫](名)(一)公役に使用せらるゝ人民。夫役を課せられたる人民・役夫。(二)荷物の運搬などに使はるゝ、勞働者。かるこ。人足。
 
(にん・ぷ[妊婦](名)懷妊せる婦人。はらみをんな。みもちをんな。(孕婦)。
 
(にん・べつ[人別](名)(一)人毎にわり當つること。人毎にものすること。「−に賦役を充て」。(二)人名。(三)戸籍。(四)人口。――・ちやう【−チヨウ】[人別帳](名)人別をしるしたる帳簿。
 
(にん・べん[人偏](名)漢字の偏の名、即ち仙・供等の字の左方にある「イ」の字、字書にては人部に屬す。
 
(にん・む[任務](名)つとめ。やくめ。
 
(にん・めい[任命](名)官職を命ずること。職務を命ずること。
 
(にん・めん[任免](名)官職に任ずると官職を免ずること。
 
(にん・めん[人面](名)ひとのかは。――・さう【−ソウ】[人面瘡](名)膝頭に生ずる一種の腫物、腐爛して人面の状をなすといふ。――・じうしん[人面獣心](名)(面は人にて心は獣のごとき義)義理をわきまへぬこと。思義を知らぬこと。
 
(にん・よう[任用](名)職務を授けて使用すること。あげもちふること。
 
(にん・よう[認容](名)可としてゆるすこと。みとめゆるすこと。
 
(にん・わう【−ノウ】[人皇](名)神代と區別して神武天皇以後の天皇を申し奉る語。
 
++にんわう・ゑ【−ノウ−】[仁王會](名)古昔、毎年三月及七月に大極殿・紫宸殿・清涼傳等にて行はれし公事、朝家の御祈のため、仁王護國般若經を講釋せしめられたり。
 
 ぬ
 
ぬ 齒的鼻音N即ち舌端を硬口蓋の前部に觸れしめて發する鼻音と、母音「ウ」との綴音。
 
++ぬ[瓊」(名)「に」に同じ。「−なとももゆらに」。
 
++ぬ[野](名)「の」に向じ。「−の神」。
 
++ぬ[沼](名)「ぬま」に同じ。「こもり−」。「田−」。
 
ぬ【ね、ね、ぬ、ぬる、ぬれ、ねよ】[寐、寢](自、な下二)いぬ。
 
ぬ【な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ね】(助動)過去をあらはす助動詞。「春行き−」。
 
ぬ[不](助動)打消の助動詞「ず」の變化。「思は−夢」。
 
ぬえ[※[空+鳥]](名)(一)【動】このはづくの一種、大いさ鳩の如く、嘴は黄色にして羽毛に黒斑あり、晝伏し夜出づ、其聲幼兒の泣聲に類す。とらつぐみ。おにつぐみ。(鵺)。(二)近衛帝の時、源頼政が紫宸殿上より射落したりといふ怪獣、首は猴・身は虎・尾は蛇の如く、聲はぬえに似たりといへり。(三)轉じて、種々の形をなして一致せざる異體のものゝ稱。「−文章」。
 
++ぬえ。くさ[萎草](名)しをれたる草。しなやかなる草。――・の[萎草](枕)婦人のたをやかなるさまを萎草にたとへて、「め」に冠らする詞。「−の女にしあれば」。
 
++ぬえこ・どり〔※[空+鳥]子鳥](名)【動】「ぬえ」に同じ。
 
++ぬえ・こ・どり[※[空+鳥]子鳥](枕)「なく」「のどよぶ」「かたこひ」に冠らする詞。
 
++ぬえ・ふ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】(自、さ四)「のえふす」に同じ。
 
ぬか[糠](名)もみがらの中に米を包みたる薄き皮。又、其薄皮の碎けて細粉となれるもの。(糠※[麥+面]、米皮糠、米※[米+比])。――に くぎ 如何に意見すとも其詮なきにいふ。
 
ぬか[額](名)(一)ひたひ。「−づく」。(二)「ぬかどり」の略言。
 
ぬか−[糠](接頭)或語に冠して、いと細かき意を表する語。「−雨」。「−蚊」
 
ぬか・あめ[糠雨](名)おと細かき雨。きりあめ。
 
ぬか・えび[糠蝦](名)【動】「あみ」の一名。
 
ぬか・が[糠蚊](名)蚊の一種、細小白色にして頭部絮毛あり、雨前などは道路を塞ぎて群飛す。(浮塵子、蚋子)。
 
++ぬか・がき[樓額](名)馬具の名、馬の額の装飾に着くるもの。
 
++ぬか・がみ[額髪](名)まへがみ。ひたひがみ。
 
ぬか・くぎ[額釘](名)極めて小さき釘。
 
++ぬかご[零餘子](名)「むかご」に同じ。
 
ぬか・ご[糠子](名)【動】「ぬかが」に同じ。
 
ぬか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[拔](他、さ四)(一)おとす。もらす。(脱)。(二){言ふ。しやべる。「何を−」。(吐)。
 
++ぬか・づき[酸漿](名)【植】「ほほづき」に同じ。
 
++ぬかづき・むし[叩頭蟲](名)【動】「こめつきむし」の一名。
 
++ぬか・づ‐く【か、き、く、く、け、け】[叩頭](自、か四)(頭突く義)頭を地につけて拜禮す。(頓首、稽首)。
 
ぬか・づけ[糠潰](名)糠に鹽を和し、野菜類を漬けたるもの。
 
ぬか・どり[糠鳥](名)【動】燕雀類中すゞめ科に屬する鳥、形ひはに似て小さく、羽毛青灰色にしてよく囀(【サヘヅ】)る。
 
++ぬか・ば[向齒](名)「むかば」に同じ。
 
ぬか・ばへ【−バエ】[糠蠅](名)【動】「ぬかが」に同じ。
 
ぬか・ぶくろ[糠袋](名)糠を入れてゆあみするとき肌を洗ふ袋。
 
ぬか・ぶるひ【−ブルイ】[糠篩](名)糠をふるふに用ふるふるひ。
 
ぬか・ぼし[糠星](名)大空に見ゆる無數の小さき星。吉
 
ぬか・ミソ[糠味噌](名)(一)糠に鹽を加へて貯へおき、野菜などを漬(【ツ】)くるもの。――・づけ[糠味噌漬](名)ぬかミソに漬(【ツ】)けたる漬物。
 
ぬか・よろこび[糠悦](名)悦ばしき豫想のはづれたること。假のよろこび。
 
ぬかり[泥濘](名)路上泥深きこと。ぬかること。――・み[泥濘](名)泥深き所。ぬかる所。
 
ぬか‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[泥濘](自、ら四)地上泥深くして歩み難くあり。――・み[泥濘](名)「ぬかりみ」に同じ。
 
ぬか‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[拔](自、ら四)氣附かずして仕損ず。油斷して失策す。(※[人偏+空]、呆)。
 
ぬき[拔](名)(一)ぬくこと。(二)ぬきて其處をあけおくこと。なすべきことをなさざること。(三){どぢやうなどの骨をぬきて料理すること。
 
ぬき[緯](名)(一)織物の横絲。(二)たてのものに横に打ち違ひたるもの。
 
ぬき〔貫](名)横に柱を貫く材。
 
ぬき・あし[拔足](名)音を立てぬやうに足をあげて歩むこと。「−差足」
 
ぬき・あつ‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[拔集](他、ま下二)拔きとりてよせあつむ。
 
{ぬきあつめる(他)「ぬきあつむ」の訛。
 
ぬき・あは‐す【せ、せ、す、する、すれ、せよ】[拔合](他、さ下二)相爭ふもの互に刀を拔く。
 
{ぬきあはせる(他)「ぬきあはす」の訛。
 
ぬき・いだ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[拔出](他、さ四)(一)ひきぬきて出だす。(抽)(二)よりいだす。(擢)。
 
ぬき・い‐づ【で、で、づ、づる、づれ、でよ】[拔出](自、た下二)(一)あらはれ出づ。おこり立つ。(抽)(二)すぐれ出づ。ひいづ。
 
ぬき・い‐づ【で、で、づ、づる、づれ、でよ】[拔出](他、た下二)「ぬきいだす」に同じ。
 
ぬき・いと[拔絲](名)古着より拔き取りたる縫絲。
 
ぬき・いと[緯絲](名)織物の横絲。
 
ぬき・うち[拔撃](名)刀を拔くと同時に切りつくること。(拔打)。
 
ぬき・うつし[拔寫](名)書中の處々をぬきてうつしとること。
 
ぬき・えもん[拔衣紋](名)衣紋を後の方へ押しさげて衣服を着てあること。のけくび。
 
ぬき・がき[拔書](名)處々をぬきとりてかきしるすこと。
 
ぬき・かざ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[拔翳](他、さ四)刀を拔きて頭上にふりかざす。
 
++ぬき・かぶり[※[糸+崔]車](名)「いとぐるま」に同じ。
 
++ぬき・かぶる[※[糸+崔]車](名)前條に同じ。
 
ぬき・さし[拔差](名)(一)拔出だすと差込むと。ぬくとさすと。(二)減(【ヒ】)くと加ふると。(三)とりかへ。やりかへ。
 
ぬき・じろ[緯白](名)白の緯絲の織物。
 
{ぬき・す[貫簀」(名)古昔、盥(【タラヒ】)の上にかけおきたる簀、手洗水などの飛び散らぬためのもの。
 
ぬぎ・す‐つ【て、て、つ、つる、つれ、てよ】[脱棄](他、た下二)ぬぎたるまゝにてすておく。(脱捨)。
 
{ぬぎすてる(他)前條の訛。
 
++ぬぎ・すべ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[脱滑](他、さ四)衣服などをすべらしてぬぐ。
 
ぬき・つら‐ぬ【ね、ね、ぬ、ぬる、ぬれ、ねよ】[貫連](他、な下二)つらぬきて長くつらぬ。
 
{ぬきつらねる(他)前條の訛。
 
ぬき・つ‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[拔連](他、ら下二)多人數共に刀を拔く。
 
{ぬきつれる(他)前條の訛。
 
ぬき・で[拔手](名)兩手をかはる/”\水上に拔き出だして泳(【オヨ】)ぐこと。「−を切る」。
 
ぬき・で[拔出](名)(一)ぬき出だすこと。(二)++古昔相撲(【スマヒ】)の節に於ける選拔の力士の取組。――・わ た[拔出綿](名)布團などよりぬき出だしたるわた。ぬきわた。
 
ぬき・とほ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[貫通](他、さ四)つらぬきとほす。つきぬく。
 
ぬき・と‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[拔取](他、ら四)(一)其中より或物だけを取る。(二)彼方より此方にぬきてとる。(三)えらび取る。
 
ぬき・はな‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[拔放](他、さ四)刀を鞘(【サヤ】)より一氣に拔き出す。
 
ぬき・はな‐つ【た、ち、つ、つ、て、て】[拔放](他、た四)前條に同じ。
 
++ぬき・ほ[拔穗](名)稻の穗をぬきとること。又、ぬきとりたる稻の穗。「−の使」。
 
ぬき・ほん[拔本](名)拔萃したるものを綴りたる冊子。
 
ぬき・み[拔身](名)鞘(【サヤ】)より拔きあらはしたる刃。白刃。「−の槍」。(露刃)。
 
++ぬき・れ[貫入](名)數珠の稱。
 
ぬき・わた[拔綿](名)布團又は古着等に入れたる綿を拔き取りたるもの。ぬきでわた。
 
ぬき・をさ[緯筬](名)緯絲をとほすをさ。
 
ぬきん・づ【で、で、づ、づる、づる、でよ】[抽](自、た下二)(「拔き出づ」の音便)(一)群に秀づ。衆に拔く。すぐる。まさる。ひいづ。「才學衆に−」。(二)すゝみ出てゝものす。先んじてものす。
 
ぬきん・づ【で、で、づ、づる、づる、でよ】[抽、擢](他、た下二)(「拔き出づ」の音便)擇び出す。よりぬく。
 
{ぬきんでる(自)「ぬきんづ」の訛。
 
ぬ・く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[拔](自、か下二)(一)はなれ出づ。うごき出づ。(二)離れ落つ。とれ去る。「齒−」。「髪−」。(三)すぐれ出づ。ぬきんづ・(抽)。(四)もる。おつ。(漏)。(五)すくなくなる。へる(減)。(六)きゆ。うす。(七)にぐ。のがる。(脱)。(八)攻め落さる。攻め取らる (九)とほる。つらぬく。(十){智慧足らず。
 
ぬ‐く【か、き、く、く、け、け】[拔](他、か四)(一)ひきて取る。引きて出だす。「刀を−」。(二)えらび取る。えらび出す。(擢、抽)。(三)除去す。のぞく。「しみを−」。(四)省略す。はぶく。「手を−」。(五)間をとばす。(六)だしぬく。あざむく。(七)攻め落す。のり取る。「城を−」。(八)つらぬく。とほす。(貫)(九)果たす。とぐ。「いひ−」。
 
ぬ‐ぐ【げ、げ、ぐ、ぐる、ぐれ、げよ】[脱](自、か下二)身に着けあるもの解けはなる
 
ぬ‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[脱](他、か四)身に着けたるものを解きはなす。「靴を−」。
 
ぬく‐し【く、し、き、けれ】[温](形、一)あたゝかなり。あたゝかし。
 
{ぬくと‐し【く、し、き、けれ】[温](形、一)前條に同じ。
 
{ぬくとま‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[温](自、ら四)あたゝまる。ぬくまる。
 
ぬく・ばひ【−バイ】[温灰](名)暖かき灰。あつばひ。
 
ぬぐひ・いた【ヌグイ−】[拭板](名)ぬりいた。
 
ぬぐ‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[拭](他、は四)(一)すりて消す。すりて除く。すりて淨(【キヨ】)くす。ふく。(二)きよむ。消す。「千歳−べからざる恥辱」。
 
ぬくまり[温](名)ぬくまること。又ぬくまりたる氣。
 
ぬくま‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[温](自、ら四)あたゝまる。ぬくとまる。
 
ぬく・み[温](名)ぬくまりたるどあひ。ぬくまりたる氣。
 
ぬく‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[温](他、ま下二)ぬくとまらしむ。あたゝむ。
 
ぬくめ・どり[温鳥](名)冬夜、鷹の小鳥を擒へて握(【ツカ】)み、其脚を温めたる後これを放ち遣ること。
 
{ぬくめる(他)「ぬくむ」の訛。
 
ぬくもり[温](名)ぬくもること。又、ぬくもりたる氣。
 
ぬくも‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[温](自、ら四)ぬくとまる。あたゝまる。
 
ぬけ[拔](名)(一)もれ。おち。(二)まぬかれたること。にげたること。(三){智謀の足らぬこと。又、其人。
 
ぬけ・あきなひ【−アキナイ】[拔商](名)規則をおかし又は仲間をはづれて、ひそかに商賣すること。(脱商)。
 
ぬけ・あな[拔穴](名)(一)通り拔けらるゝ穴。(二)ひそかにのがれ出でらるゝ穴。(三)ものゝ脱漏する場所。
 
ぬけ・い‐づ【で、で、づ、づる、づれ、でよ】[拔出](自、他下二)(一)はなれ出づ。ゆるぎ出づ。(二)ぬきんづ。ひいづ。(抽)。(三)のがれいづ。まぬかれいづ。(脱出)。(四)あらはれ出づ。(五)窃に出づ。
 
{ぬけいでる(自)「ぬけいづ」の訛。
 
ぬけ・がけ[拔駈](名)窃に陣屋を拔け出でゝ先駈すること。他をだしぬきて先駈すること。――・の・こうみやう【−ミヨウ】[拔駈功名](名)拔駈して得たる功名。
 
ぬけ・がみ[拔髪](名)ぬけおちたる髪の毛。(脱髪)。
 
ぬけ・がら[拔殻](名)(一)蛇又は蝉などの脱化したるあとの殻。もぬけのから。(蛻)。(二){のろき人をのゝしりていふ語。
 
ぬけ・くび[拔首](名)時に長く伸び出づといふ首。ろくろくび。
 
ぬけ・げ[拔毛](名)ぬけおちたる毛。(脱毛)。
 
{ぬけ・さく[拔作](名)痴鈍なる人。のろま。
 
ぬけ・じ[拔字](名)文句の中にあるべき筈の文字のおちたるもの。脱落したる文字。(脱字)。
 
ぬけ・に[拔荷](名)禁を侵して、窃に輸出する荷物。
 
{ぬけ・ぬけ(名、副)(一)他に知らさぬやうにするさまにいふ語。(二)おろかめきたるさまにいふ語。
 
ぬけ・ば[拔齒](名)ぬけおちたる齒(脱齒)。
 
ぬけ・まゐり[拔參](名)父兄又は主人などの許可を得ずに家を拔け出でゝ伊勢大神宮に參詣すること。
 
ぬけ・みち[拔路](名)(一)うら道。間道。(二)逃(【ノガ】)るべき路。にげみち。(三)逃るべきすべ。
 
ぬけ・め[拔目](名)ぬけ。もれ。おち。(二)しおち。てぬけ。あやまり。(三)ゆだん。
 
{ぬける(自)「ぬく」の訛。
 
{ぬげる(自)「ぬぐ」の訛。
 
ぬさ[幣](名)神を祈(【イノ】)るに奉る物、多くは麻又は木綿若しくは紙などにてつくる。みてぐら。にぎて。++――・ぶくろ[幣袋](名)古昔、旅行するとき、道の神にたむくる幣を入れて携へし袋。
 
ぬし[主](名)(一)我が事ふる主人。しゆう。(二)物を所有する人。もちぬし。(三)其山又は其水などに古くより棲みて靈ありといふ動物の稱。「池の−」。
 
ぬ・し[塗師](名)(「ぬりし」の約)漆細工をする職人。(漆工、塗匠。――・ぶろ[塗師風呂」(名)塗物を入れ置きて乾かす室。――・や[塗師屋](名)漆細工を職とする人又は家。
 
ぬし[主](代)敬意の對稱代名詞。きみ。あなた。(後世多く婦人より男子に對していふ)。
 
++ぬす・だ‐つ【た、ち、つ、つ、て、て】[竊起](自、た四)鷹狩狩にて、鳥草叢の陰より窃に逃(【ニ】)げ去る。
 
{ぬすつと[盗人](名)「ぬすびと」の訛。
 
{ぬすと[盗人](名)前條に同じ。
 
++ぬす・ば‐む【ま、み、む、む、め、め】[盗食](他、ま四)鷹狩にて、鷹、おのれの捕(【トラ】)へたる鳥を其まゝ食ふ。
 
ぬす・びと[盗人](名)他人の所有物を盗みとるもの。〓盗をなすもの。(盗賊)。――・こんじやう【−ジヨウ】[盗人根性](名)ぬすみするものゝ根性。又、いたく他人のものをほしがる根性。――・の・あし[盗人足](名)【植】蘭科に屬する草、深山に生ず、高さ數尺、葉は藤に似て細長く互生し、花は薄紫色を呈す、果實は人の足の形をなし、熟すれば人の衣袂などに粘着す、根は藥用に供せらる。(天麻)。――・やど[盗人宿](名)盗人をかくまふ家。
 
++ぬすま‐ふ【ヌスマウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[竊](他、は四)隱してなす、窃になす。「年の八とせをわがぬすまひし」。
 
ぬすみ[盗](名)ぬすむこと。――・ぎき[盗聞](名)ひそかに立聞すること。――・ぐひ【−グイ】[盗食](名)竊に物を盗みて食ふこと。――・だけ[盗竹](名)簀の子の床下にある竹。――・だ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[盗出](他、さ四)ひそかに他人のものを持ち出す。ぬすみて持ち出す。――・と‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[盗取](他、ら四)ひそかに取る。++――・に[盗](副)ひそかに。ない/\で。++――・ばみ[盗食](名)ぬすみぐひ。――・もの[盗物](名)盗みたる物品。贓品。贓物。
 
ぬす‐む【ま、み、む、む、め、め】[盗](他、ま四)(一)竊に他人の財物を奪ひ取る。とる。(二)隱してなす。ひそかになす。「人目を−」。(偸)。(三){ちよっとごまかす。ひそかにやりくりす。「暇を−」。
 
++ぬた[※[角+少]](名)「ぬたはだ」に同じ。
 
++ぬた(名)猪の臥床。
 
ぬた[※[食+曼]](名)一種の料理、酢を混じたる味噌にに魚肉又は蔬菜を和したももの。――・あへ【−アエ】(名)前條に同じ。――・なます(名)前々條に同じ。
 
++ぬ・た[沼田](名)ぬまた。
 
ぬた・う‐つ【た、ち、つ、つ、て、て】(自、た四)(一)++猪、草の上に轉(【コロ】)げて寢る。(二)のたくる。もがく。
 
{ぬた・く‐る【ら、り、る、る、れ、れ】(自、ら四)もがきてうねりころがる。もがきまはる。のたくる。
 
++ぬた・はず[※[角+少]筈](名)ぬたはだにてつくりたる筈。
 
++ぬた・はだ[※[角+少](名)角の皮に波紋のあるもの。
 
{ぬっくり(名、副)(一)あたゝかきさまにいふ語。(二)そしらぬふるするさまにいふ語。(二)立ちあがるさまにいふ語。
 
{ぬっと(副)前條(三)に同じ。
 
++ぬ・つ・とり[野鳥](名)野にすむ鳥。
 
{ぬっぺい(名)「のっぺい」に同じ。
 
{ぬっぺり(名、副)「のっぺり」に同じ。
 
{ぬて[鐸](名)「ぬりて」に同じ。
 
++ぬで[白膠木](名)【植】「ぬるで」に同じ。
 
++ぬ・な・と[瓊音](名)たまのおと。
 
++ぬ・なは【ヌナワ】[蓴](名)【植】「じゆんさい」に同じ。
 
めの[布](名)麻又は葛などの繊維にて織りたる織物の總稱。――・おび[布帶](名)布にて仕立てたる帶。――・ぎぬ[布衣](名)布にて仕立てたる衣服。――・こ[布子](名)木綿の綿入衣。(綿衣、※[糸+褞の旁]衣)。――・ごし[布漉](名)布にてこすこと。又、布にてこしたるもの。――・ごろも[布衣](名)布にて仕立てたる衣。ぬのぎぬ。――・さうじ【−ソウ−】[布障子](名)布を張りたる障子。――・ざらし[布晒](名)(一)布を水に洗ひて日に晒すこと。(二)一反の布の端を持ち、これを振り動かして波状をなさしむること。――・はた[布機](名)布を織るはた。――・びき[布引](名)(一)晒すために麻布を引きはること。(二)【植】菌の一種、ならびて生ふるもの。(三)一種の遊戯、綱引の如くに布を引きあふもの。(四)群衆の引きもきらずつゞくさま。――・びき・に[布引](副)布を引き張りたるが如くに、引きつゞきて。――・びたたれ[布直垂](名)「だいもん」(大紋)の一名。――・びやうぶ【−ビヨウ−】[布屏風](名)布を張りたる屏風。――・め[布目](名)布の織目のごとき模樣。――・め・がみ[布目紙](名)ぬの目をつけたる紙。
 
ぬ・ばかま[奴袴](名)「さしぬき」に同じ。
 
ぬば・たま[射干玉](名)からすあふぎの果實、圓くして黒し。――・の[射干玉](枕)「黒」「夜」「闇」又は「月」「夢」「寢」「妹」などに冠らする詞。
 
++ぬはり・ぐさ[王孫](名)【植】「つくばねさう」に同じ。
 
(ぬ・ひ[奴婢](名)下男と下女と。
 
ぬひ【ヌイ】[縫](名)(一)ぬふこと。(二)ぬひめ。(三)ぬひもの。(四)++「ぬひれう」の略言。――・いと[縫絲](名)物をぬふに用ふる絲。――・こみ[縫込](名)ぬひこむこと。又、ぬひこみたる部分。――・し[縫師](名)ぬひものを職とする人。――・しろ[縫代](名)縫ふべき部分。――・つ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[縫附](他、か下二)縫ひて附着せさす。――・つ‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[縫續](他、か四)縫ひてつぎあはす。――・つけもん[縫附紋](名)他の布帛に描(【ヱガ】)きたる紋をぬひつけたるもの。{――つける(他)「ぬひつく」の訛。――・どの・の・つかさ[縫殿寮](名)++「ぬひれう」に同じ。――・とり[縫取](名)布帛の上に、種々の模樣又は繪畫を、五彩の絲にてぬひつゞること。又、其縫ひつゞりたる模樣又は繪畫。(繍)。――・と‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[縫取](他、ら四)縫取をなす。++――・の・とぢめ[縫綴目](名)ぬひめ。――・はく[縫箔](名)金絲又は銀絲にて縫取すること。又、其ぬひとりしたるもの。――・はり[縫針](名)さいはう。針仕事。――・ばり[縫針](名)ものを縫ふに用ふる針。――・べり[絶縁](名)ぬひとりたるへり。――・め[縫目](名)縫ひ合はせたるさかひ。――・もの[縫物](名)(一)物を縫ふこと。(二)ぬひとり。――・もん[縫紋](名)紋所を絲にて縫ひ出だしたるもの。――・もやう【−ヨウ】[縫模樣](名)縫とりたる模樣。++――・れう【−リヨウ】[縫殿寮](名)古昔、中務省に屬し、衣服裁縫の事を掌りし寮。
 
++ぬ・びる[野蒜](名)【植】「のびる」に同じ。
 
ぬ・ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[縫](他、は四)(一)絲を通したる針にて布帛などを刺(【サ】)し綴(【ツヅ】る。(二)ぬひものをなす。ぬひとりをなす。(三)ものとものとの間を曲折してとほる。
 
(ぬ・ぼく[奴僕](名)しもをとこ。つかひをとこ。下男。
 
++ぬ・ぼこ[瓊矛](名)たまを以て飾りたる矛。
 
ぬま[沼](名)泥土深き湖。――・え[沼江](名)泥土深き江。――・えび[沼蝦](名)【動】沼に産するえび・――・かぜ[沼風](名)沼に吹く風。――・がは【−ガワ】[沼川](名)泥土深き川。――・た[沼田](名)泥深き田。――・とらのを[沼虎尾](名)【植】櫻草科に屬する草、水邊に生ず、莖圓し、葉は柳に似細長くして互生す、夏の頃白色の花開く。(宿星菜)。――・はぎ[沼萩](名)【植】前條に同じ。――・みづ[沼水](名)沼にたまれる水。――・よもぎ[沼蓬](名)【植】「いぶきよもぎ」の一名。
 
ぬまづ・がき[沼津垣](名)細き割竹にてつくりたる網代垣。
 
++ぬみ・ぐすり(名)【植】(い)枸杞の一名。(ろ)芍藥の一名。
 
ぬめ[滑](名)(一)錢の背面の文字なき方。(二)敷居又は鴨居などの溝なきもの。(三)すべて表面に模樣又は凹凸なきもの。
 
ぬめ[※[糸+光](名)一種の絹布、光沢多し、多く書畫の用となすもの。
 
ぬめ・ごま[滑胡麻](名)【植】亜麻の一名。
 
ぬめ・らか[滑](名)「なめらか」に同じ。
 
ぬめ・らか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[滑](他、さ四)すべらす。
 
ぬめり[滑](名)(一)ぬめること。(二)粘液。「蝸牛の−」。
 
ぬめ・る【ら、り、る、る、れ、れ】[滑](自、ら四)ぬめらかなり。ぬら/\す。つる/\す。すべる。
 
{ぬら・くら(名、副)(一)滑かにしてとりおさへ難きさまにいふ語。(二)しまりなくなまけたるさまにいふ語。――・もの(名)ぬらくらするもの。なまけもの。
 
ぬら・す【さ、し、す、す、せ、せ】[濡](他、さ四)ぬるゝやうになす。ぬれしむ。
 
{ぬらつ‐く【か、き、く、く、け、け】(自、か四)ぬらくらす。
 
{ぬら・ぬら[滑滑](名、副)「ぬらくら」に同じ。
 
{ぬらり(名、副)次條に同じ。
 
{ぬらり。くらり(名、副)「ぬらくら」に同じ。
 
ぬり[塗](名)ぬること。又、ぬりたるさま。――・あしだ[塗足駄](名)漆塗のあしだ。――・いた[塗板](名)(一)漆塗の板、これにものをしるし拭ひてはまたしるし、幾度にても書き改むるやうつくりたるもの。ぬぐひいた。(漆簡、簡板)。(二)「こくばん」(黒板)に同じ。――・いへ【−イエ】[塗家](名)「ぬりや」に同じ。――・がさ[塗笠](名)漆塗の笠、古昔、婦女子の多くかぶりしもの。――・かへ【−カエ】【塗替】(名)ぬりかふること。――・かべ[塗壁](名)壁土を塗りたる壁。――・ぐすり[塗藥](名)皮膚に塗りつくる藥剤。(塗抹剤)。――・ごし[塗與](名)古昔、略儀に用ひたるためぬりの與。――・こ‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[塗籠](他、ま下二)うちにものをこめて塗る。++――・ごめ[塗籠](名)厚く土を塗りたる室、後世の土藏のごときもの。古く寢所とし、又家財を藏したりといふ。――・ごめ・どう[塗籠籐](名)全體を籐にてまきたる上を漆塗にしたる弓。{――こめる(他)「ぬりこむ」の訛。――・し[塗師](名)塗細工をする工人。――・した[塗下](名)漆塗の下地。――・た‐つ【て、て、つ、つる、つれ、てよ】[塗立](他、た下二)(一)奇麗にぬり飾る。(二){あつげしやうをなす。――・たて[塗立](名)塗りて未だ間を經(【へ】)ざること。{――たてる(他)「ぬりたつ」の訛。――・だる[塗樽](名)柄樽の一名。――・つ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[塗附](他、か下二)(一)ぬりてつか。なすりつく。ぬる。(二)自己の罪過を他人に負はす。かづく。――・つくろ‐ふ【−ツクロウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[塗繕](他、は四)塗物のきずを漆にて塗りてなほす。――・づくゑ[塗机](名)漆塗の机。{――つける(他)「ぬりつく」の訛。――・づる[塗弦](名)漆塗の弓づる。――・の[塗箆](名)漆塗にしたる箆。――・ばし[塗箸](名)漆塗の箸。――・ぼん[塗盆](名)漆塗の盆。――・もの[塗物](名)塗細工の器物。(塗器)。――・もの・し[塗物師](名)塗物の細工人。――・や[塗屋](名)外面を土にて塗りたる土藏造の家屋。――・ゆみ[塗弓](名)漆塗の弓。――・わん[塗椀](名)漆塗の椀。――・をけ[塗桶](名)漆塗の桶。(二)上に眞綿などを載せて引きのば器、漆塗にして形桶に似る。
 
++ぬりて[鐸」(名)「たく」(一)に同じ。
 
ぬりで[白膠木](名)【植】「ぬるで」に同じ。
 
ぬ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[塗](他、ら四)(一)物の面にすりてつく。物の表に延べつく。なすりつく。ぬりつく。(二)自己の罪過を他人に、負はす。かづく。(三){あつげしやうをなす。
 
ぬ‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[濡](自、ら下二)(一)水氣染みとほる。うるほふ、しめる。(二){情を通ず。
 
++ぬ‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】(自、ら下二)髪などおのづから解く。
 
ぬる・がね[温金](名)熱湯に浸(【ヒタ】)してあたゝめたる鍼(【ハリ】)、漢法にて眼科齒科などの外科療治に用ふももの。
 
ぬす‐し【く、し、き、けれ】(形、一)(一)稍やあたゝかし。少しくあつし。ぬくとし。(微温)。(二)敏捷ならず。のろし。にぶし。(遲鈍)。
 
++ぬる・たま[寐魂](名)夢の異稱。
 
ぬるで[白膠木](名)【植】漆樹科に屬する木、山野に生じ、高さ丈餘に達す、葉は漆樹に似て廣く粗(【アラ】)き鋸齒あり對生す、花は小形白色にして穗状花序をなす、果實は扁平にして毛あり、仁は藥用に供せらる、蟲のために生じたる葉の贅物を五倍子と稱し、藥用又は染料とす。(鹽膚木)。
 
{ぬる・ぬる(名、副)「ぬらくら」に同じ。
 
{ぬる・び(名)とろ/\び。
 
{ぬるまこ‐い【く、い、けれ】(形、一)ぬるし。
 
ぬるま・ゆ[微温湯](名)温度低き湯。ぬるき湯。
 
ぬるみ[微温](名)ぬるき氣味。
 
ぬる・む【ま、み、む、む、め、め】[微温](自、ま四)ぬるくなる。
 
++ぬる・む【ま、み、む、む、め、め】[微温](自、ま四)病によりて體温すゝむ。「ぬるみてなん病みける」。
 
{ぬるり(名、副)「ぬるぬる」に同じ。
 
(ぬ・れい[奴隷](名)しもべ。やつこ。
 
ぬれ・いろ[潤色](名)ぬれたる色。
 
ぬれ・えん[濡縁](名)雨戸の敷居の外にある縁側、よく雨にぬるゝよりいふ。
 
ぬれ・がみ[濡紙](名)水に濡れれたる紙。
 
ぬれ・がみ[濡髪](名)洗ひて未だ濕氣の去らぬ毛髪。
 
ぬれ・ぎぬ[衣](名)(一)濡(【ヌ】)れたる衣。ぬれごろも。(二)無實の罪過。(三)無根の浮名。
 
ぬれ・ごと[濡事](名)芝居にて、男女の痴情を演ずること。――・し[濡事師](名)濡事を演ずる役者。又、濡事に巧(【タクミ】)なる役者。
 
ぬれ・ごろも[濡衣](名)ぬれたる衣服。ぬれぎぬ。
 
ぬれ・て[濡手](名)水に濡(【ヌ】)れたる手・――・であは ぬれ手にて粟をつかむが如く、骨折らずに利益の得らるゝこと。
 
++ぬれ・ぬれ[濡濡](名、副)(一)ぬれながらなすさまにいふ語。(二)いたくぬれたるさまにいふ語。
 
{ぬれ・ねずみ[濡鼠](名)人の雨などにて全身濡(【ヌ】)れたるさまにたとへいふ語。
 
ぬれ・ば‐む【ま、み、む、む、め、め】[濡](自、ま四)ぬれて見ゆ。
 
ぬれ・ぶみ[濡文](名)いろぶみ。
 
ぬれ・ボトケ[濡佛](名)屋根無き所に安置せる佛像。(露佛)。
 
ぬれ・み[濡身](名)ぬれたる身體。
 
{ぬれる(自)「ぬる」の訛。
 
 ね
 
ね 齒的鼻音N即ち舌端を裏口蓋の前部に觸れしめて發する鼻音と、母音「エ」との綴音。
 
ね[ね](名)(一)植物の莖の下部にして養分を吸收する所。(「こん」の條參照)。(二)もと。おこり。はじまり。(三)もとどり。「髪の−」。(四)すべて立ち又は生(【ハ】)えてあるものゝ着處。「齒の−」。(五)腫物の下部の固き部分。「−が張る」。
 
ね[峯](名)みね。「筑波−」。「富士の高−」。(嶺)。
 
ね[音](名)おと。こゑ。「雁が−」。
 
ね[直](名)あたひ。ねだん。(價値)。
 
ね[鼠](名)【動】「ねずみ」に同じ。
 
ね[子](名)(一)十二支の第一。(二)時間の名、即ち夜の十二時。(三)方角の名、即ち正北の方。
 
ね[寐](名)ねむり。「−が足らぬ」。(寢)。
 
++ね[哭](名)聲を立てゝ泣くこと。――になく 聲を出して泣く。――をなく 前條に同じ。
 
++ね[姉](名)「あね」に同じ。
 
{ね(感)匂調を助くるに用ふる感動詞。「仕事を濟まして−それから行きませう」。
 
ね・あがり[直上](名)あたひの高くなること。物價の騰貴。
 
ねあがり・まつ[根上松](名)根の高く地上に現はれたる松。(根顯松、黄山松)。
 
{ねあきる(自)「ねあく」の訛。
 
ね・あ‐く【か、き、く、く、け、け】[寐厭](自、か四)あき足る程ねむる。
 
ね・あげ[直上](名)あたひを高くすること。物價を騰貴せさすること。
 
ね・あせ[寐汗](名)身體の衰弱せる時などに、睡眠中おのづから出づる汗。(盗汗)。
 
++ね・あはせ【−アワセ】[根合](名)古昔の遊戯、菖蒲の根の上に歌を記し、根の長短を引き合せて勝負せしもの。
 
ね・あはせ【−アワセ】[音合](名)雉字などの地震に感じて鳴くこと。
 
{ねい(感)應答の聲。「はい」に同じ。
 
(ねい・かん[佞奸](名)うはべはやさしくして心ねぢけてあること。表面は正直に見えて内心のよこしまなること。又、其人。(佞姦)。
 
ね・いき[寐息](名)睡眠中の呼吸。「−を窺ふ」。
 
(ねい・けい・じ[寧馨兒](名)斯のやうな男子。「何物老嫗生2−」。
 
(ねい・さい[寧歳](名)安穩なるとし。やすらかなるとし。
 
(ねい・さん[姉樣](名)(一)「あね」に同じ。(二){未だ嫁せざる年頃の女子の稱。又、茶屋奉公する女子の稱。(三){藝者などが、先輩の女子をさしていふ稱。{――・かぶ[姉樣株](名)「あねえかぶ」に同じ。{――・かぶり[姉樣冠](名)手拭などを額上の左右に角立たせて冠ぶること。あねさんかぶり。
 
(ねい・じつ[寧日](名)安穩なる日。やすらかなるひ。
 
(ねい・しや[佞者](名)(一)佞姦なる人。(二)辯才ありて心正しからざる人。「岐故惡2夫−1」。
 
(ねい・しん[佞臣](名)佞奸なる臣下。
 
(ねい・じん[佞人](名)佞奸なる人。ねぢけびと。
 
ねい・す【せ、し、す、する、すれ、せよ】[佞](自、さ變)へつらふ。おもねる。
 
(ねい・せい[寧靜](名)やすらかなること。しづかなること。
 
(ねい・び[佞媚](名)へつらひこぶること。
 
(ねい・べん[佞辯](名)心ねぢけてくちまへよきこと。佞奸なる辯舌。
 
ね・いも[根芋](名)芋の芽ばえを食用とするときの稱。
 
ね・いり[根入](名)根の地中に入りてある長さ。
 
ねいり・こ‐む【ま、み、む、む、め、め】[寐入込](自、ま四)よくねいる。
 
ねいり・ばな[寐入端](名)寐入りてまだほどへぬこと。
 
ぬ・い‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[寐入](自、ら四)(一)よく寐る。熟睡す。(二)すたれやむ。(三)しづまりやむ。
 
ね・いろ[音色](名)【理】音の銚子等しく強さ等しといへどよく發音體の種類を識別せしむる性質、發音體の音を發するとき原音に伴ふ強さの小さき陪音の配合によりて音色を異にす。
 
(ねう【ニヨウ】[尿](名)腎臓より分泌し尿道より排出せらるゝ液、一種の臭氣を有し、透明黄色なり。――・くわん[尿管](名)「ねうだう」に同じ。――・そ[尿素](名)【化】尿中より得る溶(【ト】)け易き無色針状の結晶體、其純粋なる水溶液は變化せざれども、尿中にありては、尿の腐敗する際に變化して「アンモニア」等を生ず。――・だう【−ドウ】[尿道](名)尿を膀胱より體外に排泄する管。(尿管)。
 
++ねう‐ず【ぜ、じ、ず、ずる、ずれ、ぜよ】[念](他、さ變)「ねんず」に同じ。
 
(ねう・ぜつ【ニヨウ−】[饒舌](名)「ぜうぜつ」に同じ。
 
ね・うち[直打](名)(一)あたひを定むること。ねだんをきむること。(評價)。(二)あたひ。ねだん。(估値、料估、估價)。(三)ひん。品格。「−の無い人」。
 
++ねう・ねう【ニヨウニヨウ】(名)猫のなく聲。
 
(ねう・はち【ニヨウ−】[※[金+堯]※[金+拔の旁]](名)寺院にて用ふる樂器、響銅(【サハリ】)にて作り、形銅拍子に似て大なり。
 
{ねえ・さん[姉樣](名)「ねいさん」に同じ。
 
ね・おき[寐起](名)(一)目覺めて起くること。(二)目覺めて起きてまだ間のなきこと。(三)寐ると起くると。おきふし。
 
++ね・お‐く【き、き、く、くる、くれ、けよ】[寐起](自、か上二)目さめておく。
 
++ね・おび‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[寐惚](自、ら下二)「ねぼく」に同じ。
 
ね・がけ[根掛](名)婦人の髻(【モトドリ】)に掛くる装飾品。(絞絹)。
 
ねかし・もの[寐物](名)商品などの容易に賣れずして久しく貯へ置きたるもの。
 
ねか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】(他、さ四)(一)寐るやうになす。いぬるやうにす。(二)横さまに倒す。たふす。(三)商品又は資金などを活用せずに手もとにおく。「品を−」。(四)麹を暖室に入れて黴だゝしむ(※[歹+音])。
 
{ねがはくなら【ネガワク−】[願](副)次條に同じ。
 
ねがはく・は【ネガワクワ】[願](副)願ふ所は。望む所は。
 
ねがは‐し【しく、し、しき、しけれ】[願](形、二)ねがふ所なり。のぞまし。
 
ねがひ【ネガイ】[願](名)(一)ねがふこと。ねがふ所。(二)ねがひしよ。ぐわんしよ。――・い‐づ【で、で、づ、づる、づれ、でよ】[願出](他、た下二)官にねがひのすぢを申出づ。ぐわんしよを差出す。――・いで[願出](名)ねがひいづること。――・ごと[願事](名)ねがふ事柄。――・さげ[願下](名)(一)願出たる事の取消を願ふこと。(二)一旦のぞみたる事を廢止にすること。――・しよ[願書](名)「ぐわんしよ」に同じ。――・で「願出](名)ねがひでること。{――・でる【で、で、づ、づる、づれ、でよ】[願出](他、た下一)「ねがひいづ」に同じ。――・て[願手](名)願ふ人。――・にん[願人](名)前條に同じ。――・ぬし[願主](名)前條に同じ。――・の・いと[願絲](名)七月七日に織女星を祭るに供する絲。――・ぶみ[願文](名)ぐわんしよ。
 
ねが‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[願](他、は四)(一)こひ望む。こひ求む。こふ。(二)願を掛く。祈願す。いのる。(三)目的とす。期す。(四)うらやむ。ほしがる。(五)官に要求す。ぐわん書を差出す。
 
ね・がへり【−ガエリ】[寐返](名)(一)寐ねわたる體の向きをかふること。(二)敵につくこと。(三)約を破ること。――をうつ ねがへりをなす。
 
ね・がへ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[寐返](自、ら四)ねがへりをなす。
 
{ね・から(副)(一)もとより。はじめより。(二)更に。一向に。
 
ねぎ[葱](名)【植】百合(【ユリ】)科に屬する草。葉は圓形中空にして長く、末端尖りて臭氣あり、夏の頃、花梗を抽出して小形白色の花開く、廣く各所に栽培せられ食用に供せらる。(青葱)。
 
ねぎ[禰宜](名)(一)神主の下役。神官。(覡、廟祝)。(二)判任官待遇の神官、宮司の命を受けて祭事及事務に從事するもの。
 
++ねぎ・ごと[祈事](名)ねがひごと。ぐわんがけ。
 
ね・ぎし[根岸](名)(一)山の麓の土地。(二)砂質の上品なる壁土。
 
ね・ぎたな‐し【く、し、き、けれ】(形、一)いぎたなし。
 
ね・ぎは【−ギワ】[寐際](名)眠につくきは。ねしな。
 
{ねぎ・ま(名)一種の料理、葱と、まぐろの肉とを合はせて煮たるもの。(東京地方の方言)。
 
ねぎ・ら‐ふ【−ラウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[慰勞](他、は四)勞を謝す。勞を慰む。
 
{ねぎり・こぎり(名、副)いろ/\といひなしてねぎるさまにいふ語。
 
{ねきり・はきり[根切葉切](副)あるかぎり。ありたけ。悉皆。「−これきり」。
 
ねきり・むし[根切蟲](名)【動】甲蟲類の仔蟲。ぢむし。(〓賊、※[虫+子]※[虫+方]、※[矛/〓]、※[務の力が虫])。
 
{ね・ぎ‐る【ら、り、る、れ、れ】[直切](他、ら四)價を減ぜしむ。ねだんをひかす。(折價)。
 
++ね・ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[祈](他、か四)祈願す。ねがふ。
 
++ね・ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】(他、か四)慰勞す。ねぎらふ。
 
++ね・ぐさ‐し【く、し、き、けれ】[寐臭](形、一)ねたる樣子なり。ねたるらし。
 
{ね・くさ‐る【ら、り、る、れ、れ】[寐腐](自、ら四)久しくいねて程をすごす。
 
ネク・タイ(名)「ネックタイ」に同じ。
 
++ね・くた‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[寐腐](自、ら下二)寐たるによりてしどけなくなる。
 
++ね・くたれ[寐腐](名)ねくたること。――・おき[寐腐起](名)ねくたれ姿におき出づること。++――・がみ[寐腐髪](名)寐たるによりて亂れたる髪。ねみだれがみ。++――すがた[寐腐姿](名)ねくたれたるすがた。
 
ね・くび[寐首](名)睡(【ネム】)れる人の首を斬ること。
 
ね・ぐら[塒](名)鳥の寢る處。とや。――・どり[塒鳥](名)とやにある鳥。ねとり。
 
ね・くら‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[寐暮](他、さ四)一日をねてくらす。
 
ね・ぐる‐し【しく、し、しき、しけれ】[寐苦](形、二)眠に就(【ツ】)きにくし。いぬるに苦し。(寢難)。
 
ね・ぐわん[寐棺](名)死骸を横臥せしめているゝ長き造りの棺。(寢棺)。
 
ね・こ[猫](名)(一)【動】食肉類中猫科に屬する小獣、多く人家に飼養せらる、頭圓く尾長し、體躯は狹長にして屈伸自在なり、毛色種々あり(夜間は瞳圓大なれども日中には竪針状となる、よく鼠を捕ふ。(二){藝者の異稱。(三){知りて知らぬさまをなすこと。又、其人。(四){本性をつゝみかくして平凡をよそほふこと。又、其人。(五){土製の「アンくわ」の稱。(東京地方の方言)。――を かぶる 知りて知らぬふりをなす。又、本性をつゝみかくして平凡なるさまをす。
 
{ね・こ[寐粉](名)ふるびて役に立たぬ粉。
 
ねこ・あし[猫脚](名)(一)膳などの脚の上膨(【フク】)れ中窄(【セマ】)くして下圓きもの。(二){脚力強靱にして容易に倒れざること。
 
{ねこ・おもて[猫面](名)ねこの如き短かきかほ。(※[舌+頁])。
 
{ね・こか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[寐轉](他、さ四)(一)横にしてころがす。(二)ねたるまゝにすておく。
 
ね・こぎ[根扱](名)樹木を根より引拔くこと。
 
ね・こ‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[根扱](他、か四)ねこぎにす。
 
ねこ・ぐさ[猫草](名)【植】「ぜがいさう」に同じ。
 
ねこ・ぐるま[猫車](名)坂路にて荷物を運ぶ車。
 
ねこ・ご[猫兒](名)猫の兒。
 
ね・ごこち[寐心地](名)ねごゝろ。
 
ね・ごころ[寐心](名)睡眠のこゝろもち。ねたるこゝろもち。
 
ね・ござ[寐蓆](名)敷きて寐るござ。(臥蓙、蒲蓆)。
 
ねこ・ざめ[猫鮫](名)【動】「さざえわり」に同じ。
 
ね・こじ[根掘](名)ねこずること。
 
++ね・こ‐ず【じ、じ、ず、ずる、ずれ、じよ】[根掘](他、さ上二)根のまゝ掘り取る。
 
ねこ・ぜ[猫背](名)頸の前に出でゝ背の高く後に聳えたること,又其人。
 
{ね・こそげ(副)こと/”\く。のこらず。
 
ねこ・だ(名)藁にてつくりたる席。つかなみ。
 
ね・ごと[寐言](名)(一)睡眠中に發する言語。(寐言、噬言)。(二){つまらぬ言。役にたゝぬ言。
 
ねこ・なで・ごゑ[猫撫聲](名)やさしく媚(【コ】)ぶるごとき聲。やさしくあまゆる如き聲。
 
{ねこ・の・め[猫目](名)猫の目の如くしば/”\物事の變ずること。
 
{ねこ・の・ひたひ【−ヒタイ】[猫額](名)(一)せまきひたひ。(二)せまき場所。
 
{ねこ・ばば[猫糞](名)ものをひろひむ取りて、知らぬ顔して居ること。
 
ねこ・びたひ【−ビタイ】[猫額](名)ねこのひたひ。
 
++ねこま[猫](名)「ねこ」の古稱。(野猫)。
 
ねこ・ま[猫間](名)扇の親骨のすかしぼりの穴。
 
ねこ・また[猫股](名)猫の年老いて尾二岐に分かれ、能く化(【バ】)くと稱せらるゝもの。(魔、金花猫)。
 
ね・ごみ[寐込](名)寐て居る最中。「−を襲ふ」。
 
{ね・こ‐む【ま、み、む、む、め、め】[寐込](自、ま四)ね入る。熟睡す。
 
ね・ごめ[根込](副)根もろともに。
 
ね・ごろ[直頃](名)價と物品と相應せること。餘り高くもやすくもなきこと。
 
ねごろ・ぬり[根來塗](名)鎌倉時代に、紀伊國根來寺より塗り出したる漆器、朱漆に黄色を帶びて刷毛目あるもの。
 
ね・ころ‐ぶ【ば、び、ぶ、ぶ、べ、べ】[寐轉](自、は四)横さまに臥す。
 
ね・ごゑ[寐聲](名)ねむさうなる聲。ねぼけごゑ。
 
++ね・さう【−ソウ】[年星](名)陰陽家にて、人の本命の屬星を祭ること。
 
ね・ざう【−ゾウ】[寐相](名)寐たるすがた。ねずまひ。ねざま。(寐樣)。
 
++ね・さうぞく【−ソウ−】[寐装束](名)寐るときの装束。
 
ね・さがり[直下](名)ねだんのやすくなること。物價の低落。
 
ね・さげ[直下](名)直段を減じ下ぐること。物價を低落せさすること。ねびき。
 
ね・ざけ[寐酒](名)寐る時に飲む酒。
 
ね・ざさ[根笹](名)(一)【植】笹の一種。根のよく蔓延して繁茂するもの。(千里竹)。(二)紋所の名、根笹のさまを描(【エガ】)きたるもの。
 
ね・ざし[音差](名)音いろ。
 
ね・ざし[根差](名)(一)根ざすこと。(二)そだち。素性。
 
ね・ざす【さ、し、す、す、せ、せ】[根差](自、さ四)(一)根差し出づ。根つく。(二)原因す。もとづく。(三)兆候あり。きざす。
 
ね・ざま[寐樣](名)ねてゐるさま。ねざう。
 
ね・ざ‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[寐覺】(自、ま下二)睡眠中ふと目覺む、「ねざめて聞けば」。
 
ね・ざめ[寐覺](名)ねざむること。――。ぐさ[寐覺草](名)【植】》荻の異稱。――・づき[寐覺月](名)陰暦九月の異稱。――・どり[寐覺鳥](名)【動】鷄の異稱。
 
ね・しづま‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[寐靜](自、ら四)ねむりに就(【ツ】)きてしづかになる。
 
ね・しな(名)ねぎは。
 
ね・しま(名)ねぎは。
 
ね・じめ[音締](名)琴・三味線などの絃を絲卷に締めて其音を出だすこと。ねいろの締まりてあること。
 
ね・じめ[根締〕(名)(一)植租ゑたる樹木の根をつきかたむること。(二)生花にて、花の根もとに添へて、固めとする草花などの稱。
 
ね・しろ[根白](名)根の白きこと。――・ぐさ[根白草](名)【植】芹の異稱。
 
ね・じろ[根城](名)根據となす城。(牙城、本城)。
 
ねず[杜松](名)名【植】「むろ」に同じ。
 
ねず[鼠](名)【動】「ねずみ」の略言。
 
ね・ず[不寐](名)よもすがら寐ざること。
 
{ねすぎる(自)「ねすぐ」の訛。
 
ね・す‐ぐ【ぎ、ぎ、ぐ、ぐる、ぐれ、ぎよ】[寐過](自、か上二)定時より久しく寐ぬ。久しく寐て時を失す。
 
ね・すご‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[寐過](自、さ四)前條に同じ。
 
ねず・なき[鼠啼](名)「ねずみなき」に同じ。
 
ねず・の・ばん[不寐番](名)ねずばん。
 
ねず・ばしり[鼠走](名)「ねずみばしり」に同じ。
 
ねず・ばん[不寐番](名)よもすがら寐ずして番をすること。又、其人。
 
ね・ずまひ【−ズマイ】[寐住](名)ねざう。ねざま。
 
ねず・まひ【−マイ】[首鼠](名)ためらふこと。しゆそ。
 
ねずみ[鼠](名)【動】(一)齧齒類中鼠科に屬する小獣、普通毛色は淡黒にして青色を帶ぶ、尾は細長にして毛なし、犬齒なく、門齒は上下共に二個ありて琺瑯質を被り形状鑿の如く囓噬に適し、よく食物を潜食し器具を損傷す、生殖力極めて大なり、黒死病の媒介をなすことあり。(社君、家鹿)。(二)「ねずみいろ」の略言。――・いらず[鼠不入](名)食物を入れ置く戸棚、鼠の入るを防ぐもの。――・いろ[鼠色](名)青色を帶びたる淡黒色。にびいろ。灰色。(黝色、青黒色)。――・おとし[鼠穽](名)鼠をおとし入れて捕ふる器。ねずみとり。(捕鼠器)。――・かべ[鼠壁](名)鼠色に塗りたる壁。――・がへし【−ガエシ】[鼠返](名)坂にてつくり土藏の入口などに設けて、鼠の人るを防ぐもの。――・がみ[鼠紙](名)鼠色の漉(【ス】)きがへし紙。――・げ[鼠毛](名)馬の毛の鼠色なるもの。――・ごめ[鼠米](名)鼠の臭氣を帶びたる米。――・ころし[鼠殺](名)礬石にて製したる毒藥、鼠を殺すに用ふるもの。(鼠毒、礬石)。――・だけ「鼠茸](名)【植】茸の一種、朽木又は老樹などに生ず、菌傘・菌柄共に鼠色なるもの。――・ちや[鼠茶](名)鼠色を帶たる茶色。――・とり[鼠捕](名)(一)「ねずみおとし」に同じt。(二)「ねずみころし」に同じ。(三)【動】青大將の一名、其人家に入りて鼠などを捕り食ふよりいふ。――・なき[鼠啼](名)(一)鼠の啼く聲。(二){口をすぼめて鼠の啼聲に類する音を出すこと、多くは花柳社會などにて、相思の男女が逢瀬をよろこびなどするときになすもの。++――・ばしり[鼠走](名)障子又は戸などの上の横木。――・はなび[鼠花火](名)小兒の玩弄物、三寸許の蘆(【アシ】)の管に火藥を込めたるもの、火をつくれば、鼠の啼き聲に似たる音を發して地上を走り廻る。――・ばんきり[鼠半切](名)鼠色の半切紙。――・ばんし[鼠半紙](名)鼠色の半紙。――・もち[鼠梓木](名)【植】木犀科に屬する木、葉は椿に似たる厚き革質の全邊葉にして常緑なり、花冠は白色にして裂方は外推す、花梗は少しく毛を生ず、觀賞用として栽培せらる。(女貞、蝋樹)。
 
++ね・すり[根摺](名)古昔、紫草の根にて、衣服を染めたること。++――・の・ころも[根摺衣](名)紫草の根を摺りて染めたる衣。
 
++ねず・を[音助緒](名)鷹に鈴を結びつくる緒。
 
ね・せうべん【−シヨウ−】[寐小便](名)睡眠中に床の上に小便すること。いびたり。よっぱり。
 
{ねせ・おこし[寐起](名)(一)ねかし又はおこすこと。(二)介抱。看護。(三)人を進退し又は榮枯せさすること。
 
{ねせ・もの[寐物](名)ねかしもの。
 
ね・ぜり[根芹](名)根を食用とする芹。
 
{ね‐せる【せ、せ、せる、せる、せれ、せよ】[寐](他、さ下一)「ねかす」に「同じ。
 
ね・そこな‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[寐損](自、は四)(一)ねそびれる。(二)寐る時期を失す。
 
{ね・そび・れる【れ、れ、れる、れる、れれ、れよ】(自、ら下一)寐んとして
 
 寐つかれず。(失眠)。
 
ね・だ[根太](名)ゆかの下に亙(【ワタ】)したる横木。――・いた[根太板](名)根太の上に張る板。
 
ね・だい[寐臺](名)臥床となす臺、机の如くにして長大なり。(臥榻)。
 
ね・だうぐ【−ドウ−】[寐道具](名)寐る時に用ふる道具、夜具・布團・枕の類。
 
++ねた・け‐し【く、し、き、けれ】[妬](形、一)ねたまし。
 
ねた・し【く、し、き、けれ】[妬](形、一)(一)ねたむべし。ねたまし。(二)にくし。(三)うらやまし。
 
ねた・ば[寐刃](名)切味の鈍りたる刀。「−を合はす。」
 
ね・だふし【−ダオシ】[根倒](名)根ごめ拔きて例すこと。
 
ねたま‐し【しく、し、しき、しけれ】[妬](形、二)ねたむべし。――がほ【−ガオ】[妬顔](名)ねたましげなる顔つき。
 
++ねたま‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[妬](他、さ四)ねたましと思はしむ。
 
ねたみ[妬](名)ねたむこと。にくみ。うらみ。――・ごころ[妬心](名)ねたむこゝろ。しっとしん。
 
ねた‐む【ま、み、む、む、め、め】[妬](他、ま四)(一)羨み憎む。にくむ。(二)憤り恨む。うらむ。
 
ね・だやし[根絶](名)根本まで悉く去り盡くすこと。殘りなく絶やすこと。
 
{ねだり[強請](名)ねだること。
 
{ねだ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[強請](他、ら四)強(【シ】)ひて請ふ。押して求む。
 
ね・だん[直段](名)あたひ。ねうち。
 
ねぢ[捩子、螺旋](名)【理】圓〓に隆起部を斜に捲(【マ】)きつけたる形のものとこれが恰も嵌入し得るやうに空筒に斜に凹條を刻み込みたるものとより成る、前者を雄ねぢといひ後者を雌ねぢといふ、重き物體を引上げ或は壓搾し、若しくは二つの物體を連接するに用ひらる。
 
ねぢ・あ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[捩開](他、か下二)ねぢてひらく。
 
ねぢ・あ‐ぐ【げ、げ、ぐ、ぐる、ぐれ、げよ】[捩上](他、か下二)ねぢて上へあぐ。
 
{ねぢあける(他)「ねぢあく」の訛。
 
{ねぢあげる(他)「ねぢあぐ」の訛。
 
ねぢ・あひ【−アイ】[捩合](名)ねぢあふこと。
 
ねぢ・あ‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[捩合](自、は四)(一)互に捩づ。(二)格闘す。くみうちす。
 
ねぢ・き[綟木](名)【植】石南科に屬する木、山中に生ず、幹捩れて直からず、葉は互生す、花は筒状白色なり。枝を燒きて炭とし漆塗の磨出に用ふ。
 
ねぢ・き‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[捩切](他、ら四)ねぢて切り斷つ。
 
ねぢ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[拗](自、か下二)(一)曲がりくねる。ゆがみまがる(拗曲)。(一)心ひがむ。心すなほならず。(佞、捩戻)。
 
ねぢ・くぎ[捩子釘](名)脚部の雄ねぢになりたる釘、これをねぢて物に嵌入す。(螺釘)。
 
ねぢ・くび[捩首](名)首をねぢ切ること。(※[手偏+丑拔頭)。
 
{ねぢ・く‐る【ら、り、る、る、れ、れ】(他、ら四)ねぢまはす。
 
{ねぢ・く‐れる【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】(自、ら下一)ねぢれまがる。ねぢく。
 
ねぢけ・がま‐し【しく、し、しき、しけれ】(形、二)心ひがみたるやうなり。
 
++ねぢけ・びと[佞人](名)心のねぢけたる人。心のすなほならざる人。
 
{ねぢける(自)「ねぢく」の訛。
 
ねぢ・こ‐む[ま、み、む、む、め、め][捩込](他、ま四)(一)ねぢて中へ入る。(二)無理に押し入る。(三)先方の失言をおさへてせめ詰(【ナジ】)る。
 
ねぢ・ぬき[捩子拔](名)ねぢを拔く道具。
 
ねぢ・ばな[捩花](名)【植】「もぢずりぐさ」に同じ。
 
ねぢ・ふ‐す【せ、せ、す、する、すれ、せよ】[捩伏](他、さ下二)腕を捩ぢて神へ伏す。
 
{ねぢふせる(他)前條の訛。
 
ねぢ・まはし【−マワシ】[捩子廻](名)捩子を動かしまはす道具。
 
ねぢ・む‐け【か、き、く、く、け、け】[捩向](自、か四)體をねぢて其方へ向く。
 
ねぢ・む‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[捩向](他、か下二)ねぢて其方へ向かす。
 
{ねぢむける(他)前條の訛。
 
{ねぢ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[捩](他、ら四)「ねづ」に同じ。(拗)。
 
{ねぢれ[拗](名)ねぢれること。ねぢれたる度合。
 
{ねぢ‐れる【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[拗](自、下一)くねりまがる。ねぢく。「ねぢれた飴」。
 
(ねつ[熱](名)(一)【理】温暖の感覺を與ふる本源、昔時はこれを一の物質とし、此物質を多量に含むものは温度高く少なきものは温度低しとなしたりしが、物體を摩擦するが如く仕事をなして熱を得ることの確(【タシカ】)められしより、熱は物體分子の運動の「エネルギー」なりと定めらる。(二)病氣のため體温の亢進せるもの。(三)精神の注ぎ向ふこと。意氣のふるひおこること。(四)のぼせ。逆上。(五)あつきこと。暑氣。(六){いきほひ、氣※[餡の旁+炎]。「−を吹く」。
 
ね‐づ【ぢ、ぢ、づ、づる、づれ、でよ】[捩](他、た上二)くねり曲がらしむ。ゆがめまはす。ねぢる。「鎖を−」。
 
(ねつ・がく[熱學](名)【理】熱の本性に就きて研究する科學。 
 
{ねっから(副)(一)「ねから」に同じ。(二)極めて。いと。
 
ね・つき[寐附](名)ねつくと。
 
(ねっき[熱氣](名)(一)あたゝかき氣。あつき氣。(二)ふるひおこる意氣。興起する精神。
 
ね・つぎ[根續](名)柱などの根の朽ちたる部分を取り去りて、他の材にて補ふこと。
 
ね・つ‐く【か、き、く、く、け、け】[寐附](自、か四)ねむりに就く。寐入る。
 
ね・づ‐く【か、き、く、く、け、け】[根附](自、か四)根生ず。
 
ネック・タイ[Neck‐tie](名)えりかざり。
 
(ねつ・け[熱氣](名)體温の平常より高きこと。
 
ね・つけ[根附](名)巾着などの緒の端につけて帶に挾みとむるもの。――・どけい[根附時計](名)「たもとどけい」の一名。
 
(ねっ・けつ[熱血](名)激昂せる意氣。奮起せる精神。――・だんし[熱血男子](名)よく物事に激昂奮起する男子。
 
{ねっ・こ[根子](名)木の切株。
 
(ねっ・こく[熱國](名)熱帶地方の國。
 
(ねつ・ざう[捏造](名)「でつざう」に同じ。
 
ねつ・さまし[熱醒](名)亢進せる體熱をさますに用ふる藥剤。解熱剤。
 
{ねつ‐し【く、し、き、けれ】(形、一)(一)綿密に過ぐ。くだ/”\し。しつこし。(二)丁寧なり。綿密なり。
 
(ねっ・し[涅齒](名)「でつし」に同じ。
 
(ねっ・しや[熱砂](名)あつきすな。やけたるすな。
 
(ねっ・しん[熱心](名)(一)其事物に精神をそゝぐこと。(二)こること。ふけること。
 
ねっ‐す【せ、し、す、する、すれ、せよ】[熱](自、さ變)(一)熱生ず。あつくなる。(二)のぼす。もだゆ。(三)熱心となる。
 
ねっ・す【せ、し、す、する、すれ、せよ】。[熱](自、さ變)熱をおこさしむ。あたゝむ。わかす。やく。むす。
 
(ねっ・せい[熱性](名)よく激昂する性質。よく奮起する性質。
 
(ねっ・せん[熱線](名)【理】熱の輻射する方向、轉じて輻射によりて達する熱、太陽出でゝ暖を感ずるは、熱線の傳達による、日光の「スペクトル」を鋭敏なる寒暖計にて檢するに、赤最も温度上り、黄より青に至るに從ひて温度次第に低く、紫に至りては殆ど寒暖計に感ぜず、されど赤より以外に、尚よく温度上り其作用は殆ど光輝部と等しき長さの處に及ぶ、故に熱戦は光輝線に比し、屈折率の更に小なる輻射線なり。
 
(ねっ・たい[熱帶](名)(一)【地】南北回歸線間の稱、地球上の温度最も高き部分にして、一年間に太陽を頭上に見ること二回あり、晝夜長短の差なく、四季の變は殆どこれを感ぜず。(二)【植】森林植物帶一、北緯二十七度以南の稱。――・しよくぶつ[熱帶植物](名)【植】熱帶に生ずる森林植物、榕樹・椰子・※[木+光]榔等これなり。
 
(ねっ・たう【−トウ】[熱湯](名)にえたつゆ。にえゆ。
 
(ねっ・たう【−トウ】[熱閙](名)人のこみあひてさわがしきこと。人のあつまりあひてにぎはしきこと。
 
(ねっ・ち[熱地](名)熱帶の地。あつき所。
 
(ねっ・ちゆう[熱中](名)(一)心のうれひもだゆること。(二)其物事に心を專らそゝぐこと。
 
(ねつ・でんき[熱電氣](名)【理】異種の金屬二つを接合するとき、其二つの接合部の温度異なるとき生ずる電氣。
 
(ねつ・でんたい[熱電堆](名)【理】蒼訛と「アンチモン」とを交互に數多折り曲げて絡(【ツナ】)ぎ合せたるもの、其兩端を電流計に絡ぎて輸道を作れば、各片の絡目の一面と他面との温度異なるとき電流通ずるにより、微小の温度の差をも計ることを得。
 
(ねつ・でんりう[熱電流](名)【理】熱電氣の流動。
 
(ねつ・ど[熱度](名)(一)熱の割合。(二)熱心なる度合。(三)のぼせてゐる度合。
 
(ねつ。なう[熱悩](名)くるしみなやむこと。もだゆること。
 
(ねつ・ば[熱罵](名)いたくのゝしること。はげしくのゝしること。
 
(ねつ・ばう【−ボウ】[熱望](名)心一ぱいに思ひのぞむこと、熱心に希望すること。
 
(ねつ・びやう【−ビヨウ】[熱病](名)體温のはげしき疾病、即ち窒扶斯の類。
 
(ねっ・ぷう[熱風](名)あつきかぜ。
 
(ねつ・へん[熱變](名)【鑛】鑛物が熱のために變化すること。
 
ね・づもり[値積](名)値をつくること。評價。
 
(ねつ・ようりやう【−リヨウ】[熱容量](名)【理】物體の温度を一度だけのぼすに要する熱量。
 
ねづよ‐し【く、し、き、けれ】[根強](形、一)根本固くして動かず。ねもとしつかりしてあり。
 
(ねつ・りやう【−リヨウ】[熱量](名)【理】熱の多少の稱、熱量は物體の温度の上昇を以て計る、通常一※[瓦+千](【キログラム】)の水を攝氏一度だけ温(【アタタ】)むるに要する熱量を單位とし、これを「カロリー」といふ。――・けい[熱量計](名)熱量を計る器、通常用ふるものは金屬の器にして、これに水を入れたるものなり、温度高きものを此器中に入れ、其水の温度の上昇を見て、入れたる物體の放出したる熱量を知る。
 
(ねつりよく・がく[熱力學](名)熱と仕事との關係に就いて論ずる科學。
 
(ねつ・れつ[熱裂](名)【鑛】熱のために鑛物の裂くること。
 
ねつ・れつ[熱烈](名)精神ふるひおこりて勢はげしきこと。
 
ね・ていたう【−トウ】[寐抵當](名)其商品を利用せずに抵當とすること。
 
ね・ても・さめ・ても[寐寤](副)つねに。絶えず。
 
++ね・ど[寐所](名)「ねどころ」に同じ・
 
ね・どこ[寐所](名)寢る床。(臥床)。
 
ね・どこ[寐所](名)寐る所。ねま。ねや。(寢所)。
 
ね・どころ[寐所](名)前條に同じ。
 
ね・どころ[根所](名)ねもと。ね。
 
{ね・どひ【−ドイ】[根問](名)根もとを問ひたゞすこと。くはしくきはめとふこと。――・は・どひ【−ドイ】[根問歯問](名、副)根本より枝葉に至るまで問ふさまにいふ語。のこりなく全體を問ひきはむるさまにいふ語。
 
ね・とぼ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[寐惚](自、か下二)「ねぼく」に同じ。
 
ね・とぼけ[寐惚](名)「ねぼけ」に同じ。{――る(自)「ねとぼく」の訛。
 
ね・とり[寐鳥](名)ねぐらに寐て居る鳥。ねぐらどり。(宿鳥、※[俘の旁+鳥]。)
 
ね・とり[音取](名)奏樂する以前に、豫め樂器の調子を合はすること。
 
{ね・と‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[寐取](他、ら四)他人の夫又は情夫と通ず。
 
++ね・な‐く【か、き、く、く、け、け】[音泣](自、か四)聲立てゝ泣く。
 
ねなし・かづら[根無葛](名)【植】旋花科に屬する寄生植物、纏繞莖にして葉は緑色なり、夏の末、小形白色の花開く。
 
ねなし・ぐさ[根無草](名)(一)【植】萬年草の一名。(二)浮きたること。又、根のなきこと。
 
ねなし・ごと[根無言](名)根據のなき言。つくりごと。虚言。(妄語、訛言)。
 
++ね・ぬなは【−ヌナワ】[根蓴](名)【植】「ぬなは」に同じ、根の長きにつきていふ。
 
++ね・の・くに[根國](名)よみのくに。よみぢ。
 
ね・の・ひ[子日](名)(一)十二支の子にあたる日、大黒天の縁日とす。(二)「ねのひのあそび」に同じ。++――・づき[子日月](名)正月の異稱。++――・の・あそび[子日遊](名)古昔、正月の初めの子の日に、人々野に出で小松を引きて遊び、千代を祝ひしこと。++――・の・ころも[子日衣](名)古昔、子日遊に着せし衣。
 
ね・のび[寐伸](名)寐てゐて手足を伸【(ノ)】ばすこと。
 
ね・の・ほし[子星](名)北極星。
 
ねば[粘](名)「ねばつち」の略言。――・わた[粘綿](名)「まわた」に同じ。
 
{ね・ばう【−ボウ】[寐坊](名)おそくまでよく寐てゐる人。
 
ねば‐し【く、し、き、けれ】[粘](形、一)ねばりけ多し。ねばりづよし(黏)。
 
ねば‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[粘](他、さ四)ねばるやうにす。ねばらしむ。(黏)。
 
ねば・つ‐く【か、き、く、く、け、け】[粘着](自、か四)ねば/”\す。
 
ねば・つち[粘土](名)粘質を有する土。ねんど。
 
{ねば・ねば[粘粘](名、副)よくねばりて物につくさまにいふ語。
 
ね・ばり[根張](名)根の張り出づること。
 
ねばり[粘](名)ねばること。又、ねばる度合。(黏)。――・け[粘氣](名)ねばる力。ねばりつく力。(粘着力)。――・つ‐く【か、き、く、く、け、け】[粘着](自、か四)ねばりて物につく。――・づよ‐し【く、し、き、けれ】[粘強](形、一)(一)ねばりけ多し。(二)かど/”\しからざれど、容易く破りがたし。しなやかにしてつよし。
 
ねば・る【ら、り、る、る、れ、れ】[粘](自、ら四)滑かにしてよく密着す。やはらかくしてたやすく附着す。(黏)。
 
++ねば‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[寐腫](自、ら下二)寐て頬(【ホホ】)など腫(【ハ】)れふくる。
 
ね・ばれ[寐腫](名)ねばるゝこと。
 
ネハン[涅槃](名)【佛】(梵語 Nirvana 圓寂・寂滅・入滅。滅度等と譯)大乘にては、迷妾を脱却し功徳を圓成し不生不滅なる法身の眞證に歸することをいひ、小乘にては、三界の煩悩を斷滅して灰身無爲に歸することをいふ。{――・にしかぜ[涅槃西風](名)陰暦、二月十五日前後に一七日の間吹く軟風。(伊豆又は伊勢邊の船頭の語。)――・ゑ[涅
 
 
 
 
や・はぎ[矢矧](名)矢をつくる工人。(矢人)。
 
(や・はく[夜泊](名)よるのふながゝり。
 
やは‐し【く、し、き、けれ】[柔](形、一)やはらかなり。よわし。軟弱なり。
 
++やは・す【ヤワス】【さ、し、す、す、せ、せ】[和](他、さ四)やはらぐやうにす。
 
や・はず[矢筈】(名)(一)矢の頭の弦をかくる部分。(二)打ちちひて矢の羽に似たる模樣。矢飛白。――・もち[矢筈餅](名)矢筈の形にこしらへたる餅、儀式に用ふるもの。――をとる 矢を番へて直ちに別放たんとするさまに言ふ。
 
やはた・ぐろ【ヤワタ−】[八幡黒](名)黒く染めて柔かにしたるもみ革、山城國八幡邊より産出するもの。
 
やはた・ごばう【ヤワタゴボウ】[八幡牛蒡](名)山城國八幡より産する牛蒡。
 
やば・根[矢羽根](名)矢にはぐ羽根。
 
やは・はだ【ヤワ−】[柔肌](名)やはらかなるはだ。
 
やは・やは【ヤワヤワ】[柔柔](名)やはらかなるさまにいふ語。
 
やはら【ヤワラ】[柔](名)(一)やはらとり。柔術。(二)急所。
 
++やはら【ヤワラ】[徐](副)「やをら」に同じ。
 
やはらか【ヤワラカ】[柔](名)(一)やはらかきこと。{・もの[柔物](名)絹布。
 
やはらか‐し【ヤワラカシ】【く、し、き、けれ】[柔](形、一)(一)堅からず。こはからず。(二)おだやかなり。(三)しなやかなり。
 
やはら‐ぐ【ヤワラグ】【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[和](自、か四)(一)やはらかになる。しなやかになる。(二)しづまる。をさまる。(三)むつまじくなる。したしくなる。(四)のどかになる。おだやかになる。
 
やはら‐ぐ【ヤワラグ】【げ、げ、ぐ、ぐる、ぐれ、げよ】[和](他、か下二)やはらぐやうになす。やはらがしむ。
 
やはら・ぐさ【ヤワラ−】[黄耆](名)【植】「わうぎ」に同じ。
 
やはら・とり【ヤワラ−】[柔取](名)柔術の稱、慶安年中、明人陳元〓歸化して江戸にあり、浪人福野七郎右衛門・磯貝次郎左衛門・三浦與次右衛門これに就きて拳法を学び、更に發明せしところを加へたるもの。
やはり[矢張](副)そのまゝ。なほ。も亦。
 
(や・はん[夜半](名)よなか。
 
(や・ばん[夜番](名)よばん
(や・ばん[野蠻](名)(一)人智未だひらけず一般の物事の幼稚なること。開化せざること。又、其人民。(二)無作法なること。無教育まること。又、其人。
 
(や・ひ[野鄙](名)ひなびたること。いやしきこと。
 
++や・ひら・で[八開手](名)神を拜する時に手をあまたゝび拍(【ウ】)ちならすこと。
 
やぶ[藪](名)(一)萱草などの多く叢生せるところ。(二)竹の林。(三)「やぶいしや」の略言。(四){「やぶにらみ」の略言。――・い[藪醫](名)次條に同じ。――・いしや[藪醫者](名)(藪の如く僅かの風邪(【カゼ】)にもさわぐといふ意〉術の拙き醫者の稱。(庸醫)。――・いり[藪入](名)正月又は七月の十六日前後に、奉公人が、おのれの宿にかへること。やどさがり。やどいり。(走百病)。――・か[藪蚊](名)【動】一種の蚊、大形黒褐色にして脚部及腹部に白色の輪紋あり、刺すと鋭し。(豹脚蚊)。――・かうじ【−コウジ】[藪柑子](名)【植】(い)紫金牛科に屬する小木、莖は草本状をなし高さ四五寸許、葉は茶の葉に似て薄く互生す、花梗は葉腋に生じ少數の花を着く、花は夏の頃に開き白色にして赤色の小點を有す、果實は通常紅色を帶ぶ、觀賞用として栽培せらる。(紫金牛)。(ろ)「からたちばな」の一名。(九州の方言)。――・からし[藪枯](名)【植】(い)葡萄科に屬する草、山野に自生す。纏繞莖を有す、葉は楓に似て互生し、嫩葉は赤色なれど後に碓緑色に變ず、花は四瓣緑色にして夏の頃開き實を結ぶ。ひさごづる、びんぼづる、かきとほし。(烏〓苺)。(ろ)「あをかづら」の一名。{――からぼう 唐突在な事をいひ又は行ふにいふ。――・だたみ[藪疊](名)藪のしげりたる處。――・だま[藪玉](名)【植】「ほこりだけ」に同じ。――・にく・けい【−ニッ−】[藪肉桂](名)【植】(い)樟科に屬する木、葉は革質にして三大脈を有し横線あり、花は緑黄色を呈す、果實は三四房をなし下垂し、熟すれば黒色を呈す、材は芳香あり、蝋を採取すぺく、又、建築・器具等の種々の用に供せらる。(ろ)「めかづら」の一名。――・にらみ[藪瞰](名)物をるに瞳(【ヒトミ】)を正しくすること能はざる不具。ひがら。(斜眼){――・ねらめ[藪瞰](名)「やぶにらみ」の訛。{――・へび[藪蛇](名)(やぶをつゝいて蛇を出す義)餘計な事をして禍を買ふこと。――・めうが【−ミヨウ−】[藪茗荷](名))【植】鴨跖草科に屬する草、葉は茗荷に似、花は白色小形にして、頂部に生じ圓錐状花序をなす、雄蘂六個あり。(杜若)。
 
やぶさか[吝嗇](名)(一)深くものをしみすること。しはきこと。(二)舊態をすてがたがること。「過を改むるに――ならず」。
 
やぶさ・め[流鏑馬](名)(矢馳馬の轉)騎射の式、馬を馳せ鏑矢にて的を射ること、矢は三本にして弓は白重籘を用ひ、狩衣・綾藺笠(【アヤヰガサ】)・行縢(【ムカバキ】)。籠手(【コテ】)を着くるを古式とす。
 
や・ぶみ[矢文](名)(一)矢に結びつけて敵軍の中に送る文書。(二)たゝみかけて發送する書状。
 
やぶ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[破、敗](他、ら四)(一)きずつく。こはす。さく。(傷、毀、壞)。(二)敵を負(【マ】)かす。まかす。(三)亂す。「家を−」、「法を−」。(四)成り立たしめず。
 
やぶ‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[破、敗](自、ら下二)(一)きずつく。こはる。さく。(傷、敗、壞)。(二)敵に負(【マ】)く。まく。(三)亂る。(四)成り立たず。「約−」。
 
やぶれ[破](名)やぶるゝこと。又、やぶれたる處。――・がさ[破笠](名)(一)破れたるかさ。(二)【植】菊科に屬する草、葉大形にして七八寸許、其状恰も破れたる笠に似たり、花は黄白色を呈し莖頂に着生して穗状をなす。{――・かぶれ(名)やけにて事の成否善惡に頓着なきこと。
 
(や・ぶん[夜分](名)(一)よなか。夜半。(二)よる。
 
や・へ【−エ】[八重](名)(一)八っかさなりたること。(二)數多く重なりたること。(三)花冠の數片重なれるもの。(重瓣)。――・がき[八重垣](名)幾重にも結(【ユ】)ひなしてある垣・――・ぐも[八重雲](名)雲のいくへもかさなれるもの。――・ざくら[八重櫻](名)【植】一種の櫻、花の重瓣なるもの。――・なり[八重生](名)【植】あづきの一種、實は緑色若しくは茶色にして小なり。(緑豆)。++――・の・しほぢ【−シオ−】[八重潮路](名)遙かなる潮の流。遙かなる海。――・ば[八重齒](名)重なりて生じたる齒。そひば。(重〓)。――・むぐら[八重葎](名)(一)繁茂せるむぐら(二)【植】茜草科に屬する草、原野又は、路傍に自生す、莖細く長く、葉は茜(【アカネ】)に似小さくして毛刺あり輪生す。(猪殃殃)。――・やま[八重山](名)山の多く重なれるもの。
 
++や・ほ[彌帆](名)大船の舳(【トモ】)に張る帆。――・ばしら[彌帆柱](名)大船の舳のやほをかくる柱。
 
や・ほ【−オ】[八百](數)百の八倍。
 
や・ほ【−オ】[八百](名)數の多きこと。
 
{や・ぼ[野暮](名)世間に通ぜざること。人情を解せざること。風流心のなきこと。ぶいき。ぶこつ。下品。
 
++やほ・あひ【−オアイ】[八百會](名)多くのものゝあつまりあふ處。「潮の−に」。
 
++や・ほこ[八矛](名)矛の數多きこと。
 
++や・ほち[夜發](名)よたか。つじぎみ。(辻君)。
 
++やほ・ぢ【−オ−】[八百路](名)遠隔なる地。「潮の−」。
 
{やほ・ちやう【ヤオチヨウ】[八百長](名)雙方かねて打合せおきてとる相撲。
 
や・ほ・や【−オ−】[八百屋](名)(一)野菜物を賣る人又は家。(二){雑駁なる學問をなしたる人。――・もの[八百屋物](名)野菜類の稱。
やぼろ[矢母羅](名)紗を以て作り矢の數の敵に見えざるために蔽(【オホ】)ふ母衣。
 
やほ・よろづ【−オ−】[八百萬](名)數のいと多きこと。「−の神」。
 
やま[山](名)(一)平地より高く大きく隆起せるもの。さんがく。 時、比叡山の特稱。「−法師」。(三)堆(【ウヅタカ】)く盛りたるもの。(四){確かなる見込なけれど、萬一を僥倖してなすこと。「−し」。−を張る」。(五){やまぼこ。京都地方の方言)。
 
やま・あざみ[山薊](名)【植】あざみの一種、山野に自生す、葉は大形にじて刺あり、花は淡紫色にして穗状に排列す。おにあざみ。
 
やま・あひ【−アイ】[山間](名)山と山とのあひ。たにま。
 
やま・あらし[山嵐](名)山より起るあらし。
 
やま・あらし[山荒](名)【動】囓齒類に屬する獣、「インド」「アフリカ」などに産す、大いさ兎の如く、脊上に長大なる刺毛を生ず。(豪猪、山豕)。
 
やま・あららぎ[山蘭](名)【植】「こぶし」の一名。
 
やま・あゐ[山藍](名)【植】大戟科に屬する草、山中に自生す、葉は對生し一種の液汁を有す、昔時はこの液汁を採(【ト】)りて青色の染料としたり。
 
やま・いぬ[山犬](名)【動】食肉類中犬科に屬する獣、形犬に類し體痩(【ヤ】)す、性猛惡なり。
 
やま・いぬ[病犬](名)狂犬。
 
(や・まう【−モウ】[夜盲](名)とりめ。
 
やま・うつぎ[山空木](名)【植】虎耳草科に屬する灌木、高さ三四尺、葉は圓状にして尖(【トガ】)り鋸齒を有す、花は薄黄紅色又は白色若しくは紅色を呈し圓錐花序に排列す、果實は黒褐色にして内に種子あり、木材は「パイプ」に製せられ、又、製紙の糊料に供せらる。
 
やま・うば[山姥](名)山にゐるといふ女性の怪物。(山姑、野婆)。
 
やま・うばら[藜蘆](名)【植】「しゆろさう」(棕櫚草)に同じ。
 
{やま・うり[山賣](名)萬一の僥倖を期してものを賣ること。
 
やま・うるし[山漆](名)【植】(い)山中に自生す漆樹の稱。(ろ)「つたうるし」の一名。
 
やま・おくり[山送](名)のべのおくり。
 
やま・おろし[山颪](名)(一)山より吹き下(【オ】)ろす風。(二)山おろしの音に似たる鳴物。
 
やま・が[山家](名)山中にある家。山里の家。
 
やま・かがし[赤棟蛇](名)【動】蛇の一種、山林又は深溪に棲息す、全身に紅黒色の斑文あり、擧動敏捷にして性質猛惡なり、劇毒を有し人これに咬(【カ】)まるゝときは生命を失ふに至る。
 
++やま・かがち[蟒蛇燒](名)【動】をろち。うはゞみ。
 
やまかけ・どうふ[山掛豆腐](名)山のいもの汁をかけたる八杯豆腐。
 
やま・かご[山駕籠](名)竹で編みたる手輕の駕籠、山路のに用に供するもの。
 
やま・かぜ[山風](名)(一)山より吹き來る風。山中に起る風。(二)【地】夜間山頂附近の部は山麓に比してはやく地面熱を輻射するた、山頂より溪谷に沿ひて吹き下る風。
 
やま・かせぎ[山稼](名)山に稼ぎに行くこと。
 
やま・が・そだち[山家育](名)山家にて生長せること。
 
やま・がた[山形](名)(一)++射場の的の後方に引きたる幕。(二)中高くして兩邊の斜に下(【サガ】)り山の形をなせるもの。
 
やま・がたな[山刀](名)なたの類、樵夫の用ふるもの。
 
++やま・がつ[山賤](名)山中に住む賤人、即ちきこり、そまびとなどの稱。(山兒)。
 
やま・がに[山蟹](名)【動】蟹の一種、山谷・溪間又は河堤に穴居す、大さ二寸許、螯(【ハサミ】)赤し。いしがに、あかゞに。(石蟹、溪蟹)。
 
やま・がは【−ガワ】[山川](名)山間をながるゝ川。――・ざけ[山川酒](名)白酒。
 
やま・がへる【−ガエル】[山蛙](名)【動】「あかゞへる」に同じ。(山蛤、黄蛤)。
 
やま・がら[山雀](名)【動】燕雀類中やまがら科に屬する鳥、頭部は黄色にして赤色を帶び眼邊に黒條あり、背部は灰赤色にして腹部は淡赤色、他はすべて黒色なり、山林に飛翔し昆蟲を捕食す、性、怜悧にして教ふれげ種々の藝をなす。(山陵鳥、山連)。
 
やま・がらす[山鴉](名)【動】(い)はしぶとがらす」の一名。(ろ)「みやまがらす」の一名。
 
やまが・りう[山鹿流](名)兵法の一派、山鹿素行を祖とするもの。
 
やま・かんむり[山冠](名)漢字の冠の名、即ち岩・嶺等の上にある山の字の稱。
 
やま・ぎ[山木](名)山に生ふる木。
 
{やま・ぎ[山氣](名)冒險又は投機の心あること。
 
やま・きず[山疵](名)陶器の製造せるときの疵。
 
やま・ぎり[山桐](名)【植】「あぶらぎり」に同じ。
 
やま・くす[山楠](名)【植】「いぬくす」に同じ。
 
やま・くぢら[山鯨](名)猪内の異稱。
 
やま・くづれ[山崩](名)【地】地下水の作用により岩石の組織ゆるみて山壁の崩るゝこと。やまつなみ。
 
やま・ぐは【−グワ】[山桑](名)【植】山茱萸科に屬する木、葉は山茱萸に似、白色花瓣樣の四個の苞よりなる總苞を有す、木材は種々の用に供せらる。いつき。(※[奚+隹]桑、※[厭/木])。
 
やまこ[山子](名)猿の老いたるもの。(〓)。
 
{やま・こ[山子](名)やま氣のある人。
 
やま・ごばう【−ボウ】[山牛蒡](名)【植】商陸科に屬する草、莖は直立し高さ三四尺、葉は大形にして楕圓状をなし互生す。夏の頃、三四寸の花梗を出だし五瓣淡紅白色の花開く、根は塊状をなし横に延(【ノ】)ぶ、藥用に供せられ、又、葉と共に灰汁にて※[者/火]れば食するを得。いをすき。(商陸)。
 
やま・ざくら[山櫻](名)【植】櫻の一種、葉は廣披針状若しくは長楕圓形をなし縁邊に鋸齒を有す、萼は圓筒形なり、花は單瓣白色にして他種の櫻にさきだちてはやく開く、観賞用として栽培せられ、木材樹皮は種々の用に供せらる。
 
やま・ざと[山里](名)山中の人里。
 
やま・し[山師](名)(一)鑛物を掘り出す業の人。かねほり。(二)山木を賣買する業の人。(三)確かなる目的なく萬一を僥倖して事を行ふ人。投機者。行險者。(四)詐欺師。
 
やま‐し【しく・し・しき・しけれ】[疾、疚](形、二)心中安からず。心なやまし。うしろぐらし。はづかし。
 
やま・した[山下](名)山のふもと。
 
++やま・じほ【−ジオ】[山鹽](名)山より出づる鹽、即ち岩鹽。
 
++やま・すげ[山菅](名)「やぶらん」に同じ。
 
{やま・せ〔山背〕(名)東風。(津輕地方の方言)。
 
やま・ぜり[山芹](名)【植】(い)「たうき」(當歸)の一名。(ろ)「ばうふう」(防風)の一名。
 
やま・だし[山出](名)(一)山より出すこと。(二)始めて都會に來たるゐなかもの。ぽつとで。
 
やま・だち[山立](名)山賊。
 
やま・たちばな[山橘](名)【植】「やぶかうじ」の一名。
 
++やま・たづ[山※[金+番](名)木を以て造れる斧。
 
やま・ぢ[山路](名)山中のみち。
 
++やま・つ・いも[山芋](名)【植】「やまのいも」に同じ。
 
やま・づたひ【−ヅタイ】[山傳](名)(一)山より山へと傳ひゆくこと。(二)【植】「いはがねさう」の一名。
 
やま・つなみ[山津浪](名)やまくづれ。
 
++やま・つみ[山祇](名)山の神。
 
やま・て[山手](名)山に近き方。やまのて。
 
やま・デラ[山寺](名)山中にある寺院。
 
やまと[大和](名)(畿内の一國の名なれど、京都奠都の以前世々の天子の都せられしより轉ず)我日本國の稱。(日本)。――・うた[大和歌](名)上代より我國に行はるゝ三十一文字の歌の稱。和歌。(日本歌)。――・がな[大和假名](名)かたかな。――・ごころ[大和心](名)(一)我國の學問、即ち我國の古典などの研究。(二)やまとだましひ。――・こたつ[大和炬燵](名)おきごたつ。――・ごと[大和琴](名)あづまごと。(倭琴)。――・ことのは[大和言葉](名)やまとうた。和歌。――・ことば[大和詞](名)(一)我國の言語。(和語)。(二)和歌。(三)雅言。――・しまね[大和島根](名)我日本國の一名。――・だましひ[大和魂](名)(一)大和民族の固有せる忠孝節義を重んずる獻身的精神。日本人固有の精神。(二)++才能のあること。「あたらしき書を見るにもくらからじ、よみ開ぬる−」。――・とぢ[大和綴](名)(一)書物の開く折目の邊に孔を穿ち其孔に絲を通して綴(【ト】)づる綴方。又、其綴方の書物。(二)紙を中央より折りたる折目に孔を穿ち、其孔に絲をとほして綴づる綴方。又、其綴方のもの。でってふぼん。――・ぶえ[大和笛](名)六孔ある笛、神樂に用ふるもの。――・まひ【−マイ】[大和舞](名)一種のまひ、八人の少女が榊を持ちて行ふもの。――・みんぞく[大和民族](名)古來萬世一系の天皇の統御の下にありて我日本國を組織せる民族。――・もじ[大和文字](名)假名の稱。
 
やま・どり[山鷄](名)【動】鶉鷄類に屬する鳥、形、雉子に似、雌雄毛色を異にす。雄は全身赤黄色にして赤黒の斑を有して尾長し、雌は黒色にして稍や赤色を帶び尾短し、山野に棲む。(山雉、擢の旁)。
 
やま・なし[山梨](名)【植】薔薇科に屬する木、枝に棘多し。果實は棗(【ナツメ】)に似、味|酸(【ス】)く澁(【シブ】)し。いぬなし。(鹿梨)。
 
やま・なみ〔山列](名)山の立ちならべること。連山。
 
やま・ぬけ[山拔](名)山くづれ。
 
やま・の[山野](名}やまとのはらと。
 
やま・の・いも[山芋](名)【植】薯蕷料に屬する植物、纏繞莖を有し、初めは紫色にして後に緑色に變ず、朝顔に似たる網脈葉を有す、秋の頃、淡紅色の花を開き實を結ぶ、根莖は長さ數尺に達するものあり、澱粉質に富み食用に供せらる。(薯蕷)。
 
やま・の・かみ[山神](名)(一)やまつみ。(二){妻をあざけりていふ語。
 
やま・の・すそ[山裾](名)山のふもと。
 
やま・の・て[山手](名)やまて。
 
やま・の・ゐ[山井](名)山中に水のたまりて自然に井戸の状をなすもの。
 
やま・の・は[山端](名)やまのはし。
 
やま・ばち[山蜂](名)【動】「くまばち」に同じ。
 
やま・ばと[山鳩](名)【動】「きじばと」の一名。又、「あをばと」の一名。――・いろ[山鳩色](名)濃き黄色、麹塵(【キクヂン】)の御枹などの染色。
 
やま・ば[山番](名)山の番人。
 
やま・はん・の・き[山榛](名)【植】「ヤシヤぶし」の一名。
 
やまひ【ヤマイ】[病、疾](名)(一)身體の健全ならぬ所ありてなやむこと。病毒におかさるゝこと。いたづき。わづらひ。(疚)。(二)よからぬ性癖。
 
やま・びこ[山彦](名)(一)山の神。(二)山谷などにて、聲音の返響すること。こだま。(山響、反響)。
 
やまひ・だれ【ヤマイ−】[疾垂](名)漢字の冠の名、病・痛等の字の上にある※[やまいだれ]の字の稱。
 
やま・びと[山人](名)(一)山里に居住する人。(二)山にすみて仙術を得たる人。せんにん。(仙人)。
 
やま・ひめ[山姫](名)山を守る神女。(山神)。
 
やま・びる[山蛭](名)【動】蛭の一種、深山の濕地に生ず、大形にして、人畜に吸ひ着き皿液を吸ふ、其吸痕は瘡腫となり易し。かさびる。
 
やま・ふ【ヤマウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[病](自、は四)「やむ」の延言。
 
++やま・ふき[山蕗](名)【植】山中に自生する蕗の稱。きやまふゝき。
 
やま・ぶき[山吹](名)【植】薔薇科に屬する灌木、莖は青緑色にして細く叢生す、中心柔かにして白色なり、葉は單葉にして桃に似る、初夏の頃、黄金色の花開く。(棣棠花、茶※[草冠/靡])。――・いろ[山吹色](名)(い)こがねいろ。黄色。(ろ){黄金。――・にほひ【−ニオイ】[山吹句](名)かさねの色目、表裏共に黄色なるもの。
 
やま・ぶし[山伏](名)(一)山中にやどること。(二)山中の住家。(三)山野に起臥して行をなす僧侶。(四)修驗者。
 
やま・ふところ[山懷](名)山中の恰も懷の如くこもりたる地。
 
++やま・ふふき[山蕗](名)【植】「つはぶき」に同じ。
 
やま・べ[山邊](名)山のほとり。
 
やま・ぼこ[山鉾](名)だんじりの一種、上に鉾、薙刀などを立つるもの。
 
やま・ほととぎす[山時鳥](名)【動】山に棲むほとゝぎす。
 
やま・ほふし【−ホウ−】[山法師](名)叡山延暦寺の僧徒。
 
やま・まゆ[山繭](名)【動】山繭蛾の幼蟲、形蠶に似、蠶より體短かし、楢、樫などの葉を食ひ黄色の繭を結ぶ、繭より絹絲を採取すべし、其絲は質基だ強し。――・おり[山繭織](名)山繭の繭より採取したる絲を以て織れる絹布。――・つむぎ[山繭紬](名)前條に同じ。――・の・てふ【−チョウ】[山繭蝶](名)【動】鱗翅科中蛾類に屬する昆蟲、翅は深黄色にして褐色の横線を有し、各一個の透明なる斑紋あり、其幼蟲は即ち山繭なり。
 
やま・みち[山路](名)山中の路。
 
やま・みづ[山水](名)山中にある水。
 
やま・め[水※[草冠/蟲]](名)【動】「たいこむし」の一名。
 
やま・もと[山下](名)山のふもと。やまのすそ。
 
やま・もも[山桃](名)【植】(い)楊梅科に屬する木、葉は革質平滑にして長楕圓状をなし、常緑なり、春の頃黄白色の花開く、果實は球形にして多數の小突起を有し孰すれば紅色を呈し、食用に供せられ、樹皮は藥用又は染料に供せらる。(楊梅)(ろ)梅の一種、支那より渡來す、葉は柔軟にして尖る、果實は外皮粗にして中に種子あり。(緊梅)。
 
やま・もり[山守](名)山を守るもの。山の番人。
 
やま・もり[山盛](名)器に高くものを盛ること。
 
やま・やま[山山](名)(一)おほくの山。(二)分量の多きことにいふ。「−積れる話」。
 
やま・わけ[山分](名)兩分すること。二つに分くること。
 
++やま・わけ・ごろも[山分衣](名)山路を分け行く時に着る衣。
 
やま・をとこ[山男](名)深山にすみ猿に似たりといふ怪物。(山丈)。
 
やみ[闇](名)(一)夜の暗きこと。(二)道理の辨別なきこと。「子を思ふ心の−」。(三)亂れてをさまらざること。――にくる 心亂れて分別にまどふ。――にまどふ 前條に同じ。
 
やみ[病](名)やまひ。
 
やみ[止](名)やむこと。
 
やみ・あがり[病後](名)疾病なほりて、未だほどへぬこと。
 
やみ・あげく[病揚句](名)前條に同じ。
 
やみ・うち〔闇討〕(名)(一)闇にまぎれて人の不意を撃つこと。(二)轉じて人の不意を驚かすこと。
 
やみ・かへし【−カエシ】[病返](名)一旦なほりたる疾病の再びあともどりすること。ぶりかへし。
 
{やみ・くも[闇雲](副)前後の思慮なく。わいだめなく。みだりに。
 
やみ・ぢ[闇路](名)(一)やみのよに行く路。(二)行くへのわからぬこと。分別のつかぬこと。「戀の−」。
 
やみ・つき[病附](名)やみつくこと。
 
やみ・つく【か、き、く、く、け、け】[病附](自、か四)やまひにかゝりそむ。
 
やみ・の・うつつ[闇現](名)(一)やみの中の物事。(二)心亂れたるときの現象。
 
やみ・の・にしき[闇錦](名)「よるのにしき」に同じ。
 
やみ・の・よ[闇夜](名)くらき夜。
 
やみ・やみ〔闇闇](副)知らずに。不意に。
 
やみ・よ[闇夜](名)「やみのよ」に同じ。
 
や・む【ま、み、む、む、め、め】[止](自、ま四)其もの事行はれず。其もの事用ひられず。とゞまる。とまる。をはる。はつ。
 
や・む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[止](他、ま下二)其もの事を行はず。其もの事を用ひず。とむ。とどむ。たつ。廢す。
 
や・む【ま、み、む、む、め、め】[病](自、ま四)病氣にかゝる。わづらふ。なやむ。
 
や・む【ま、み、む、む、め、め】[病](自、ま四)やましく思ふ。うれはしく思ふ。
 
や・め[矢目](名)矢の立ちたる孔。
 
やめ[止](名)やむること。中止。
 
やも・め[※[女+霜]](名)夫の無き婦人。(寡婦)。――・だふし【−ダオシ】[※[女+霜]倒](名)「いなこき」の異稱。昔こき箸とて篠竹を並べて、寡婦などの稻をこくことを業としたりしが、いなこき發明せられ、ために寡婦業を失ひたりといふ義なり。
 
やも・め[鰥](名)妻なき男子。をとこやもめ。
 
や・もり[家守](名)人の家を守る者。(屋守)。
 
や・もり[守宮](名)【動】蜥蜴科に屬する爬蟲類、形とかげに似て、暗灰色なり。趾端は平濶にして下面に細微なる横皺を有し、よく他物に附着す、墻壁などに攀ぢて昆蟲を捕食す。(壁虎)。
 
やも・を[鰥夫](名)をとこやもめ。
 
や・や[稍](副)(一)だん/”\。やう/\。(漸)。(二)よほど。いと。(三)すこしく。わづか。暫時。「−ありて」。
 
やや(感)(一)呼びかくる發聲。(二)驚きたる時の發聲。
 
やや・と・も・すれ・ば[動](副)「ややもすれば」に同じ。(輙)。
 
++ややま・し【しく、し、しき、しけれ】[疾、疚](形、二)こゝろやまし。なやまし。
 
++やや・む【ま、み、む、む、め、め】[疾、疚](自、ま四)やましく思ふ。
 
やや・も・すれ・ば[動](副)物事につけて。よく。ともすれば。(輙)。
 
++やや・も・せ・ば[動](副)前條に同じ。
 
(や・ゆ[揶揄](名)あなどりもてあそぶこと。からかふこと。
 
や・よ(感)他を呼びかくるにいふ感歎詞。やあ。
 
やよひ【−ヨイ】[彌生](名)陰暦三月の異稱。
 
++や・よろづ[八萬](名)數多きこと。
 
{やら(助)(一)「やらむ」の略言。(二)二つ以上の物事をならべ説くときに用ふる語。「蹴る−打つ−」。
 
やらい[矢來](名)(遣(【ヤラ】)ひの誤、即ち入るを防ぐの義)竹などを縱横に粗(【アラ】)く組みたる境界の垣(【カキ】)。
 
(や・らい[夜來](副)(一)數夜このかた。(二)夜になりてより。
 
(やらう【−ロウ】[野郎](名)(一)男子を罵りていふ語。(二)かげま。――・あたま[野郎頭](名)男子の髪の結ひ方、頭上の髪をひろく剃(【ソ】)りたるもの。
 
{やらか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】(他、さ四)おこなふ,なす。
 
(やら‐ふ【ヤラウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[遣](他、は四)「やる」の延音。
 
や・らむ(助)(助詞の「や」と「あらむ」とを合せたる語)確かならざる意にいふ語。「何−」。
 
やり[槍](名)(一)人又は獣などを突くための武器。細長き刃を穗とし、これに細長き柄をつけたるもの、刃の形によりて種々の名稱あり。(二)將棊の駒、香車に同じ。――・がんな[槍鉋](名)かんなの一種、槍の穗に似て曲(【マガ】)りたるもの、さをがんな。
 
{やり・あ‐ふ【−アウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[遣合](自、は四)あらそふ。たゝかふ。
 
(や・りり[野流](名)【地】傾斜緩慢なる地盤を流るゝ河。
 
(やり・くり[遣繰](名)やりくること。――・さんだん[遣繰算段](名)やりくりの工夫。
 
{やり・く‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[遣繰](自、ら四)物事を種々に振りかへてなす。いろ/\にして都合をつく。くりあはす。(經營、拮据)。
 
やり・こ‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[遣込](他、ま下二)議論していひこむ。論破す。
 
{やりこめる[遣込](他)「やりこむ」の訛。
 
やり・じるし[槍標](名)槍につくる目標。
 
やり・だし[遣出](名)船の舳に突出したる帆桁。(頭楫、船嘴)。
 
やり・だま[槍玉](名)槍にて突く目的物。「−に擧ぐ」。
 
やり・つかひ【−ツカイ】[槍遣](名)槍術を學ぶ人。又、槍術に達したる人。
 
{やり・つ・ける【け、け、く、くる、くれ、けよ】[遣附](他、か下一)やりこむ。やっつける。
 
{やりっ・ぱなし[遣放](名)「やりばなし」に同じ。
 
やり・て[遣手](名)(一)行ふ人。する人。(二)物を與ふる人。くるゝ人。(三)手腕ある人。器量ある人。(四)遊郭の花車(【クワシヤ】))の稱。
 
やり・ど[遣戸](名)「ひきど」(引戸)に同じ。
 
やり・ばなし[遣放](名)事をなし始末をつけず其まゝすておくこと。(※[足偏+東]放。)
 
やり・ぶすま[槍衾](名)槍を多く立て並ぶること。
 
やり・みづ[遣水](名)庭などへながしやる水。ながしみづ。
 
やり・もち[槍持](名)昔時、武家にて主人の槍を持ちて從ひし者。
 
や・る【ら、り、る、る、れ、れ】[遣](他、ら四)(一)ゆかす。(二)つかはす。(三){與ふ。
 
や・る【ら、り、る、る、れ、れ】[行](他、ら四)(一)行ふ。なす。(二)操縱す。はたらかす。「軍を−」。(三)つゞり作る。「文を−」。
 
++やる【ら、り、る、る、れ、れ】[破](他、ら四)やぶる。
 
や・る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[破](自、ら下二)やぶる。
 
やる・かた・な‐し【く、し、き、けれ】[遣方無](形、一)(一)いたしかたなし。(二)心を慰むる術なし。
 
やる・せ[遣瀬](名)おもひをはらすべきすべ。心の安まるところ。――・な‐し【く、し、き、けれ】(形、一)思をはたすべきすべなし。心のやりどなし。
 
やれ[破](名)やるゝこと。やぶれ。やぶれたるもの。
 
やれ・がき[破垣](名)破れたるかき。
 
やれ・がさ[破笠](名)破れたる笠。
 
やれ・ま[破間](名)破れたる間隙。
 
やれ(感)(一)「やよ」に同じ。(二)ねぎらひいたはるときの發聲。(三)よわりくじけたるときの發聲。――・やれ(感)(「やれ」を重ねたる語)前條(二)(三)に同じ。
 
(や・ろう[藥籠](名)印籠に似て圓き器、藥を入るるもの。――・ぶた[藥籠蓋](名)「いんろうぶた」(印籠蓋)に同じ。
 
(や・わ[夜話](名)夜集りて話すること。
 
やをら(副)しづかに。そろ/\。
++やん・ごと・な‐し【く、し、き、けれ】[止事無](形、一)(一)捨て置かれず。(二)普通ならず。(三)極めて貴し。
{やんま(名)【動】(い)「とんばう」に同じ。(ろ)とんばうの一種、大形にして青緑色なるもの。ゑむば。
 
やん・や(感)褒めはやす發聲。(喝采)。
 
  ゆ
 
ゆ 母音「い」を從音とし母音「う」を主音としたる綴音。
 
ゆ[湯](名)(一)水を煮たゝしたるもの。水をわかしたるもの。(二)いでゆ。温泉。(三)ふろ。洗湯。(四)++煎茶。(五)苗代の水。
 
ゆ[※[さんずい+金]](名)船に溜りたる水。あか。(※[さんずい+金])。
 
ゆ[柚](名)【植】「ゆず」に同じ。
 
++ゆ[搖](名)琴を彈ずるに絃をゆすること。「−し按ず」。
 
++ゆ(助)「る」(被)に同じ。「ねのみし泣か−」。
 
++ゆ[從](助)より。から。「田子の浦−打出でみれば、眞白にぞ」。(自)。
 
ゆ・あか[湯垢](名)鐵瓶などの内部に着く垢のごときもの、水にとけたる石灰、石膏など湯氣より分れて附着するなり。
 
ゆ・あがり[湯上](名)湯より出でたる時。
 
ゆ・あみ[浴](名)湯にかゝりて身體をあらふこと。
 
ゆう[柚](名)【植】「ゆず」に同じ。
 
(ゆう[雄](名)(一)をす。を。(二)をゝしきこと。たけきこと。又、其もの。(三)すぐるゝこと。ひいづること。又、其もの。「韓信是−」。
 
(ゆう[勇](名)臂力のすぐれて強きこと。意力のすぐれてたけきこと。つよきこと。たけきこと。いさましきこと。
 
(ゆう・かい[融解](名)固體が掖體となること。とくること。――・てん[融解點](名)【理】物體が融解するときの温度、氷にては攝氏零度なり。
 
(ゆう・がふ【−ゴウ】[融合](名)とけ一つになること。
 
(ゆう・かん[勇悍](名)たけくしてすばやきこと。
 
(ゆう・かん[勇敢](名)たけくして物事をおしきりてなすこと。
 
(ゆう・き[勇氣](名)いさましき意氣。臆せざる氣概。
 
(ゆう・くわ[雄花](名)【植】單性花にて雄蘂のみを有する花。
 
(ゆう・けつ[雄傑](名)すぐれひいでたるもの。
 
(ゆう・けん[勇健](名)いさましくすこやかなること。
 
(ゆう・こん[雄渾](名)言論又は文章のをゝしく品よくして且つよどみなきさまにいふ語。 
 
(ゆう・さう【−ソウ】[勇壯](名)いさましくさかんなること。
 
(ゆう・し[勇士](名)たけき人。つよき人。
 
(ゆう・し[雄姿](名)をゝしきすがた。いさましきすがた。
 
(ゆう・しやう【−シヨウ】[勇將](名)つよき大將。
 
(ゆう・しやう【−シヨウ】[熊掌](名)くまの手のひら、古昔、支那にては美味のものとせり。
 
(ゆう・しん[雄心](名)をゝしき心。たけき心。
 
(ゆう・ずゐ[雄蘂](名)【植】花の生殖機關の一、花絲及葯より成りたるもの。
 
(ゆう・せん[勇戦](名)いさましくたゝかふこと。
 
(ゆう・たい[勇退](名)未練なく官職などより身をひくこと。「−高踏」。
 
(ゆう・だい[雄大](名)をゝしくして大いなること。
 
(ゆう・たん[熊膽](名)くまのい。
 
(ゆう・だん[勇斷](名)勇氣を以て決斷すること。いさましきけつだん。
 
〈ゆう・づう[融通](名)(一)とゞこほりなくとほること。(二)さはりなく通ずること。(流通)。(三)物を彼此に通はして用ふること。「金錢の−」。(四)頓才。「−がきく」。
 
ゆうづう・ねんブツ[融通念佛](名)【佛】(い)自稱身のふる念佛を衆生に囘向すれば其功徳また自身に融通すといふこと。(ろ)「ゆうづうねんブツしゆう」の略言。――・しゆり[融通念佛宗](名)【佛】佛教の一派、融通念佛を狭義とす、大治年中僧良忍これを創(【ハジ】)め、元享年中僧法朗これを再興せしもの。
(ゆうてん[融點](名)【理】「ゆうかいてん」(融解點)に同じ。
 
(ゆう・と[雄圖](名)をゝしきくはだて。大いなる計畫。
 
(ゆう・ひ[雄飛](名)他を威服して巾をきかすこと。
 
(ゆう・ふう[雄風](名)すさまじきいきほひ。
 
(ゆう・ふく[裕福](名)生活のゆたかなること。とめること。(富有)。
 
ゆうべ[昨夜](名)「よべ」の延言。
 
(ゆう・へん[雄篇](名)すぐれて出來のよき篇章。「−大作」。
 
(ゆう・べん[雄辯](名)辯舌の勢よくよどみなきこと。口前のいとすぐれたること。――・か[雄辯家](名)雄辯なる人。
 
(ゆう・まう【−モウ】[勇猛](名)(一)勇氣ありて猛烈なること。(二)物事に動せずたゆまざること。
 
(ゆう・りき[勇力](名)いさましき力量。すぐれたる力。
 
(ゆう・りりょく[勇力](名)「ゆうりき」に同じ。
 
(ゆう・わう【−ヲウ】[雄黄](名)【化】天然に産する砒素の硫化物、黄色鑛物にして顔料に用ひらる。
 
(ゆ・えん[油煙](名)油或は樹脂類等を空氣の供給不十分なる所にて燃やすとき生ずる甚だ微細なる炭、墨の製造に用ふ。
 
(ゆ・えん[由縁](名)ゆかり。縁故。
 
++ゆ・おも[湯母](名)乳母の類。
 
ゆか[牀](名)(一)家の内に一段高くかまへたる寐床。(二)家の内に地より離れて根太板を亙(【ワタ】)し其上に板などを張りたるもの。
 
++ゆ・が[甕](名)祭事に用ふる瓶の類。
 
ゆか・いた[床板](名)ゆかに敷きたる板。
 
ゆ・かう【−コウ】[柚柑](名)【植】ゆずの一種、果實大きくして香氣高し。
 
{ゆ・かう【−コウ】[衣桁](名)「いかう」の訛。
 
ゆ・が‐く【か、き、く、く、け、け】[湯掻](他、か四)熱湯に浸(【ヒタ】)しおく。(淪)。
 
ゆ・がけ[弓懸](名)弓を射る時、右の手の指にかけて、弦を持つもの、革にてつくる。
 
ゆか‐し【しく、し、しき、しけれ】[懷](形、二)(一)何となく慕はし。(二)何となく知りたし。
 
ゆか・した[床下](名)床の下。
 
ゆ・かた[浴衣](名)(一)人浴する際着用する衣服。(二)綿布にて仕立て、浴後などに着る單衣。(三){ひとへもの。(仙臺方言)。
 
ゆ・かたびら[湯帷子](名)麻布にて仕立て、浴後などに着る單衣。
 
(ゆ・がふ【−ゴウ】[癒合](名)離れたりし皮膚、筋肉などが互に附着すること。
 
ゆ・がみ[歪](名)ゆがむこと。ゆがみたるさま。
 
ゆが‐む【ま、み、む、む、め、め】[歪](自、ま四)形正しからず。まがる。ひずむ。
 
ゆが‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[歪](他、ま下二)ゆがましむ。
 
++ゆか・もの[由加物](名)神前にさゝぐるいろいろのの贄。
 
ゆかり[縁](名)よすが。よる。えん。しるべ。(縁故)。――・の・いろ[縁色](名)紫色の稱。
 
{ゆか‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[縁](他、ら四)ゆかりとす。たよる。
 
++ゆが・をけ(名)大いなる桶。
 
ゆき[雪](名)(一)空中に遊離せる蒸氣の温度氷點以下となりたるとき凝結して、地上に降る純白なるもの、六面の結晶をなす。(六花、六田)。(二)白髪。「かしらの−」。(三)鱈の異稱。
 
++ゆき[由基](名)古昔、大嘗祭の時、新穀を奉るべき國の一。又、其祭場の左なるもの。(大嘗祭の條を見よ)。(悠紀)。
 
ゆき[桁](名)衣服の脊縫(【セヌヒ】)より袖口までの長さ。
 
ゆき[行](名)ゆくこと。「−のまに/\」。
 
++ゆ・ぎ[靫](名)矢を盛る器、箙の類。(矢箙)。
 
ゆき・あかり[雪明](名)闇夜の雪のひかり。
 
ゆき・あそび[雪遊](名)雪中にて、兒童などのさま/”\の遊戯をなすこと。
 
ゆき・あひ【−アイ】[行合](名)(一)ゆきあふこと。(二)++夏秋の交に稻などのみのること。(三)++しげく降ること。(四)亡魂などにおどるかさるゝこと。――・きやうだい【−キヨウ−】[行合兄弟](名)異父同母の兄弟。たねちがひの兄弟。
 
ゆき・あ‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[行合](自、は四)雙方より行きて出合ふ。
 
ゆき・いた‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[行到](自、ら四)行きて其處にいたる。
 
ゆき・うち[雪打](名)雪をまろめて、互に打ち合ふこと。ゆきなげ。(雪合戰)。
 
ゆき・おろし[雪下](名)(一)山風の雪を吹きおろすもの。(二)芝居の鳴物、綿を入れたる袋を枹(【バチ】)のさきに附けて、太鼓を叩く。
 
ゆき・がけ[行掛](名)行くついで。
 
ゆき・がた[行方](名)行きたる方。ゆくへ。
 
ゆき・かひ【−カイ】[行交](名)ゆきかふこと。
 
ゆき・か‐ふ【−コウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[行交](自、は四)(一)ゆききをなす。(二)彼來りこれ行く。
 
ゆき・き[往來](名)彼方に行き此方に來ること。わうらい。(往還、往復、往返)。
 
ゆき・ぐも[雪雲](名)雪もやうのくも。
 
ゆき・くら‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[行暮](他、さ四)日暮まで行く。
 
ゆき・く‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[行暮](自、ら下二)道を行く中に日暮る。
 
ゆき・げ[雪消](名)ゆきのとくること、ゆきどけ。
 
ゆき・げ[雪氣](名)雪の降らんとするけはひ。
 
ゆき・ころがし[雪轉](名)雪をまろめて轉がすこと。ゆきまろばし。
 
{ゆき・しな[行乍](名)ゆくとき。行きがけ。みちすがら。
 
ゆき・すぎ[行過](名)(一)行きすぐること。(二)分に過ぎたる行爲。
 
ゆき・す‐ぐ【ぎ、ぎ、ぐ、ぐる、ぐれ、ぎよ】[行過](自、か上一)目的の處より先へ行く。
 
++ゆき・ずり[行摩](名)道をゆきつゝ物にふるゝこと。「なごの海やとわたる船の−に」。
 
ゆき・ぞら[雪空](名)雪氣の空模樣。
 
ゆき・た‐つ【た、ち、つ、つ、て、て】[行立](自、た四)(一)進みはかどる。成功す。(二)生活立つ。くらし得。
 
ゆき・だふれ【−ダオレ】[行倒](名)路傍に倒れ死すること。又、其人。
 
ゆき・ダルマ[雪達磨](名)雪をかためて造りたる達磨の像。
 
ゆき・ちがひ【−チガイ】[行違](名)ゆきちがふこと。
 
ゆき・ちが‐ふ【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[行違](自、は四)(一)彼來り此行く。ゆきかふ。(二)物事齟齬す。くひちがふ。
 
ゆき・つく【か、き、く、く、け、け】[行着](自、か四)目的地に到着す。いたる。つく。
 
ゆき・づまり[行詰](名)ゆきづまること。又、ゆきづまる處。「廊下の−」。
 
ゆき・づま‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[行詰](自、ら四)(一)路きはまりて行くべき方なくなる。(二)答辯に窮す。語ふさがる。
 
ゆき・とげ[雪解](名)雪のとくること。ゆきげ。
 
ゆき・とど‐く【か、き、く、く、け、け】[行届](自、か四)ゆきわたる。
 
ゆき・なだれ[雪頽](名)山などの積雪の崩れおつるもの。
 
ゆき・なり[行也](名、副)(一)事物のなりゆきにまかすること。(放任)。(二)だしぬけ。突然。(三)ぢか。直接。――・さんばう【−ボウ】[行也三寶](名)ゆきなりに事をなして顧ざること。
 
ゆき・の・した[雪下〕(名)(一)【植】虎耳草科に屬する草、葉は心臓形をなし聞(【コハ】)き毛を有す、花瓣は大小不等にして小さき瓣には小さき班點あり、觀賞用として赦培せらる。(虎耳草)。(二)【植】林檎の一種。(奥羽地方の方言。)(三)かさねの色目、表は白くして裏の紅なるもの。
 
ゆき・の・はだへ【−ハダエ】[雪肌](名)いとしろき肌。
 
ゆき・の・ホトケ[雪佛](名)雪をかためてつくりたる佛像。
 
++ゆき・の・まくら[雪枕](名)雪ふりの夜にねむること。
 
ゆき・ひら[雪片](名)ふる雪の各片。
 
ゆき・ひら[行平](名)「ゆきひらなべ」の略言。――・なべ[行平鍋](名)白き陶製の平鍋、把手・蓋(【フタ】)・注口(【ツギクチ】)あるもの。
 
{ゆき・ぶっつけ[雪打附](名)「ゆきうち」に同じ。
 
ゆき・ふり[雷降](名)雪のふること。雪のふれる時。
 
ゆき・ぶれ[行觸](名)いきぶれ。
 
{ゆき・へ【−エ】[靱負](名)「ゆげひ」の訛。
 
ゆき・ボトケ[雪佛](名)「ゆきのホトケ」に同じ。
 
ゆき・ま[雪間](名)(一)ふる雪のやみたる間。(二)積れる雪の處々とけたるひま。
 
++ゆき・まつ・つき[雪待月](名)陰暦十一月の異稱。
 
ゆき・まね[往眞似](名)ゆきたるさまに見すること。
 
ゆき・まる[雪丸](名)「ゆきまるひバチ」の略言。――・ひバチ[雪丸火鉢](名)青と白との釉(【クスリ】)をかけたる陶製の火鉢。
 
ゆき・まろがせ[雪轉](名〕次條に同じ。
 
ゆき・まろばし[雪轉](名)雪の塊を積れる雪の上にまろばして大きくする遊戯。
 
ゆき・み[雪見](名)酒宴などして雪の景色を眺むること。「−の酒」。
 
ゆき・みち[行道](名)(一)行くべきみち。(二)費したるみち。
 
ゆき・みづ[雪水](名)雪どけの水。
 
ゆきみ・づき[雪見月](名)陰暦十一月の異稱。
 
ゆきみ・どうろう[雪見燈籠](名)石燈籠の一種、丈低く笠大きくして、三個の脚の外へひろがりたるもの。
 
(ゆきみ・ぶね[雪見船](名)雪見の爲にのる船。
 
ゆき・もどり[行戻](名)(一)ゆきともどりと。往復。(二)ゆきてあとへかへること。(三)一且人の妻となりたれど離縁となりて生家にかへりたること。又、其人。出もどり。
 
ゆき・もやう【−ヨウ】[雪模樣](名)雪のふらんとする空合。
 
(ゆ・ぎやう【−ギヨウ】[遊行](名)僧侶の諸國をめぐりあるくこと。アンギヤ。――・は[遊行派](名)【佛】時宗の別稱。
 
ゆき・やけ[雪燒](名)寒氣に中りて、皮膚の糜爛すること。しもやけ。
 
ゆき・わか‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[行別](自、ら下二)互に別々の方へわかれ行く。
 
{ゆきわかれる(自)前條の訛。
 
ゆき・わた‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[行渡](自、ら四)。もれなく屆く。おちなく到る。ゆきとゞく。
 
ゆき・をれ[雪折](名)雪の積もりたる重みによりて木の枝などの折るゝこと。
 
ゆき・をんな[雪女](名)雪中に出づるといふ怪物。「−五枚羽子板」。
 
ゆ‐く【か、き、く、く、け、け】[行](自、か四)(一)志す方へ赴く。おもむく。(往、征、之)。(二)あるく。あゆむ。(三)進む。(四)過ぐ。(五)去りて歸らず。(六)死ぬ。(逝)。(七)とつぐ。嫁す。(適)。(八)成長す。たく。(九)行はる。
 
ゆ・ぐ[湯具](名)ゆかた・ゆもじなどの總稱。
 
ゆく・さき[行先](名)(一)行きむかふ方。(二)將來。前途。
 
++ゆくさ・きるさ[往來](副)ゆききに。ゆきもどりに。
 
++ゆくさ・くさ[往來](副)前條に同じ。
 
++ゆくさ・も・くさ・も[往來](副)前條に同じ。
 
ゆく・すがら(副)みちすがら。
 
ゆく・すゑ[行末](名)未來のなりゆき。
 
ゆ・ぐち[湯口](名)(一)温泉の湯の流れ出る口。(二)苗代用の水の出る口。
 
ゆく・て[行手](名)ゆくさき。ゆくへ。前途。
 
ゆく・へ【−エ】[行方](名)行くべき方。又、行きたる方。
 
ゆく・ゆく[行行](副)(一)行きながら。「−思ふ」。(二)終には。後には。
 
++ゆく・らかに(副)ゆるやかに。いそがずに。
 
++ゆくら・ゆくら・に(副)前條に同じ。
 
++ゆくり・か・に(副)不意に。思ひがけなく。
 
ゆくり・な‐し【く、し、き、けれ】[不意](形、一)不意なり。思ひがけなし。
 
(ゆ・くわい[愉快](名)こゝろよきこと。おもしろきこと。たのしきこと。
 
ゆ・くわん[湯灌](名)佛葬にて、死體を棺にをさむる前に沐浴せさすること。
 
++ゆけ(名)氣なぐさみ。こゝろやり。
 
ゆ・げ[湯氣](名)湯の蒸發氣。蒸氣。
 
ゆ・げた[湯桁](名)湯槽の周圍に設けあるけた。
 
++ゆげ・ひ【−イ】[靱負](名)(「ゆぎおひ」の轉》近衛・兵衛・衛門などのつかさ。
 
(ゆ・げん[諛言](名)へつらひおもねることば。
 
(ゆ・こく[諭告】(名)さとしつぐること。諭し示こと。
 
ゆ・ごて[射鞴](名)弓を射る時、左の臂(【ヒヂ】)につくるもの、革にて製す。
 
++ゆさ・はり[鞦韆](名)古昔の遊戯、今のぶらんこに同じ。
 
ゆさぶ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[動搖](他、ら四)ゆりうごかす。ゆすぶる。ゆする。
 
ゆ・ざめ[湯冷](名)入浴後に、身體の却てつめたくなること。
 
ゆさ・ゆさ(名、副)動搖するさまにいふ語。
 
(ゆ・さん[遊山](名)(一)山に遊ぶこと。(二)あそびに行くこと。(遊觀、行樂)。――・ぶね[遊山船](名)あそびあるきにのる船。
 
++ゆ・し[柞子](名)【植】「ゆす」の古言。
 
(ゆ・し[諭示](名)さとししめすこと。
 
(ゆ・し[諭旨](名)(一)むねをいひきかすること。いひきかすること。(二)「ゆしめんくわん」の略言。――・めんくわん[諭旨免官](名)上よりいひきかせて辭職を申出さすること。
 
(ゆ・じ[諛辭](名)へつらひのことば。
 
(ゆ・しゆつ[輸出](名)「しゆしゆつ」に同じ。
 
(ゆ・しゆつ・にふ【−ニウ】[輸出入](名)「しゆしゆつにふ」に同じ。
 
ユ・ジユン[由旬](名)(梵語 Yozinaa)里程の名、九「マイル」弱、十六里ともいふ。
 
(ゆ・しよく[愉色](名)よろこばしきかほいろ。
 
ゆす[柞](名)【植】「ひよんのき」の一名。
 
++ゆ‐す【せ、せ、す、する、すれ、せよ】(他、さ變)琴を彈(【ヒ】)くに、左手にて絃(【イト】)をあつかふにいふ。「ゆし按ず」。
 
ゆ・ず[柚子」(名)【植】芸香料に屬する木、蜜柑に似たれど枝幹に刺多し、花は小形白色にして初夏に開く、果實は帶白色の酸味多き肉を有し、果皮は香氣多く食用に供せらる。
 
ゆす‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[濯](他、か四)汚れたるものを水にて洗ひきよむ。すゝぐ。
 
ゆすぶ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[動搖](他、ら四)ゆさぶる。
 
ゆず・ミソ[柚味噌](名)味噌に柚子の果實の汁を和したるもの、これに胡麻の種子などを難(【マ】)ずるもあり、普通これをなかごをとりたる柚子の果皮に盛る。
 
ゆす・ゆす(名、副)「ゆさゆさ」に同じ。
 
++ゆすら[櫻桃](名)【植】次條に同じ。
 
ゆすら・うめ[櫻桃](名)【植】薔薇科に屬する木、葉は廣楕圓形にして不整齊の鋸齒を有す、嫩(【ワカ】)き茎及葉の下面は密生毛を具す、春夏の交、梅に似たる白色小形の花開く、果實は小毬形をなし熟すれば紅色となる、食ふべし、又、觀賞用として栽培せらる。(緊梅)。
 
{ゆすり[搖](名)おどし又はあざむきて、金錢を強ひ取ること。又、其人。
 
++ゆする[※[さんずい+甘]](名)毛髪を洗ふこと。又、其用水。
 
{ゆす‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[搖](他、ら四)(一)ゆりうごかす。(二)おどし又はあざむきて、金錢を強ひとる。
 
++ゆす‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[搖](他、ら四)(自、ら四)どよめく。
 
++ゆする・つき[※[さんずい+甘]坏](名)ゆするを盛る器、もとは土器を用ひ、後には漆器を用ひたり。
 
ゆずる・ばち[土蜂](名)【動】「つちばち」の一名。
 
ゆ・ずゑ[弓末](名)弓のはし。「−ふりたて」。
 
(ゆ・ぜつ[愉絶](名)いとも愉快なること。
 
ゆ・せん[湯煎](名)湯氣にて、物を※[者/火]ること。
 
ゆ・せん[湯錢](名)洗湯に入る料。
 
(ゆ・そつ[輸卒](名)輜重の運搬に從事する兵卒。
 
ゆ・たか[豐饒](名)(一)たりとゝのひて、十分なるさま。不足なきさま。(二)ゆるやか。やすらか。(優)。
 
++ゆたけ‐し【く、し、き、けれ】[豐](形、一)ゆたかなり。
 
++ゆたけ・に[豐](副)ゆたかに。
 
++ゆ・たち(名)衣服の腋(【ワキ】)。
 
++ゆ・だち(名)弓を射るときにものいみするこ。
 
(ゆ・たつ[諭達](名)官よりふれさとすこと。
 
ゆ・だて[湯立](名)神佛にて熱湯を立て、これを笹の葉に浸(【ヒタ】)しておのが身にすゝぎて神に祈ること、心身つかるゝに及びて神託を得といふ。
 
++ゆた・に(副)ゆたかに、ゆるやかに。「その夜は−あらましものを」。
 
++ゆた・に・た・ゆた・に(副)たゆたひて。躊躇して。「我心−浮きぬなは」。
 
ゆだ‐ぬ【ね、ね、ぬ、ぬる、ぬれ、ねよ】[委](他、な下二)まかす。
 
++ゆ・だね(名)苗代にまく種子。
 
{ゆだねる(他)「ゆだぬ」の訛。
 
++ゆた・の・た・ゆた・に(副)「ゆたにたゆたに」に同じ。
 
ゆ・だま[湯玉](名)煮え立つ湯に浮きあがる泡。
 
++ゆ・だめ[弓矯](名)弓の材のゆがめるをため直す器。(弓〓、排〓)。
 
ユダヤ・けう【−キヨウ】[猶太教=Judaism](名)「ユダヤ人の奉ずる一神教、「モーセ」の法を基礎とするもの。
 
ゆた・ゆた(名、副)「ゆらゆら」に同じ。
 
(ゆ・たん[油單](名)(一)器具の敷物。(二)櫃又は長持などに被ふ布。
 
(ゆ・だん[油斷](名)(古昔、印度の暴王一臣に油鉢を持たせて行かしめ、其一滴をこぼさば首を斷つべしといひし故事に出づ)心をゆるして注意を怠ること。――・たいてき[油斷大敵](名)すべて、物事は自分の油斷よりわざはひを生ずといふこと。
 
ゆ・タンポ[湯婆](名)「タンポ」に同じ。
 
ゆ・づ【で、で、づ、づる、づれ、でよ】[※[火+蝶の旁]、茹](他、た下二)(一)熱湯にて煮る。(二)湯にて蒸す。
 
(ゆ・づう[融通](名)「ゆうづう」に同じ。――・ねんブツしゆう[融通念佛宗](名)【佛】「ゆうづうねんブツしゆう」に同じ。
 
ゆ・づか[弓束](名)弓の手に握る部分。ゆみづか。
 
ゆっくり[緩](名、副)いそがざるさまにいふ語。
 
ゆ・づけ[湯漬](名)飯に湯をかくること。
 
ゆったり[寛](名、副)ゆるやかにして迫らざるさまにいふ語。
 
++ゆつ・つまぐし[湯津爪櫛](名)齒のしげき櫛。
 
++ゆつ・の・つまぐし[湯津爪櫛](名)前條に同じ。
 
ゆづら・ふ【−ロウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[讓](他、は四)「ゆづる」の延音。
 
ゆづり[讓](名)ゆづること。――・う‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[讓受](他、か下二)他よりゆづられて受く。――・うけ[讓受](名)他人のゆづるを受くること。――・じやう【−ジヨウ】[讓状](名)ゆづることを證して與ふる文書。――・つ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[讓附](他、か下二)ゆづりて他へ移す。――・は[讓葉](名)【植】大戟科に屬する木、葉は長楕圓形にて厚く上面深緑色にして下面は青色なり、柄赤し、花は小形白色にして總状花序に排列し、雄蘂は通常十個ありて帶紫色の葯を有す、新葉の出づるをまちて舊葉凋落するが故に父子相讓るの義に取りて、此名あり。(青榕、交讓木)。――・わたし[讓渡](名)他人へゆづりて渡すこと。――・わた‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[讓渡](他、さ四)ゆづりて他へわたす。
 
ゆ・づる[弓弦](名)ゆみづる。――・うち[弓弦打](名)つるうち。鳴弦(【メイゲン】)。
 
ゆづ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[讓](他、ら四)(一)ものを他に與ふ。(二)へりくだりて他を先にす。(遜)。(三)退きて他を代はりとす。(四)位を他こ傳ふ。(禅)。
 
ゆづる・は[讓葉](名)【植】「ゆずりは」に同じ。
 
ゆ・づゑ[弓杖](名)弓を杖につくこと。(弓臂)。
 
ゆで・あづき[茄小豆](名)小豆を※[火+蝶の旁]でたるもの、砂糖をかけて食ふ。(金時)。
 
{ゆで・こぼ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[茹溢](他、さ四)ゆでゝ其汁を去。
 
ゆで・たまご[茹玉子](名)鷄卵を※[火+蝶の旁]で固まりたるもの、鹽をつけて食ふ。ぬきみたまご。
 
{ゆでる(他)「ゆづ」の訛。
 
ゆ・とう[湯桶](名)飲料の湯を入るゝ器、木製にて、多くは漆塗なり。――・よみ[湯桶讀](名)湯桶を「ゆとう」とよむが如く漢字の熟語を、上を訓に下を音によむこと。
 
ゆ・どうふ[湯豆腐](名)豆腐を白湯にて煮(【ニ】)たるもの、醤油などをつけて食ふ。
 
ゆ・どの[湯殿](名)(一)沐浴する室。風場。(二)飲食を調ふる室。
 
ゆ・とり[※[さんずい+金]取](名)船中のあかを汲み取る器。(〓)。
 
ゆ・とり[湯取](名)(一)おもゆ。(二)ゆかた。
 
ゆ・とり[裕取](名)くつろぎあること。(餘裕)。
 
ゆとり・めし[湯取飯](名)おもゆ。
 
{ゆ・トン[湯團](名)紙を貼(【ハ】)り合はせて油をひきたるもの、多く夏の敷物に用ふ。(油布)。
 
{ゆ・な[湯女](名)(一)温泉宿の下婢。(二)昔時、江戸市中の湯屋に居たりし遊女。
 
++ゆな・ゆな・は(副)ゆく/\は。はては。終には。
 
ゆ・に[湯煮](名)白湯にて、煮(【ニ】)ること。
 
ユニテリアン[Unitarian](名)「キリスト」教の一派、三位一體説を排斥して惟−の神格を主張するもの、ももに、「アメリカ」合衆國に行はる。
 
++ゆ・には【−ニワ】[齋庭](名)祭事を行ふため、ゆまはり清めたる場所。
 
ゆ・にふ【−ニウ】[輸入](名)「しゆにふ」に同じ。
 
++ゆ・の・あわ[湯泡](名)硫黄の古稱。
 
ゆ・のし[湯熨](名)布帛などの皺(【シワ】)を湯にぬらして熨すこと。
 
ゆ・の・はな[湯花](名)(一)硫黄を含有する湯泉の底などに沈澱固着する硫黄華。(二)湯の垢。
 
ゆ・のみ[湯呑](名)湯を呑むに用ふる筒形の器。――・じよ[湯呑所](名)湯を呑むために構へたる別室。
 
ゆ・ば[弓場](名)弓射る處。
 
ゆ・ば[湯場」(名)温泉のある所。
 
ゆ・ば[湯葉](名)一種の食品、豆腐の液に灰汁を加へて煮、其上皮を取りてほしかわかしたるもの。うば。(豆腐皮)。
 
ゆば・いろ[柚葉色](名)濃き縁の染色。又、黒みばしりたる緑の染色。
 
ゆ・はじめ[湯始](名)(一)湯をはじめにあぶること。(二)生兒に、うぶゆの後始めて湯をつかはすること。
 
ゆ・はず[弓筈](名)弓の弦を懸くる部分、上なるを、うはゝずといひ、下なるを、もとはずといふ。(弓※[弓+肅]弭)。――・の・みつぎ[弓筈調](名)古昔、男子の獵したる禽獣の類を貢獻せしこと。たなすゑのみつぎの對。
 
++ゆ・はた[結※[糸+曾]](名)しぼりぞめ。くゝりぞめ。(纈)。
 
ゆ・はた・たび【―ワタ―】[結肌帶](名)「いはたおび」に同じ。
 
ゆば・どの[弓殿」(名)古昔、禁中にて弓術を天覽ありし御殿。
 
ゆ・ばな[湯花」(名)「ゆのはな」に同じ。
 
{ゆはへる[結](名)(他)「ゆふ」の訛。
 
++ゆ・ばり[尿](名)小便。(溲、溺)。――・ぶくろ[尿袋](名)「ばうくわう」(膀胱)に同じ。
 
++ゆひ【ユイ】[雇人](名)傭ひいれたる人。やとひにん。
 
++ゆ・ひ[遊牝](名)畜類のつるむこ。
 
ゆぴ[指](名)上肢下肢即ち手足の端に枝の如く分出したるもの、人類のは各五づゝあるを普通とし、手のは細長くして拇指は他の四指に對し屈伸自在にして物を握り又は摘むの用をなし、足のは短くして一列に排列し僅少の運動をなす。――の・はら[指腹](名)指の内側。
 
++ゆひ・いれ【ユイ−】[結納](名)ゆひなふ。
 
ゆび・きり[指切](名)小兒が約束をたがへざるしるしに互に、指を曲げてかけあふこと。
 
++ゆ・ひ‐く【か、き、く、く、け、け】[湯引](他、か四)ゆあみをなす。
 
ゆ・び‐く【か、き、く、く、け、け】[湯引】(他、か四)少しく湯に煮る。
 
ゆひ・ケサ【ユイ−】[結袈裟](名)袈裟の一種、菊綴(【キクトヂ】)の如きものを着く、山伏の用ふるもの。
 
ゆび・さし[指差](名)(一)ゆびさすこと。(指點)。(二)ゆびわ。(仙臺地方の方言)。
 
ゆび・さ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[指差](他、さ四)指にて差し示す。
 
ゆ・ひしほ【−シオ】[柚醤](名)柚子の果實を※[者/火]てとらかしたるもの。
 
ゆび・ずまふ【−ズモウ】[指相撲](名)一種の遊戯、兩人互に右手又は左手の四指と四指とを組み合せ、大指をたてゝ押へあふもの、他の大指を押へたるを勝とす。
 
ゆひ・なふ【ユノウ】[結納](名)結婚の契約のしるしに、嫁聟の兩家より金帛酒肴などを取り交(【カ】)はすこと。又、其とりかはす品物。(結徴、結采)。
 
ゆび・ぬき[指貫](名)裁縫する時に、針を押ふるため指に嵌(【ハ】)むる指輪。(貫手※[革+稻の旁])。
 
ゆび・はめ[指嵌](名)ゆびわ。
 
++ゆび・まき[指卷](名)上代に、指に卷きつけて飾となしゝ環。
 
ゆひ・め【ユイ−】[結目](名)むすびめ。
 
ゆび・わ[指環](名)金・銀其他の金屬又は寶石にてつくり、指に嵌(【ハ】)むる環。ゆびまき。ゆびはめ。
 
ゆび・をり[指折](名)指を折りて、數ふべきほど有數の人。すぐれたる人。(屈指)。
 
ゆふ【ユウ】[夕](名)日くれて夜とならんとするほどのとき。ゆふぐれ。ひぐれ。
 
++ゆふ【ユウ】[木綿](名)楮(【カウゾ】)のあまかはにて製したる紙又は布。「−の衣」。
 
ゆ・ふ【ユウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[結](他、は四)(一)むすぶ。くゝる。(二)髪をむすぶ。(三)獣毛をつかねて筆をつくる。
 
++ゆふ・うら【ユウ−】[夕占](名)「ゆふけ」に同じ。
 
++ゆふ・か‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】(自、か下二)ゆふべとなる。
 
ゆふ・かげ【ユウ−】[夕影](名)夕日の影。(夕陰、暮陰)。++――・くさ[夕影草](名)【植】「あさがほ」の一名。++――・どり[夕影鳥](名)【動】「ほととぎす」の一名。
 
ゆふ・がすみ【ユウ−】[夕霞](名)夕ぐれにたつ霞。
 
ゆふ・かぜ【ユウ−】[夕風](名)夕方の風。
 
ゆふ・がた【ユウ−】[夕方](名)ゆふぐれ。ゆふ。
 
++ゆふ・かづら【ユウ−】[木綿鬘](名)木綿にてつくりたるかづら。
 
ゆふ・がほ【ユウガオ】[夕顔](名)【植】葫蘆科に屬する蔓草、へうたんと同種にして細長き果實を生ず、果實はかんぺうを製すべく、容器とすべし、其花夕に開きて朝に萎(【シボ】)むによりて此名あり。(壺盧、青瓢)。――・だな[夕顔棚」(名)夕顔の蔓を這はするため竹木などを編(【ア】)みてつくれる棚。――・べったう【−トウ】[夕顔別當](名)【動】鱗孔類中天蛾科に屬する昆蟲、體躯痩せて褐色なり、腹部に赤色の輪紋ありて口吻頗る長し、多く夕顔に集まりて其花蘂を吸ふより此名あり、幼蟲は甘藷・朝顔などの葉を食ひて害ふ。
 
ゆふ・がみ【ユウ−】[木綿髪](名)額髪の毛色の白き馬。
 
ゆふ・がり【ユウ−】[夕獵](名)夕方の狩獵。
 
ゆふ・き[結城](名)「ゆふきつむぎ」「ゆふきじま」「ゆふきもめん」の略言。――・じま[結城縞」(名)下總國結城地方より産出する縞織物。――・つむぎ[結城紬](名)下總國結城地方より産出する紬。――・もめん[結城木綿](名)下總國結城地方より産出する棉布。
 
ゆふ・ぎり【ユウ−】[夕霧](名)夕方に立つきり。
 
ゆふ・ぐれ【ユウ−】[夕暮](名)日のくれんとする時。たそがれどき。(黄昏、薄暮)。
 
ゆ・ぶくろ[弓袋](名)弓を入るゝ袋。(※[韋+長])。――・ざし[弓袋差](名)昔時、武家にて主君の弓袋をもちて前驅せしもの。――・もち[弓袋特](名)前條に同じ。
 
++ゆふ・け【ユウ−】[夕占](名)古昔、夕暮に行ひし辻占の類。
 
++ゆふ・け【ユウ−】[夕飯](名)夕暮の食事。ゆふめし。ばんめし。ばんさん。やしよく。
 
ゆふ・けい【ユウ−】[夕景](名)くれがた。くれどき。
 
ゆふ・げしき【ユウ−】[夕景色](名)夕方の景色。
 
ゆふ・げむり【ユウ−】[夕烟](名)(一)夕食をとゝのふるために立つ煙。(二)夕方にたつ煙。
 
ゆふ・こく【ユウ−】[夕刻](名)くれがた。ゆふがた。
 
ゆか・ごほり【ユウ−】[夕氷](名)夕方のこほり。
 
ゆふ・ざ【ユウ−】[夕座](名)夕方の説教。
 
ゆふ・さり【ユウ−】(名)くれがた。ゆふぐれ。(晩暮)。
 
++ゆふ・さり・つかた【ユウ−】(名)ゆふぐれ。ゆふさり。
 
++ゆふ・さ‐り【ユウ−】【ら、り、り、る、れ、れ】(自、ら變)夕方になる。「夕されば門田のいなば」。
 
++ゆふ・され【ユウ−】[夕](名)「ゆふさり」の訛。
 
++ゆふ・しで【ユウ−】[木綿埀](名)木綿にてつくりたるしで。
 
ゆふ・しほ【ユウシオ】[夕潮](名)夕方にみちくる潮。(晩潮)。
 
ゆふ・しも【ユウ−】[夕霜](名)夕暮に草葉などにおく霜。
 
ゆふ・すずみ【ユウ−】[夕涼](名)夏の夕方に戸外に出でゝすゞむこと。
 
++ゆふ・だすき【ユウ−】[木綿襷](名)ゆふにてつくりたるたすき。
 
ゆふ・だち【ユウ−】[夕立](名)(一)ゆふだつこと。(二)「ゆふだちのあめ」の略言。――・の・あめ[夕立雨](名)夏の夕近くなりて俄にふり來る雨。(驟雨、白雨)。
 
++ゆふ・だ‐つ【ユウ−】【た、ち、つ、つ、て、て】[夕立](自、た四)(一)夕方にふり來。(二)夕方におこりたつ。「−雲」。
 
ゆふ・つかた【ユウ−】[夕方](名)ゆふがた。
 
ゆふ・づき【ユウ−】[夕月](名)夕暮にしばし見ゆる月。――・よ[夕月夜](名)夕月の出でたるくれ方。
 
++ゆふ・づく・ひ【ユウ−】[夕附日](名)ゆふひ。
 
++ゆふ・づく・よ【ユウ−】[夕月夜](名)ゆふづきよ。
 
++ゆふ・づけ・て【ユウ−】[夕附](副)夕方になりて。
 
++ゆふ・つけ・どり【ユウ−】[木綿着鳥](名)【動】鷄の異稱、古昔、世の亂れしとき、四境の祭事にとて、鷄に木綿を着けて、京の四方の關にて祭事を行はせられしよりいふ。
 
++ゆふ・づつ【ユウ−】[太白星](名)金星の古稱。
 
ゆふ・なぎ【ユウ−】[夕和](名)(一)夕方に海面しづかに風のなぎたること。(二)【地】夕に海軟風と陸軟風と交迭するとき、一時風やみて波しづかなこと。(夕凪)。
 
ゆふ・なみ【ユウ−】[夕波](名)夕にたつ波浪。
 
ゆ・ぶね[湯船](名)(一)沐浴する湯を湛(【タタ】)へおく槽。(湯槽)。(二)昔時、港などにて、内に浴場を設け料金をとり入浴せしめたる船。
ゆふ・ばえ【ユウ−】[夕映](名)ゆふやけ。(榮)。
 
++ゆふ・ばな【ユウ−】[木綿花](名)古昔、婦人の頭髪の装飾となしゝ木綿にて製したる造花。
 
ゆふ・はん【ユウ−】[夕飯](名)夕方になす食事。
 
ゆふ・ひ【ユウ−】[夕日](名)將に没せんとするときの日影。いりひ。(夕暉、夕輝、落日、晩照)。――・かくれ[夕日隱](名)日影のまさに没せんとするころ。
 
ゆふ・べ【ユウ−】[夕](名)(一)ゆふがた。(二)昨夜。
 
ゆふ・ま・ぐれ【ユウ−】[夕間暮](名)ゆふぐれ。
 
++ゆふ・まどひ【ユウ−】[夕惑](名)夕方にまどろむこと。(夕轉)。
 
++ゆふ・まよひ【ユウ−】[夕迷](名)夕方に道にまよふこと。
 
ゆふ・めし【ユウ−】[夕飯](名)ゆふげ。ばんさん。
 
ゆふ・やけ【ユウ−】[夕燒](名)日の入りぎはに日光の反射によりて西の空のあかく見ゆるもの。(晩霞)。
 
ゆふ・やみ【ユウ−】[夕闇](名)よひやみ。
 
ゆ・ぺ・し[柚餅子〕(名)一種の菓子、味噌・米粉・砂糖・〓粉などを混じ、柚子(【ユズ】)の汁を加へて蒸したるもの。
 
++ゆほひ・か【ユオイ−】[寛](名)ゆるやかなるさま又は打ち開けたるさまにいふ語。
 
ゆ・まき[湯卷](名)(一)++古昔、貴人のゆあみに奉仕せる女の衣の上に着((【キ】)し服、白布にて製したり。(二)婦人の腰卷。ゆもじ。
 
++ゆまは・る【ユマワル】【ら、り、る、る、れ、れ】[齋](自、ら四)ものいみす。齋戒す。「持ち−」。
 
++ゆま・ふ【ユマウ】【は、ひ、ふ、ふ、へ、へ】[齋](自、は四)前條に同じ。
 
++ゆ・まり[尿](名)ゆばり。せうべん。
 
ゆ・み[弓](名)(一)矢をつがひて射る武器、木・竹などを撓(【タハ】)め、弦を張りてつくる。(二)弓の形をなせるもの。
 
ゆみ・かけ[※[弓+牒の旁]](名)「ゆがけ」に同じ。
 
ゆみ・がた[弓形](名)【數】圓の弦とこれに對する二つの共軛弧の中の一つとを以て圍みたる形。
 
ゆみ・し[弓師](名)弓を造る職工。(弓人、弓工)。
 
ゆ・ミソ[袖味噌](名)「ゆずミソ」に同じ。
 
ゆみ・ため[弓矯](名)「ゆだめ」に同じ。
 
ゆみ・たらう【−ロウ】[弓太郎](名)第一番に出づる射手。
 
ゆ・みづ[湯水](名)湯と水とと。――のやうにつかふ 金錢をわけもなくつかひちらす。
 
ゆみ・づか[弓束](名)「ゆづか」に同じ。
 
ゆみ・づる[弓弦](名)弓にかけ張る絲、麻にて縒(【ヨ】)りあはせたる絲に藥を塗りたるもの。
 
ゆみ・づゑ[弓杖](名)「ゆづゑ」に同じ。
 
ゆみ・とり[弓取](名)ものゝふ。武士。
 
ゆみ・ならし[弓鳴](名)「めいげん」(鳴弦)に同じ。
 
ゆみ・ば[弓場](名)「ゆば」に同じ。
 
ゆみ・はず[弓筈](名)「ゆはず」に同じ。
 
ゆみ・はり[弓張](名)(一)「ゆみはりづき」の略言。(二)「ゆみはりヂヤウチン」の略言。――・ヂヤウチン[弓張堤燈](名)提燈の一種、竹を弓のごとくに撓(【タワ】)め、其上下にかけ張りて開らくやうにつくれるもの。――・づき[弓張月](名)弓形をなせる月、即ち弦月。
 
ゆみ・ぶくろ[弓袋](名)「ゆぶくろ」に同じ。
 
ゆみ・や[弓矢](名)(一)弓と矢と。(二)たゝかひ。いくさ。――・だい[弓矢臺](名)弓矢をさしおく具、高さ三尺二寸なるを式とす。――・とる・み[弓矢取身](名)ものゝふ。武士。――・の・いへ[弓矢家](名)武士の家。武家。――・の・みち[弓矢道](名)(一)弓射るわざ。(二)武士のみち。――はち・まん[弓矢八幡](名)(弓矢に掛けて、八幡の御前にて誓ふ義)武士の誓ふ時にいふ語。
 
++ゆみ・を[弓男](名)ゆみとり。
 
ゆめ[夢](名)(一)睡眠中に現(【ウツツ】)のごとく見ゆる現象。(二)はかなきこと。――・あはせ【−アワセ】[夢合](名)夢の吉凶の判斷。――・うつt[夢現](名)たしかに意識せざること。おぼろげなること。――・うら[夢占](名)ゆめあはせ。――・がたり[夢語](名)夢に見たることを、めさめて後ものがたること。――・さら[夢更](副)すこしも。いさゝかも。++――・たましひ【−タマシイ】[夢魂](名)古昔、夢の中に魂のさまよひ出づと思ひしもの。――・ぢ[夢路](名)夢見の中。「−をたどる心地」。――・ちがへ【−チガエ】[夢違](名)悪夢をまじなひて、わざはひをまぬかるゝこと。――・とき[夢解](名)ゆめあはせ。――・ともなく[夢無](副)はかなくも。おぼつかなく。――・に[夢](副)すこしも。いさゝかも。−一にも[歩》(刷)すこしも。小さゝかも。「−人に遇はず」。――・に・ゆめ・みる・ここち[夢夢見心地](名)全く夢を見るが如き心地。物の確然とせぬこと。――・の・あと[夢跡](名)(一)夢のさま。(二)はかなくきえたるあとかた。――・の・うき・はし[夢浮橋](名)(一)夢路。(二)世の中。――・の・かしは【−カシワ】[夢柏](名)夫婦共寢の枕。――・の・つげ[夢告](名)神佛の夢枕にたちて告げたまふといふこと。――・の・なごり[夢名殘](名)見果てぬ夢ののこり。又、夢見の名殘をしきこと。――・の・よ[夢世](名)はかなき斯世。無常の世。――・ばかり[夢計](名、副)すこし。いさゝか。――・はんじ[夢判](名)ゆめあはせ。――・まくら[夢枕](名)夢を見つゝある間の枕邊。――・まぼろし[夢幻](名)ゆめとまぼろしと。又、いとはかなき物事。――・み[夢見](名)夢を見ること。
 
ゆめ[努](副)決して。つとめて。かならず。(禁止するにいふ語)。「−語るなかれ」。――・ゆめ[努努](副)決して決して。かならず/\。
 
ゆめ・む【み、み、む、むる、むれ、みよ】[夢](自、ま上一)夢を見る。
 
ゆ・もじ[湯文字](名)(一)ゆかた。(二)婦人の腰卷。
 
ゆ・もと[湯本](名)温泉の湧(【ワ】)き出づる土地。
 
++ゆ・や[齋屋](名)古昔、齋戒する時に籠(【コ】)もり居たる堂舍。
 
ゆ・や[湯屋](名)(一)ゆどの。ふろば。(二)料金をとりて、人に入浴せさすることを業とする家。せんたう。
 
++ゆ・ゆ‐し【しく、し、しき、しけれ】[由由](形、二)(一)いみはゞかるべし。いま/\し。(二)はなはだし。いみじ。重大なり。「−き大事」。
 
(ゆ・らい[由來](名)其物事の來歴。(原由、事由)。
 
(ゆ・らい[由來](副)もとより。元來。
 
++ゆらが‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[搖](他、さ四)ゆるがす。
 
ゆら‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[搖](自、か四)うごく。ゆるぐ。
 
ゆら‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[搖](他、さ四)ゆりうごかす。ゆる。
 
++ゆら・に[搖](副)ゆら/\と。
 
ゆら・めか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[搖](他、さ四)ゆらめくやうにす。
 
ゆら・め‐く【か、き、く、く、け、け】[搖](自、か四)ゆら/\す。ゆらぐ。(搖蕩)。
 
{ゆら・ゆら[搖搖](名、副)彼方此方にゆるぐさまにいふ語。(漂然)。
 
++ゆら・らに(副)ゆら/\と。
 
ゆらり[搖](名、副)(一)「ゆらゆら」に同じ。(二)ゆるやかにせまらざるさまにいふ語。
 
ゆり[百合](名)(一)【植】百合科に屬する草、山野に自生し又は栽培せらる、葉は通常笹に似、花は通常鐘状をなし大形にして美麗なり、雄蘂は丁字状の葯を有す、根莖は白色にして鱗状の球形をなし食用に供せらる、種類多し。(二)かさねの色目、表赤く裏の朽葉なるもの。
 
++ゆり[從](助)「より」に同じ(自)。
 
ゆり・うごか‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[搖動](他、さ四)ゆら/\とうごかす。
 
ゆり・うご‐く【か、き、く、く、け、け】[搖動](自、か四)ゆら/\とうごく。
 
ゆり・おこ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[搖起](他、さ四)ゆりておこす。
 
ゆり・かたむ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[搖傾](他、か下二)ゆるがし傾く。
 
ゆり・がね[淘金](名)土石にまじりたる砂金を水にゆりてとりたるもの。
 
ゆり・かへし【−カエシ】[搖返](名)ゆりかへすこと。「地震の−」。
 
ゆり・かへ‐す【−カエス】【さ、し、す、す、せ、せ】[搖格返](自、さ四)ゆりたる反動にて再びゆる。
 
{ゆりる[許](自)「ゆる」の訛。
 
ゆ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[搖](他、ら四)(一)ふるひ動かす。ゆるがす。(二)水中にてゆるがして洗ふ。(淘)。
 
ゆ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[搖](自、ら四)ふるひ動く。ゆるぐ。
 
ゆ‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[許](自、ら下二)ゆるしを受く。ゆるさる。
 
ゆるが‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[搖](他、さ四)ゆらぐやうにす。ゆるがしむ。
 
ゆるかせ[忽](名)なほざり。おろそか。不注意。粗忽。いるかせ。
 
ゆる‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[搖](自、か四)ふるひ動く。
 
ゆる‐ぐ【が、ぎ、ぐ、ぐ、げ、げ】[緩](自、か四)ゆるくなる。ゆるむ。
 
ゆる・け‐し【く、し、き、けれ】[緩](形、一)ゆるやかなり。
 
ゆる‐し【く、し、き、けれ】[緩](形、一)(一)嚴重ならず。きびしからず。(寛)。(二)しづかなり。いそがず。(三)濃厚ならず。うすし。
 
ゆるし[詐](名)(一)ゆるすこと。許可。(二)師より弟子に藝術の奥義を傳授する階級の最下。++――・いろ[許色](名)古昔、衣服の紅色と紫色とのうすき色にして誰にても着用し得る色。禁色の對。
 
ゆる‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[許](他、さ四)(一)ゆるやかにす。ゆるむ。(緩)。(二)束縛を解きて自由にせさす。(解、釋)。(三)よしと承知す。うべなふ。(聽、容)。(四)許可す。きゝとゞく。(允許、准許)。(五)制裁を加へずしてかへしやる。とがめだてをせず。(赦、宥)。
 
ゆる‐ぶ【ば、び、ぶ、ぶ、べ、べ】[緩](自、は四)「ゆるむ」に同じ。
 
ゆる‐ぶ【べ、べ、ぶ、ぶる、ぶれ、べよ】[緩](他、は下二)「ゆるむ」に同じ。
 
{ゆるべる(他)前條の訛。
 
ゆるま‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[緩](自、ら四)ゆるくなる。
 
ゆる‐む【ま、み、む、む、め、め】[緩](自、ま四)ゆるくなる。
 
ゆる‐む【め、め、む、むる、むれ、めよ】[緩](他、ま下二)ゆるくなるやうにす。ゆるむやうにす。
 
{ゆるめる(他)前條の訛。
 
ゆる・やか[緩](名)ゆるきさまなること。きびしからざること。しづかなること。うすきさまなること。
 
ゆるゆる[緩](副)(一)いそがざるさまにいふ語。(二)くつろぎたるさまにいふ語。(三)粘(【ネバ】)りて柔かきさまにいふ語。
 
ゆる・らか[緩](名)「ゆるやか」に同じ。
 
ゆるり[緩](副)ゆる/\。ゆっくり。
 
ゆ・わう【−ヲウ】(名)(一)【化】火山地方に産する黄色の脆き非金屬、水に溶解せず、熱すれば漸々融解して黄色の液體となり、尚ほ熱するに從ひて漸く褐色を帶び粘質となる、更に熱すれば再び液體となり黒褐色を帶び、遂に沸騰して蒸氣となる、火を點ずれば青色の※[火+餡の旁]を擧げて燃ゆ。(油※[火+黄])。(二)「ゆわうぎ」の略言。――・ぎ[硫黄木](名)つけぎ。(發燭、※[火+卒]兒)。――・くわ[硫黄華](名)【化】硫黄の蒸氣を急に冷(【ヒ】)やすとき生ずる粉末状のもの。
 
ゆ・わかし[湯沸](名)金屬にてつくりたる鐵瓶のごとき器、早く湯をわかすに用ふるもの。
 
(ゆゐ・いち[唯一](名)(一)唯だ其もの一つなること。(二)「ゆゐいちしんたう」の略言。――・しんけう【−キヨウ】[唯一神教](名)一神教に同じ。又、「ユニテリアン」に同じ。――・しんたう【−トウ】[唯一神道](名)神道の一派、兩部神道などに對して鈍粹なる我國傳來の神道を主張せるもの、卜部兼倶を創頸とす。
 
(ゆゐ・かい[遺誡](名)臨終の際、いましめの言を遺(【ノコ】)すこと。又、其言。「九條殿−」。(遺訓)。
 
(ゆゐが・どくそん[唯我獨尊](名)(一)天上天下の條を見よ。(二)自分ひとりすぐれたりとすること。
 
(ゆゐが・ろん[唯我論=Solipsisim](名)【哲】認識は吾人の心中に於ける主觀的作用に外ならず、吾人の認識は自我及自我の變形にして、其以外は認識し得ずといふ説。又、自己以外に何物も實在せずといふ説。
 
(ゆゐ・ごん[遺言](名)臨終に言ひ遺(【ノコ】)す言葉。ゐげん。
 
ゆゐ・しよ[由緒](名)然るべき由來。――・がき[由緒書](名)由緒を記したる文書。
 
(ゆゐ・し[唯心](名)たゞ心の作用のみなること。――・ろん[唯心論=Spiritualism](名)【哲】自然の本質は精神にして、物質的現象も精神的作用に外ならずといふ説。唯物論の對。
 
(ゆゐ・ぶつ・ろん[唯物論]=Materialism](名)【哲】自然の本質は物質にして、精神的現象も物質的作用に外ならずといふ説。唯心論の對。
 
ユヰマ・ゑ[維摩會](名)古昔、十月十日より十六日まで行はれし公事、興福寺にて維摩經を誦ぜられたり。
 
(ゆゐ・めい・ろん[唯名論](名)=Nominalism](名)【哲】普遍なるものは存在せずたゞ便宜上の名目に過ぎず眞の實在は個物なりといふ説。(名目論)。
 
(ゆゐ・もつ[遺物](名)死したる人の遺(【ノコ】)しおきたる物品。かたみの物品。
 
ゆゑ[故](名)もの事の起こるべき理由。すぢ。よし。
 
ゆゑ・あり・げ[故有氣](名)故あるさま。譯あり相。
 
++ゆゑ・さはり【−サワリ】[故障](名)さしさはり。こしやう。
 
++ゆゑ・づ‐く【か、き、く、く、け、け】[故附](自、か四)ゆえありげなり。よしづく。
 
ゆゑ・に[故](接)この理由によりて。かるがゆえに。このゆえに。
 
++ゆゑ・ゆゑ‐し【しく、し、しき、しけれ】[故故](形、二)故あるさまなり。ゆゑありげなり。
 
ゆゑ・よし[故由](名)いはれ。
 
ゆ・ゑん[所以](名)「ゆゑ」の音便。
 
ゆん・ぜい[弓勢](名)弓を張る力量。
 
ゆん・だけ[弓丈](名)一張りの弓の長さ、七尺五寸なるを法とす。
 
ゆん・づゑ[弓杖](名)(一)戰に疲(【ツカ】)れたる時などに、弓を杖として、息(【イコ】)ふこと。「−つく」。(二)ゆんだけ。
 
ゆん・で[弓手](名)弓を持つ方の手、即ち左の手。馬(【メ】)手の對。(左手、雄手)。
 
{ゆんべ[昨夜](名)「よべ」の訛。(昨晩)。
 
 よ
 
よ 母音「い」を從音とし母音「お」を主音としたる綴音。
 
よ[夜](名)日没より日出までの間。よる。――にいる よるとなる。――にかくる やみにまぐる。くらきために見あたらず。―― をとほす 夜あかしをなす。
 
++よ[節](名)竹又は葦などの節(【フシ】)と節との間。
 
よ[世](名)(一)人類の社會。せけん。せかい。人間。(二)せけんのいきほひ。せかいのありさま。(三)くに。國家。「−を治む」。(四)一人の帝王の國家をしろしめす間。御宇。(五)同一系統の帝王が相つぎて國家ををさめらるゝ間。「周の−」。「漢の−」。(六)一人の家主が其家にありたる間。「父の−」。(代)。(七)同一系統の存續する間。(八)個人の生涯の間。(九)其ものの榮ゆる間。(十)父子相繼ぐこと。(十一)をり。とき。(十二)つきあひ。まじはり。(十三)男女のなからひ。(十四)俗事。(十五)とし。よはひ。――にあふ 志を得。出世す。――にいづ 前條に同じ。又。生れ出づ。――につく[即v世]死ぬ。――をさる 前條に同じ。{――を はやうす わかじにす。――を わたる くらしゆく。
 
(よ[餘](名)(一)あまり。のこり。「五年−」。(二)ほか。よそ。
 
(よ[余、予](名)自稱の代名詞。われ。
 
よ[四](數)三と一との和。よつ。
 
++よ[從](名)より。ゆ。(自)。
 
よ(助)動詞に添(【ソ】)へて命令の意を表はす語。「見−」。
 
よ(感)(一)呼びかくる聲。「君−待て」。(二){意味を強めて言ひ切る語。「いけない−」。
 
ヨーくわ・カリウム[沃化=Kalium iodide](名)【化】沃素と「カリウム」との化合物にして水に溶け易き白色立方體の結晶體、醫術又は寫眞術等に用ひらる。沃度加里。
 
ヨーくわ・ぎん[沃化銀=Silver iodide](名)【化】沃素と銀との化合物、黄色の粉末にして水及酸に溶解せず、日光に當つれば變化して紫黒色に變ず、寫眞術に用ひらる。
 
ヨーそ[沃素=Iodine](名)【化】性質鹽素に類似せる元素、灰黒色板状の結晶體にして、稍や金屬光澤を有し、茶色の蒸氣を發して昇華す、水に溶(【ト】)け易からざれど「アルコール」に溶け易し、溶液を澱粉溶液に加ふれば濃青色の沈澱を生ずるより澱粉の鑑識に用ひらる。
 
ヨード[沃度=Iodine](名)【化】「ヨーそ」(沃素)に同じ。――・カリ[沃度加里](名)【化】「ヨーくわカリウム」に同じ。――・チンキ[沃度丁幾=Iodo‐tincture](名)【化】沃素の「アルコール」溶液、醫療に用ふ。
 
ヨードホルム[沃度※[人偏+方]謨=Iodoform](名)【化】沃度の「アルコ→か」溶液と水酸化「アルカリ」との反應によりて生ずる黄色の結晶體、防腐剤として醫藥に用ひらる。
 
(よ・あう【−オウ】[餘殃](名)惡事のむくいとして來る災雛。
 
よ・あかし[夜明](名)夜を明かすこと。徹夜。
 
よ・あきなひ【−アキナイ】[夜商](名)夜間にするあきなひ。
 
よ・あきんど[夜商人](名)夜あきなひする商人。
 
よ・あけ[夜明](名)夜の既に日出に近き時。よのあけがた。あかつき。(天明)。――・の・みやうじやう【−ミヨウジヨウ】[夜明明星](名)「あけのみやうじやう」に同じ。
 
よ・あそび[夜遊](名)夜あそびあるくこと。
 
よ・あらし[夜嵐](名)(一)夜吹くあらし。(二)盗賊の異稱。
 
よ・あるき[夜歩](名)夜出あるくこと。
 
よ・いくさ[夜軍](名)夜間にするいくさ。
 
{よいや(感)力を入れ、又は喝采する時の聲。
 
よい・よい(名)手足麻痺して自由ならず、歩行よろ/\して仆れ易きもの。「アルコール」又は「ミコチン」の中毒、房事又は手淫の過度、其他熱病・感冒・梅毒等に原因す。
 
(よ・いん[餘音](名)のこるこゑ。
 
(よ・いん[餘蔭](名)おかげ。
 
(よう[俑](名)手足を動かす装置ある人形、支那の古昔、これを殉死者のかはりに埋(【ウ】)めたりといふ。――を つくる[作v俑](論語に出づ)不善なる端緒をつくるにいふ。
 
(よう[用](名)(一)用事。用向。(二)つかひみち。もちひ。(三)はたらき。作用。(四)つひえ。入費。「−を省く」。
 
(よう[癰](名)一種の腫物、疔(【チヤウ】)の簇生したるものにして其面に黄灰色の膿あつまり寄る、多くは頸・背・臀・唇などに發生す、顔面部に生ずるものは危險なり。
 
(よう[蛹](名)【動】昆蟲の幼蟲が變態經過の際、運動を中止し營養物を取らざるときの稱。さなぎ。
 
(よう・い[用意](名)(一)心を用ふること。注意すること。こゝろがけ。(二)前以て其物事に要するそれ/”\のものを調へおくこと。支度。(準備、設備)。
 
(よう・い[庸醫](名)つたなき醫者。やぶいしや。
 
(よう・い[容易](名)たやすきこと。やさしきこと。難からざること。
 
(よう・えき[溶液](名)或液體に他の物體の溶解したるもの。
 
(よう・えき[傭役](名)やとひてつかふこと。
 
(よう・かい[容喙](名)そばより口を出すこと。
 
(よう・かい[溶解](名)或液體に他の物體を入るるとき其物體の分れて液中に均一に散ずること。分子の引力により、固體或は氣體の分子が液體の分子間に潜入すること。とくること。
 
(よう・かい[鎔解](名)金屬の火のためにとけて液状となること。とらくること。
 
(よう・かん[用間](名)細間を放つこと。しのびのものをつかふこと。
 
(よう・がん[容顔](名)かほだち。かほつき。
 
(よう・がん[熔岩](名)【鑛】火山の噴出物、岩石が地熱のためにやけたゞれたるものにして、非常の高熱を生じ灼々たる光輝を放ちて流出す。――・トンネル[熔岩隧道](名)流出したる溶岩の外部冷却し内部の液體流出するによりて生じたる洞穴、富士の人穴の如きこれなり。
 
(よう・き[容器](名)ものをいるゝうつは。
 
(よう・き[用器](名)器具をつかふこと。又、つかふ器具。――・ぐわ[用器畫](名)「コンパス」・定規などを用ひてかく圖畫。
 
(ようぎ[容儀](名)なりふり。おしだし。容體。樣子。
 
(よう・きやく[用脚](名)錢の異稱。(要脚)。
 
(よう・きん[用金](名)(一)公用の金錢。(二)昔時、大名が臨時に領地の人民に賦課せし税金。
 
(よう・くわ[熔化](名)火にかけてとかすこと。
 
(よう・くわう[容光](名)空隙に入るひかり。
 
(よう・けい[甕鷄](名)(荘子に出づ、かめの中の蛆(【ウジ】)の義)識見せまきもののいふ語。
 
(よう・けん[用件](名)ようむき。
 
(よう・げん[用言](名)【文法】語尾の變化する語、即ち、動詞・形容詞・助動詞。
 
(よう・げん[庸言](名)平凡なることば。
 
(よう・ご[用語](名)用ふる語。つかふことば。
 
(よう・ご[擁護](名)かゝへまもること。又、とりまきまもること。
 
(よう・さい[庸才](名)なみ/\の才能。
 
(よう・ざい[用材](名)使用する材。
 
(よう・ざい[溶剤](名)物體を溶解するに用ふる液體。
 
(よう・さく[傭作](名)人にやとはれてはたらくこと。
 
++よう・さり[夜去](名)よる。よさり。――・がた[夜去方](名)前條に同じ。
 
(よう・し[容姿](名)みめかたち。すがた。
 
(よう・し[用紙](名)其物事に用ふる紙。
 
(よう・じ[用事](名)なすべき事。つとむべき事。
 
(よう・しつ[溶質](名)或液體に溶解する物質。
 
(よう・しや[容赦](名)(一)堪忍すること。ゆるすこと。(二)ひかへめにすること。
 
(よう・しや[用捨](名)(一)取ると捨つること。(二)善惡の差別。
 
(よう・しよ[用所](名)もちふる所。つかふ所。
 
(よう・しよく[容色](名)かほだち。かほばせ。みめかたち。
 
(よう・じん[庸人](名)なみの人。つねの人。
 
(よう・じん[用心](名)(一)心を用ふること。注意すること。(二)いましめ。警戒。――・きん[用心金](名)萬一の場合にそなふる金錢。――・つち[用心土](名)火災のとき土藏の戸前又は窓を塗(【ヌ】)りふさぐためにそなへおく土。――・ぼう[用心棒](名)(一)戸をしむるために備へおく棒。(二)博徒の親方などの萬一に備ふるためにやとひ置く武藝者。
 
(よう・す[容子](名)ありさま。樣子。
 
(よう・すゐ[用水](名)(一)水を使用すること。(二)使用のために引き又は備へたる水。(三)田畠に灌漑するために供ふる溝渠又は溜池。――・をけ[用水桶]用水を溜めおく桶、多く火災にそなふ。
 
(よう・せき[容積](名)(一)中にものを入れ得る積。(二)立方體の積。
 
(よう・せう【−シヨウ】[鎔銷](名)とらくること。又、とらかすこと。
 
(よう・せん[涌泉](名)わき出づるいづみ。
 
(よう・せん[傭錢](名)やとひて使役する賃錢。やとひちん。
 
(よう・そく[壅塞](名)ふさぐこと。又、ふさがること。
 
(よう・だい[容體](名)(一)なりかたち。なりふり。(二)重々しきさま。もつたいらしきさま。(三)病氣の樣子。病状。(容態)。――・がき[容體書](名)病状をしるしたるかきつけ。――・ぶ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[容體振](自、ら四)おも/\しきをよそほふ。
 
(よう・だう[甬道](名)兩側に墻をきづきたる道。
 
(よう・たく[容啄](名)「ようかい」(容喙)に同じ。
 
よう・たし[用達](名)(一)役所又は貴人の邸などに出入して、買物其他種々の用を足す商人。(二)用事を辨ずるこ・「−に行く」。
 
よう・だ‐つ【た、ち、つ、つ、て、て】[用立](自、た四)役に立つ。もちひになる。
 
よう・だ‐つ【て、て、つ、つる、つれ、てよ】[用立](他、た下二)(一)使用す。もちふ。(二)貸與す。かす。(三)たてかへおく。
 
(よう・だん[用談](名)用事の談話。
 
(よう・だんす[用箪笥](名)雜用の物を入るゝ小箪笥。
 
よ・うち[夜討](名)夜に紛(【マギ】)れて敵陣を襲ふこと。(夜※[石+斥])。
 
(よう・ち[用地](名)其物事に使用する土地。
 
ようちゆう・の・かうかう【−コウコウ】[庸中佼佼](名)衆人にぬきいでたるもの。
 
(よう・ちよう[膺懲](名)うちてこらすこと。
 
(よう・と[用途](名)つかひみち。もちひどころ。
 
(よう・ど[用度](名)いりめ。いりか。入費。
 
(よう・とう・の・もんじ[蠅頭文字]いと細かき文字。
 
よう・なし[用無](名)(一)入用にあらざること。いらぬこと。(二)用事なきこと。ひまなること。
 
よう・な‐し【く、し、き、けれ】[用無](形、一)かひなし。せんなし。
 
(よう・にふ【−ニウ】[傭入](名)やとひいれ。
 
(よう・にん[傭人](名)やとひびと。やとひにん。
 
(よう・にん[用人](名)貴族の家に事(【ツカ】)へて雜事を處辨するもの。
 
よう・ば[用場](名)大小便の場所。かはや。(厠)。
 
(よう・ばい[溶媒](名)物質を溶解せさするもの。
 
(よう・ばう[容貌](名)かほかたち。みめかたち。(顔色)。
 
(よう・はふ【−ホウ】[用法](名)もちひかた。
 
(よう・ひつ[用筆](名)(一)つかふふで。(二)筆の用ひかた。(多く書道にいふ)。
 
(よう・ひん[用品](名)もちふる品。
 
(ようふ[傭夫](名)やとひをとこ。
 
(ようふ[傭婦](名)やとひをんな。
 
ようべ[昨宵](名)よべ。(昨夜、昨夕)。
 
(よう・へい[用兵](名)兵をつかふこと。軍隊をあやつること。
 
(よう・へい[壅蔽](名)ふさぎおほふこと。
 
(よう・へい[壅閉](名)ふさごとづること。又、ふさがりとづること。
 
よう・べや[用部屋](名)昔時、幕府の老中などの政治を取扱ひし所。又、大名の老臣などの事件を取扱ひし所。
 
(よう・べん[用辨](名)ようたし。
 
(よう・む[用務](名)つとめ。
 
よう・むき[用向](名)(一)用事のおもむき。(二)用事。
 
(よう・めん[容面](名)かほかたち。
 
(よう・や[鎔冶](名)金屬をとかし鑄(【イ】)ること。
 
(よう・やう【−ヨウ】[溶漾](名、副)水波のうごくさまにいふ語。
 
(よう・やく[踊躍](名)をどりあがること。とびたつこと。
 
(よう・よ[容與](名、副)ゆつたりしたるさまにいふ語。
 
(よう・よう[洋洋](名、副)水流などの廣大なるさまにいふ語。
 
(よう・りつ[擁立](名)たすけまもりて位につかすること。   
 
(よう・りやう【−リヨウ】[容量](名)その中に納めたる物の量。
 
(よう・れい[用例](名)使用せるためし。
 
(よう・れつ[庸劣](名)すぐれざること。もとれること。
 
(よう・ろ[鎔爐](名)金屬をとかす爐。
 
(よう・ろ[用路](名)「ようと」に同じ。
 
{よう・わり[夜割](名)よなべ。(福島地方の方言)。
 
(よ・うん[餘蘊](名)あまれるたくはへ。
 
(よ・えい[餘榮](名)死後のさかえ。死後の名譽。
 
(よ・えい[餘贏](名)あまり。のこり。
 
(よ・か[餘價](名)(一)あらづもりのねだん。(二)かけね。
 
(よ・か[餘暇](名)いとま。ひま。
 
(よ・かい[豫戒](一)あらかじめ警戒すること。(二)【法】警視總監。北海道廳長官・府縣知事等が、公共の安寧秩序を保持するため、豫戒令により、浮浪の徒其他他人の自由權利を妨害せんとする者に對し、一定の期間内謹慎を命じ若しくは特別なる警察上の監督を受けしむること。
 
(よ・かう【−コウ】[餘香](名)のこるかをり。
 
(よ・かく[餘角](名)【數】二つの角の和が一直角に等しきとき、その一つの角の他の一つの角に對する稱。
 
よ・かぜ[夜風](名)夜のかぜ。
 
++よ・がたり[世語](名)せけんばなし。(世談)。
 
(よ・かつ[餘割](名)【數】三角關數の條を見よ。
 
よが・な・よっぴて(副)夜どほし。
 
よ・かは【−カワ】[夜川](名)(一)夜中の川。(二)夜中の川漁。
 
よ・がら[世柄](名)世のありさま。(時勢)。
 
++よ・が‐る【れ、れ、る、るる、るれ、れよ】[夜離](自、ら下二)毎夜通ひしこと絶ゆ。男女の間の仲絶ゆ。
 
{よ・が‐る【ら、り、る、る、れ、れ】(自、ら四)こゝろよしと感ず。得意になる。
 
++よ・がれ[夜離](名)よがるゝこと。
 
{よかれ・あしかれ(副)よしあしにかゝはらず。如何にありとも。
 
(よ・かん[餘寒](名)大寒後の寒さ。
 
よき(名)小さき斧。
 
(よ・き[豫期](名)かねて期すること。
 
よ・ぎ[夜着](名)形、衣の如くにして、厚く綿を入れたる衾(【フスマ】)。(夜具)。
 
よ・ぎしや[夜汽車](名)夜間乘る汽車。夜行列車。
 
よぎ・な‐し【く、し、き、けれ】[餘儀無](形、一)止むを得ず。ぜひなし。よんどころなし。
 
(よ・きやう【−キヨウ】[餘響](名)のこりのひゞき。
 
(よ・きよう[餘興](名)宴席などの後に興を添ふる演藝などの稱。
 
よぎ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[過](自、ら四)立ち寄らずに行く。すぐ。通りすぐ。
 
(よ・きん[預金](名)直接又は間接に利殖の方便として金錢をあづけ、これをあづかりたるものは、これに規定の利息を附與するもの。
 
(よく[慾](名)望み貪(【ムサボ】)る情。ねがひもとむる心。――と ふたりづれ 慾のためにいとはずに往來すること。
 
(よく[翼](名)(一)つばさ。(二)たすけ。補佐。(三)中軍の左右の軍。「右−」、「左−」。(四)【天】二十八宿の一。
 
(よく[翌](名)あくるひ。
 
++よ‐く【か、き、く、く、け、け】[避](他、か四)次條に同じ。
 
++よ‐く【き、き、く、くる、くれ、けよ】[避](他、か上二)次條に同じ。
 
よ‐く【け、け、く、くる、くれ、けよ】[避](他、か下二)(一)あはぬやうにす。傍へ退く。さく。(二)防ぐ。除く。
 
よく[善](副)(一)親切に。ねんごろに。(好)。(二)ともすれば。やゝもすれば。(三)巧(【タクミ】)に。うまく。(克)。(四)事に堪へて。難きをおして。(能)。
 
(よく[翌](添)年月に冠して、次に來る意を表はす語。「−年」、「−月」。
 
よく・あさ[翌朝](名)あくるあさ。
 
(よく・あつ[抑壓](名)おしつくること。おさへつくること。
 
(よく・あつ[抑遏](名)おしてとゞむること。おさへとむること。
 
(よく・い[浴衣](名)ゆかた。
 
(よく・い[※[草冠/意]苡](名)【植】禾木科に屬する野草、高さ數尺、葉はずゞだまに似、果實は淡褐色にして稍や黒色を帶ぶ。――・にん[※[草冠/意]苡仁](名)よくいの果實、仁麥に似て白色なり、藥用に供せらる。
 
(よく・かい【ヨツ−】[欲界](名)【佛】三界の一、欲望を以て充されたる世界。
 
(よく・かく【ヨツ−】[浴客](名)人浴に來る人。
 
(よく・きう【ヨツ−】[欲求](名)或もの事をおひ求めて、これを得んと努力すること。ほしがりもとむること。
 
(よく・きやくけ【ヨツ−】[浴客](名)「よくかく」に同じ。
 
(よく・くわ【ヨツ−】[欲火](名)ほしがる情の火の如くおこりたつこと。
 
(よく・げう【−ギヨウ】[翌曉](名)あくるあさ。
 
(よく・げつ[翌月](名)あくるつき。
 
(よく・ご[浴後](名)ゆあみしたるあと。
 
(よく・さう【−ソウ】[浴槽](名)ゆあみするゆぶね。
 
(よく・さん[翼賛](名)そばより力をそへてたすくること。
 
(よく・し[抑止](名)おさへとゞむること。
 
(よく・しつ[浴室](名)ゆどの。ふろば。
 
(よく・じつ[翌日](名)次の日。
 
(よく・じやう【−ジヨウ】[沃壤](名)よくこえたる土地。
 
(よく・じやう【−ジヨウ】[欲情](名)ほしがるこゝろ。もとむるこゝろ。
 
(よくしゆ・るゐ[翼手類](名)【動】哺乳類の一、前肢・後肢及尾部との間に皮膜ありて伸張せる手指はこれを支持する骨となり、皮膜外の端に鉤爪ありて物に懸りとゞまる、かうもり等これに屬す。
 
(よく・しん[欲心](名)「よくじやう」(欲情)に同じ。
 
(よく・せい[抑制](名)おさへとゞむること。
 
(よく・ぜう[沃壤](名)地味のよくこえたること。
 
{よく・せき(名)已むを得ざること。堪へられざること。よく/\。
 
(よく・せき[翌夕](名)あくるばん。
 
(よく・そん[抑損](名)ひかへめにすること。
 
(よく・てう【−チヨウ】[翌朝](名)あくる朝。
 
(よく・ど[沃土](名)肥えたる土地。
 
(よく・とく[欲得](名)ほしがる心と、とくにつくと。
 
よく・とし[翌年](名)あくるとし。
 
(よく・ねん[欲念](名)ほしがる念慮。もとむるこゝろ。
 
(よく・ねん[翌年](名)あくる年。
 
(よく・ばう【−ボウ】[欲望](名)不足を感じてこれを滿さんとすること。もとめのぞむこと。
 
よく・ばり[慾張](名)よくばること。又、其人。「−根性」。
 
よく・ば‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[慾張](自、ら四)欲心さかんなり。過度に貪る。
 
(よく・ばん[翌晩](名)あくるばん。
 
(よく・ばん[浴盤](名)ゆあみするたらひ。
 
(よく・ふか[慾深](名)慾のふかきこと。
 
よくブツせち[浴佛節](名)「くわんブツゑ」(灌佛會)に同じ。
 
よく・め[慾目](名)贔屓(【ヒイキ】)の心よりよく見ゆること。好める情におほはれすぐれて見ゆること。
 
(よく・や[翌夜](名)あくるばん。
 
(よく・や[沃野](名)地味の肥えたる平地。
 
(よく・やう【−ヨウ】[抑拗](名)(一)あげおろし。あげさげ。(二)勢を或は低くし或は高くすること。調を或はさげ或はあぐること。(三)域はそしり或はほむること。
 
(よく・よく[翼翼](名、副)(一)とゝのひて正しきさまにいふ語。(二)いとうや/\しきさまにいふ語。
 
(よくよく[抑抑](名、副)おちつきてつゝしみたるさまにいふ語。
 
よく・よく(名)己むを得ざること。よくせき。
 
よく・よく[能能](副)ねんごろの上にもねんごろに。念を入るゝ上にも念をいれて。
 
(よく・りう[抑留](名)おさへとゞむること。
 
(よ・くわ[豫科](名)本科に入るための豫備の科程。
 
(よ・くわう【−クヲウ】[餘光](名)(一)あまりのひかり。(二)おかげ。
 
(よ・けい[餘計](名)(一)物のあまりあること。(餘分)。(二)役にたゝぬこと。無益。「−の世話」。
 
(よ・けい[餘慶](名)功徳のむくいに來る吉事。
 
++よけく[善](名、副)よいことの意。又「よく」に同じ。「いつしかも、人となりいでゝ、あしけくも、−も見むと」。
 
(よ・げつ[餘※[蘖の木が子]](名)滅亡せる家の子孫ののこれるもの。
 
よ・げに[好氣](副)よささうに。
 
(よ・げふ【−ギヨウ】[餘業](名)(一)のこりの業。(二)本業外の業。
 
よけ・みち[避路](名)さくるみち。
 
{よける(他)「よく」の訛。
 
(よ・げん[餘弦](名)【數】三角函數の條を見よ。
 
(よ・げん[豫言](名)未來の事を豫じめ推測して謂ふこと。――・しや[豫言者](名)未來を豫言する人。
 
よこ[横](名)(一)左右へ廣がれる向き。(二)左右。(三)東西。(四)立體の側面より反對側面までの距離、又、平面形の短かき徑の稱。(五)かたはら。側面。(六)正しからぬこと。よこしま。(七)「よこいと」の略言。(緯)。
 
(よ・ご[豫後](名)醫師が診斷したる以後の經過。
 
よこ・あひ【−アイ】[横間](一)横の方面。横むきの處。(二)局外。
 
よこ・あめ[横雨](名)風にさそはれて横にふり來る雨。
 
よこ・いと[横絲](名)布帛の横に織る絲。(緯絲)。
 
よこ・がく[横額](名)横に長く表装したる額。
 
よこ・がほ【−ガオ】[横顔](名)よこむきのかほ。
 
++よこ・がみ[軸](名)車の軸。
 
よこ・がみ[横紙](名)(一)漉(【ス】)き目を横にしたる紙。(二)すき目を横にして用ふる紙。――・やぶり[横紙破](名)是でも非でも押しとほすこと。強ひて行ふこと。又、其性質の人。――をやぶる よこがみやぶりをなす。
 
よこ・ぎ[横木](名)(一)すべて横にわたしたる木。(二)車の後ろに横にわたせる木。(軫)。
 
よこ・きり[横切](名)「よこきりじま」の略言。――・じま[横切縞](名)よこにきれたるすぢある縞。
 
よこ・ぎ‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[横切](他、ら四)よこさまに通過す。よこにとほる。
 
(よ・こく[與國](名)同盟の國。
 
(よ・こく[豫告](名)かねて告ぐること。
 
よこ・ぐも[横雲](名)たなびく雲。
 
++よこ・ごと[横言](名)「ざんげん」(讒言)に同じ。
 
よ・ごころ[世情](名)男女間の愛情。(春心)。
 
よこ・さ[横](名)よこのはば。「−竪さ」。
 
よこ・ざき[横裂](名)よこさまにさくこと。
 
よこ・ざま[横方](名)(一)横の方。(二)よこしま。(邪)。
 
よこ・ざま・のしに[横樣死](名)つまらぬしにかた。犬死。
 
よこ・ざん[横産](名)胎児の横になりて出産のむづかしきこと。
 
++よこし[脾](名)「ひ」の古稱。
 
よこし(名)【動】「さうだがつを」の一名。
 
よ・こし[夜越](名)(一)夜をこすこと。(二)夜をこえゆくこと。
 
よこ・しぶき[横吹雨](名)よこさめ。
 
よこ・しま[邪](名)(一)よこさま。横の方。(二)正しからざること。ねぢけたること。まがれること。
 
よこ・じま[横縞](名)横にすぢのある縞。
 
++よこ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[讒](他、さ四)しこづ。ざんげんす。讒す。「ひとごとの、−をきゝて」。
 
{よこ‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[遣](他、さ四)おくりきたす。おこす。
 
よご‐す【さ、し、す、す、せ、せ】[汚](他、さ四)きたなくす。けがす。
 
よこ・すぢ[横筋](名)(一)よこのすぢ。(二)よこみち。
 
よこ・たて[横縦](名)よことたてと。
 
よこ・たは‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[横](自、ら四)よこになる。よこにふす。
 
よこ・た‐ふ【へ、へ、ふ、ふる、ふれ、へよ】[横】(他、は下二)(一)よこになす。よこにおく。(二)横に腰に佩(【オ】)ぶ。
 
{よこっ・たふし【−タオシ】[構倒](名)無法なる議論。
 
{よこたへる(他)「よこたふ」の訛。
 
よこ・ちやう【−チヨウ】[横町](名)横にきれたる路。
 
よこ・づけ[横附](名)よこさまにつくること。
 
よこ・づな[横綱](名)(一)しでを垂れたる白麻の繩、行司のつかさ吉田追風より力士の大關中の拔群の者に許しで腰に纏はしむるもの。(二)横綱のゆるしを受け、これを腰にまとふ大關。(三)轉じて、其社會にて最も拔群なるもの。
 
よこ・つら[横面](名)(一)よこがほ。(二)よこあひ。
 
よこ・て[横手](名)(一)横にあたる方。(二)横に兩手を打つこと。――・を うつ 思ひあたる事などあ
 
 
 
 
 
++をろが‐む【ま、み、む、む、め、め】[拜](他、ま四)「をがむ」に同じ。
 
をろ・ち[巨蛇](名)だいじや。うはゞみ。大蛇。
 
++をろ・の・かがみ[尾鏡](名)山鳥の尾の影が水にうつることなりといふ。
 
++を・を[唯唯](感)應(【コタ】)ふる聲。
 
を・を‐し【しく、し、しき、しけれ】[雄雄](形、二)いさまし。たけし。さかんなり。をとこらし。めゝしの對。
 
++をを‐る【ら、り、る、る、れ、れ】[撓](自、ら四)枝たわむ。たわみまがる。「やまべには、花咲きをゝり」。
 
をん[雄](名)毎をす。を。めんの對。
 
(をん・えき[瘟疫](名)ははりやみ。やくびやう。
 
(をん・が[温雅](名)ものやはらかにして度量ひろきこと。しとやか。おだやか。
 
(をん・がん[温顔](名)柔和なる顔つき。
 
(をん・き[瘟鬼](名)疫病の神。
 
(をん・き[温氣](名)あたゝかみ。暖氣。
 
(をん・きよう[温恭](名)おとなしくうや/\しきこと。
 
(をん。けつ[温血](名)あたゝかき血。――・どうぶつ[温血動物](名)哺乳類又は鳥類などの如く、體温の外氣の温度よりあたゝか動物。
 
(をん・けん[穩健](名)文章のかき方又は議論のたて方の、穩當にしてしっかりしたること。
 
(をん・げん[温言](名)やさしきことば。
 
(をん・こ[温故](名)ふるきをたづぬること。むかしの事をきはむること。「――知新」。
 
(をん・こう[温厚](名)ものやはらに托し篤實なること。
 
(をん・ごく[遠國](名)とほきくに。ゑんごく。――・ぶぎやう【−ギヨウ】[遠國奉行](名)徳川時代に、江戸より遠く隔りたる地におきたる奉行の稱、即ち奈良・堺・伏見・長崎などの奉行これなり。
 
++をん・ざ[穩座](名)貴人などの饗應に、つぎのまにありて相伴すること。
 
(をん・じ[遠志](名)【植】「ひめはぎ」に同じ。
 
(をん・しう[怨讐](名)うらみ。かたき。あだ。
 
(をん・じう[温柔](名)ものやはらかなること。すなほなること。――・きやう【−キヨウ】[温柔郷](名)(一)遊廓。色里。(二)閨房。
 
(をんしつ[温室](名)(一)あたゝかき室。(二)むろ。
 
(をん・しふ[温習](名)くりかへして習ふこと。さらふこと。復習。
 
(をん・しや[温藉](名)度量ひろくして擧動しとやかなること。
 
(をん・じやく[温石](名)(一)輕き石を燒き、綿又は布などに包みて、冬日又は病氣などのとき懷中して身體の暖を取るもの、鹽を固めて燒き若しくは瓦などを鹽に包みて燒きたるものをも用ふ。(二)「をんじやくいし」の略言。(三)(温石は襤褸に包むが故にいふ)襤褸を着たる人をあざけりていふ語――・いし[温石石](名)信濃國高遠より産出する石、色黒し、温石に用ふるに適す。
 
(をん・じゆん[温順](名)おとなしくして人に忤(【サカ】)らはざること。ものやはらかなること。
 
(をん・しよく[慍色](名)立腹せる顔色。
 
(をんしよく[温職](名)いそがしからずして利得ある職務。
 
(をん・せん[温泉](名)(一)地中より湧出する高温度の水。いでゆ。(二)「をんせんば」に同じ。――・ば[場](名)温泉のある場所。湯治場。――・やど[温泉宿](名)をんせんばの旅人宿。
 
(をん・ぜん[温然](名、副)おちつきたるさま又はおだやかなるさまにいふ語。
 
(をん・たい[温帶](名)(一)【地】熱帶と寒帶との間の地帶、即ち夏至線の北冬至線の南に於ける氣候温和なる地帶の稱。(二)【植】森林植物帶の一、緯線三十六度より四十五度の間の稱。――・しよくぶつ[温帶植物](名)【植】温帶に繁殖せる森林植物、栗・※[木+解]等の如く落葉する濶葉樹これなり。
 
(をん・たう【−トウ】[温湯](名)適度の温度なる湯。
 
(をん・たう【−トウ】[穩當](名)(一)道理にはまること。至當なること。(二)おだやかなること。おとなしきこと。
 
(をん・だん[温暖](名)あたゝか。ぬくみ。――・がひ[温暖飼](名)蠶を飼ふに、火力を用ひて室内をあたゝかくするもの。
 
(をん・てき[怨敵](名)あだかたき。怨讐。「――退散」。
 
(をん・ど「温度](名)温冷の差。温冷の程度。
 
をん・どり[雄鳥](名)をどり。めんどりの對。
 
ヲンドル[温突](名)(字の朝鮮音)朝鮮などにて、室内の床下に土を以てつくりたる坑を通じ、中に火を焚(【タ】)きて暖を取るもの。
 
をんな[女](名)(「をみな」の音便)(一)人類の女性。め。めのこ。をうな。をなご。婦人。(二)温柔なる天性を有するものとしての婦人。(三)はしため。つかひめ。下女。下婢。――に なる 女の年頃になりて月經はじまるにいふ。
 
をんな・あるじ[女主](名)女にして一家の主人たるもの。
 
をんな・おや[女親](名)母。はゝおや。
 
++をんな・かうむり【−コウムリ】[女冠](名)古昔、女の位の稱。
 
++をんな・がく[女樂](名)女の奏する音樂。
 
をんな・がさ(名)寶暦の頃まで、流行せし婦人の笠。
 
をんな・がた[女方](名)女の人。
 
をんな・がた[女形](名)芝居にて、女に出でたつ役者。をやま。
 
をんな・かづら[女葛](名)【植】「せんきゆう」(川※[草冠/弓])に同じ。
 
をんな・がみ[女神](名)めがみ。じよしん。
 
をんな・かみゆひ【−ユ】[女髪結](名)婦人の髪を結ぶことを業とする婦人。
 
をんな・ぎ[女氣](名)をなごき。
 
{をんな・ぎだ[女義太](名)「をんなぎだいふ」の略言。
 
をんな・ぎだいふ【−イウ】[女義太夫](名)女の語る義太夫節。又義太夫を語る女。
 
をんな・ぎらひ【−ギライ】[女嫌](名)男子の婦人を好まざること。
 
をんな・ぐさ(名)【植】「せんきゆう」(川※[草冠/弓])に同じ。
 
をんな・ぐるま[女車](名)女の乘る車。
 
をんな・げいしや[女藝者](名)げいしや。藝妓。男藝者の對。
 
++をんな・こ[女子](名)(一)むすめ。(ニ)をんな。
 
をんな・ごこち[女心地](名)女のこゝろ。をなごぎ。
 
をんな・ごころ[女心地](名)前條に同じ。
 
をんな・こども[女兒供](名)(一)女とこどもと。(二)女のわらは。
 
をんな・ごろし[女殺](名)(一)女をころすこと。(二)女を迷はすほどのみめよき男。
 
をんな・ざか[女阪](名)神社又佛閣のある山の阪のけはしからざる方。(陰阪)。
 
をんな・ざかり[女盛](名)女の容貌最もうるはしき頃。
 
をんな・ザンマイ[女三昧](名)女色に荒(【スサ】)むこと。女に溺るゝこと。
 
++をんな‐し【しく、し、しき、しけれ】[女](形、二)をんならし。
 
をんな・じよたい[女世帶](名)をなごのみにて男のなき世帶。
 
をんな・すがた[女姿](名)をんなのすがた。女らしきすがた。
 
をんな・ずき「女好](名)男子の女色を好むもの。
 
をんな・たいふ【−イウ】[女太夫](名)興業物などの演藝を職とする女。
 
++をんな・たうか【−トウ−】[女蹈歌](名)女の蹈歌。(蹈歌の條を見よ)。
 
をんな・づかひ【−ヅカイ】[女使](名)古昔、二月・十一月の上の申の日、大和國春日神社へ勅使として向けられし内侍。又、加茂祭にもありたり。男使の對。
 
をんな・つき[女付](名)をんなぶり。
 
{をんな・っ・ぷり[女振](名)をんなぶり。
 
をんな・どころ[女所](名)をんなの居る所。
 
をんな・で[女手](名)(一)++平假名の稱。男手の對。(二)女のしわざ。
 
をんな。の・こ[女子](名)わかき女。
 
{をんな・ひでり[女旱](名)思ひをかくる程の女のなきこと。
 
++をんな‐ぶ【び、び、ぶ、ぶる、ぶれ、びよ】(自は、上二)女らしくなる。
 
をんな・ぶり[女振](名)女のかほかたち。
 
をんな・べや[女部屋](名)(一)侍女又は下婢などの部屋。(二)すべて、女の居る室の稱。(閨房)。
 
をんな・まかせ[女任](名)女中などに物事をまかせておくこと。
 
++をんな・め[妾](名)そばめ。めかけ。てかけ。
 
をんな・みや[女宮](名)皇女。
 
をんな・もじ[女文字](名)をんなで。平假名。
 
をんな・やく[女役](名)(一)女のする役。(二)女形。
 
をんな・やくしや[女役者](名)役者の女性なるもの。
 
をんな・ゆ[女湯](名)浴場の女の入る方の湯。
 
をんな・ら‐し【しく、し、しき、しけれ】[女](形、二)「をなごらし」に同じ。
 
をんな・わざ[女業](名)女のなすわざ。
 
をんな・わらは【−ワラワ】[女嬬](名)によじゆ。めのわらは。
 
をんな・わらべ「女童](名)(一)めのわらは。女兒。(二)婦女と小兒と。
 
をんな・ゑ[女畫](名)美人の畫。
 
(をん・ねん[怨念](名)怨みのおもひ。うらみ。
 
++をん・の・ざ[穩座](名)「をんざ」に同じ。
 
{をん・ば[穩婆](名)うば。乳母。
 
(をん・ばう【−ボウ】[温袍](名)綿いれ。ぬのこ。
 
(をん・びん[穩便](名)かどたゝぬこと。おだやかなること。
 
(をん・りう[温溜](名)腕の背部の灸穴。
 
(をん・りやう【−リヨウ】[怨靈](名)うらみたゝる死靈。
 
(をん・りやう【−リヨウ】[温良](名)おだやかにしてたゞしきこと。すなほなること。
 
(をん・る「遠流](名)しまながし。遠島。「−せよとて、伊豆國へぞ流されける」。
 
(をん・れい[温冷](名)あたゝかきとつめたきと。
 
(をん・わ[温和](名)(一)おだやかにおちつきたること。すなほにおとなしきこと。(二)暖かにしてのどかなること。寒熱其中を得たること。
 
(をん・をん[温温](名、副)「をんぜん」(温然)に同じ。
 
辭林 終
 
(1662)此の外浦々にかき置く藻鹽草は、千はこの數よりも多く、家々に遺れる言の葉は五つの車に載すとも堪ふまじ。然はあれど、心の泉汲めばいよ/\湧き、辭の林伐ればます/\繋し。
           (新續古今和歌集序)
 
發音索引
 アの部
アイ  あひ(相)
〔以下省略〕